231話 魔法が使えない俺とエルフの里
ミュラが飛んで見渡した結果、広大な森の中でなんとなく他と違う部分が見えたとのことで、俺たちはその方向に向かうことになった。
ミュラが飛びながら俺らの道標となってくれてる為、道に迷う事はない・・・かも?
最初から飛んで貰えばよかったかなぁ。
「飛ぶのって、便利なんだなぁ」
「たくやさんも飛んでません?」
「あれは空中を蹴る感じかな。飛んでるわけじゃないよ」
「ご主人様は人外なのです」
ニナはなぜ、そんなに人が傷つくようなことを言うんだろう。
頭空っぽだからか。
「あなた様は最強なんだから、それくらい出来るに決まってるでしょう?」
「最強は私だが?私なんだが?」
「サリスも大抵なのです」
そんな適当な会話を話していると上にいるミュラから「もーつくよー!」とのお声が掛かり、彼女は地面に着地する。
翼がしなって背中を丸めてるあたり、なんだか疲れてるっぽいなぁ。
「大丈夫か?ミュラ。飛ぶのって結構体力使うんだな」
「大丈夫ー。そうだね、いちいち翼を出したり閉まったりするのが大変なんだよ〜」
そーなんだ。
じゃあ、出しっぱにすればいいのに、それは出来ないのかな?
「その翼、ずっと出せば良くないかしら?」
お、ミシアが代わりに聞いてくれた。
「えー、だって寝る時邪魔だし、しかも可愛くないもん」
あ、そういう・・・
確かにミュラの翼って、ザ・ドラゴンって感じだもんな。
いや、尻尾はいいんかい。
◇◆◇
はぇー、ここがエルフの森かぁ。
なんというか、周囲の景色とは一線を画すレベルで幻想的だなぁ。
周りの木々と違い、一本一本がかなり太く高さもかなりある。
高さはどれくらいだろう、大体10メートル弱はあるだろうか。
木々の生え際から頂上までのちょうど真ん中あたりには、かなり広い足場が設置され木造の平家が建てられており、よく落ちないなぁと素直に感動を覚える。
これが俗に言うツリーハウスってやつだろうか。
一件一件の建物の形は独特で、居住者の性格が反映されているのかと思わせるような造り。
尖っていたり、丸っこかったり、どれもこれも王都や町で見る石造りの一般住宅とは、構造自体が違うようだ。
大木と大木の間には、広場通しを繋ぐ簡素な橋が架かっており、それぞれの広場に移動する事は容易となっている。
そして、無数の小さな光の玉がそこら中から現れては消えを繰り返し、温かみと幻想的な雰囲気を醸し出す。
まるで夢の中にいるかのように錯覚さえしてしまう。
そんな居住空間が彼方此方にあり、数は数えることも面倒な程多い。
故に、エルフの人数も中々の人数がいるのだろう。
ご丁寧に、エルフの森入り口の地面から木の上にある広場までを繋ぐ大きな橋が作られている為、簡単に上まで上がれそうだ。
こりゃ、森の中の空中庭園と言っても過言じゃないな。
「す、素敵ですね。なんだか幻想世界みたいで・・・」
「空気が他の場所より澄んでる気がするよぉ、こんなにきれいな場所があるんだねえ」
「いい場所ね、わたくしここに住もうかしら・・・あ!あなた様も一緒に!」
「この光食べられないのですか?」
「エルフは!エルフはどこだ!!!」
各々が勝手に感想を言ってるけど、まずはエルフに会って色々話を聞きたいんだよな。
まずは、アンジェの母親の友達とやらと、100年に一度の女の子?に会うことから・・・っと!っぶねぇ!!
矢! 矢が飛んできたぞ!!
ギリギリでかわしたからいいものの、下手したら一発でお陀仏だっつーの!
