229話 魔法が使えない俺と異変の前兆
廃墟を出て次の日、俺たちは魔物を適度に倒しながらエルフの森に向けて歩みを進めていた。
まあこれと言って特に問題とかはなくて、淡々と歩いていく。
その道中、俺達は小さな町を発見した。
アンジェが「ちょっと寄ってみませんか?」って発言によって皆が賛同して、街に行くことになったね。
別に急いでるわけじゃないから、止める理由は特にないけど。
んで、街に入ったところなんだけど、目新しいものといえば、鉱物とかかなぁ。
王都に流通してるような宝石や鉱物があったり、逆にみたことないものとか、いつも見るものよりも遥かに大きのがあったり、目新しいものがあちらこちらに売ってる。
どうやらこの町では発掘業が盛んらしい。
こんなところで掘ったら取れるんだ―意外、って感じ。
「見てくださいよ!!この大きな『ブルーインパルス』!!しかも安いですよ!!!」
「あら、この『スカーレッドジェラシー』、かなりお得ね」
「わぁー!!これ『フォレストダイヤ』じゃん!!こんなところにあるなんて!!!」
アンジェ、ミシア、ミュラがめちゃくちゃ目を輝かせて物色してるんだけど、俺あまり興味なくてなあ。
宝石にいちいち名前がついてるらしいけど、端から聞いたらマジでなんかの呪文なんじゃねえのって思うね。
・・・一説によると、男の目と女の目では色彩の識別数が違うらしいし、見えてるものが違うのかもね。
その一方
「むー、この石食べられないのですか?」
「おい、これを敵に投げつけたら大ダメージ間違いなしだろう!?!?」
ニナとミュラはこんな様子である。
まあ、好みって人それぞれだしなあ。
それにしても、きらっきらしてるなー。
これを買って王都で売ると儲けられるんじゃ?なんてコスい考えはしないね。
緑と、赤と、黄色と・・・・あれ?
陳列棚に並ぶ多数の石の並びに一個に目をやる。
そこには見たことある、とあるものが置かれていた。
えっと、何でこんなもんここにあるんだ?
「みんな、これって『魔導玉』じゃないか?」
ぎょっとしたような顔をして、一斉に皆が俺を向いて駆け寄る。
まじまじとそれを見る俺らは、第三者視点で見ればやばい奴だろうね。
それにしても、この禍々しくて安っぽい玉。
間違いない、魔導玉だ。
ミシアが顔を近づけ、魔導玉を凝視する。
「間違いないわね。これ、魔導玉よ。なんでこんなものが・・・」
「でも、自然にこんなものが発掘されるわけありませんよね・・・?」
そう、魔導玉は人間から魔力を吸い取って作られる玉で、大体の奴はこれを使うと『テロス』というバケモンになる。
そうとも知らずに、「これは身体能力を向上させるもの」という名目で、幹部のイジャが冒険者に売りつけていたことがある。
ミシア曰く、魔王から与えられるものの廉価版がこの魔導玉らしい。
・・・ということは、イジャがこの町に?
俺は店主に声をかけた。
「ねえ、これって誰かから買ったの?」
すると、店主らしきおっさんは笑いながら対応し始める。
「ああそうさ!名前は分からんが、これはいいもんだってことで知らん男に譲られたのさ!珍しいもんだし、かといって用途が分からないから陳列してるのさ」
イジャの可能性が高いな。
そもそも、これをいいものだとか言って売りつけるわけがない。
知っていたら尚更だ。
アイツ、もしかしてまたどっかで魔導玉の製造を?
◇◆◇
店主にSS冒険者証を見せて、魔導玉を破壊させてもらうことになった。
虹色のダサい冒険者証を見たら瞬間の店主の顔ったらもう、天地がひっくり返って目ん玉引ん剝くくらいのリアクションだったね。
なんだか、職権乱用みたいな感じで嫌だなあ、仕方ないんだけど。
まあ一通りのことの経緯を説明したら納得してくれたし、いいのかな?
「びっくりだ!まさかそんなにも危険なものだったなんてな!いやー、お前さんらには感謝感謝だ!ハハハ!」
「今度から気を付けて営業するんだぞ!!!ハハハ!!!」
なにわろてんね。
サリスに限っては何もしてないだろ。
一連の様子を見て、皆は胸を撫でおろすと店主は頭を掻きながらでかい声で話す。
うるせー。
「いやいや!それにしても、いつの時も物騒は隣り合わせだなぁ!」
「いつの時もって、前も何かあったんですか?」
意味深な発言をする店主にアンジェが突っ込む。
「んまー何十年も前なんだがな?領土問題とかで、町同士の紛争があったんだよな!今はもう和平が結ばれてるから、お互い協力していこうぜ!ってな感じなんだがな!」
はぇーそんなことがあったのか。
領土だの金だの、大人っつーのは強欲だよな。
「まー紛争終