位置は・・・手前の広場か。
「おい!あぶねーな!!なにすんだよ!」
「なんでエルフさんが攻撃を!?」
「嫌われてるのですか?」
矢を射たであろう位置に向かって苦言を呈する俺。
すると、俺たちを見下すような形で、ゾロゾロと人が現れる。
・・・これがエルフか。
見たところ、全員金髪。
長く尖った耳。
緑を基調として、白のアクセントが入った服装。
女性陣は基本、肩を出して丈の短いスカートを履いている。
くるぶしくらいのブーツ。
あと、基本美形ばっか。
男性もいるが、比率的には女性が圧倒的に多いか。
男は生きづらそうだなぁ。
弓を構えてる少し豪華そうな装飾のやつが一番前にいるから、そいつが代表かなんかだろうな。
「人間、この森に何しにきた!我々を捕まえにでもきたか?」
弓を握るエルフは俺らにでかい声で質問してくる。
「随分と手厚く歓迎されてるわね。嫌なことでもあったのかしら」
「急に攻撃してくるなんて、よっぽどですよ」
「むー、野蛮人なのです」
どうやらエルフ達は、余程俺らに嫌悪しているらしい。
この状態のままだと埒が開かないし、なんか言ってやらないと。
「俺たちは話を聞きにきただけだ。お前らに危害を加える気は毛頭・・・」
「黙れ小僧!外の者なぞ信用出来るか!立ち去らなければ、ここで殺す!」
「戦闘か!?戦闘なのか!?」
「サリスちょっと一回黙ってようよ・・・」
ミュラがサリスの首をホールドして動きを止めると、タップタップとか言ってミュラの腕を叩き続けてる。
そのままじっとしていてくれ。
しかし参った。
こいつら、話を聞く気が全くないな。
ここまで部外者に敵対心剥き出しって事は、ここで何かあったに違いない。
それに、森の中にいたテロス。
これも関係が?
・・・眉間に皺なんか寄せて、美人が台無しだぜ?なんて言ったらぶっ殺されそう。
「話にならねーから、話分かるやつ連れてこいよ!」
「貴様らに話すことなど、ない!!」
広場から怨嗟のごとく罵声を飛ばしまくるエルフ達。
ったく、聞く耳なしかよ、耳長えくせに。
ここは、アンジェの母親の話を振ってみた方が良さそうだな。
「なあ!ここにいるアンジェは天人族女王セラフィの子供で、エルフのとある奴と仲良いって話なんだけど、そいつは誰だ?」
「あ、そういえばそんな話ありましたね」
母との会話を忘れてたの?
俺の言葉を受け、広場のエルフ達がどよめき始める。
「天人族だと?」とか「アイツら嘘ついてるだろ」とか、なんかもう色々と。
これを聞いてもなお信用に値しないってのはどうも幸先が悪い。
・・・まあ口だけならどーとでも言えるんだけど。
「・・・セラフィ、だと?」
弓を構える代表格が少し驚きの表情を見せる。
お、もしかしてこいつが友達とやらか?
「ああ!つい先日アーデンに行ってきて、天人族からエルフによろしくって言伝頼まれたんだよ。交流が深かったんだって?」
「・・・確かに、昔は天人族とは交流が盛んだった。しかし、今はアーデンに行けないはずだ!」
あー、なんだかめんどくさくなってきた。
「アンジェ、失礼」
「たくやさん!?」
俺はアンジェを抱きかかえて、地面を強く蹴り上げてエルフ達がいる広場まで飛ぶ。
着々と同時にエルフ達は、たじろぎ後ろに下がってく。
そして、ゆっくりアンジェをおろしてエルフ女の前に立つ。
「・・・セラフィに少し、似ている・・・それは!?」
「あ、あはは、どうもー・・・」
エルフが気まずそうなアンジェの何かを見て、弓を完全に下ろす。
「その首飾りは、セラフィがつけてた・・・」
「あ、はい!お母さんがくれました!」
エルフはアンジェに一歩近づき、全体、顔、ネックレスをゆっくり眺める。
するとどうだ、彼女の顔がみるみる解けてくぞ?
「あぁ・・・本当に彼女の娘、なんだな」
「そうです、私は娘のアンジェです!色々とエルフさんの話聞きましたよ!」
「・・・彼らを信じよう」
どうやらこのエルフは、俺たちを信用してくれたようだ。
周りの奴らも少し不安そうな空気を出しながらも、「まぁ、代表がそう言うなら」と言った感じで緊張の糸を解いてく。
なんか、アンジェを通行証扱いするのは、少し嫌な気分だなぁ。
事情が事情なんだけどね?
「先ほどの失礼を詫びよう。今は外部の者に対し疑心暗鬼になっているのだ」
エルフは少し頭を下げて謝罪してくる。
やはり、この雰囲気は何か理由がありそうだ。
「申し遅れた、私はこの里の代表、『レミリア』だ。ようこそ『ヴィルクザール』へ」




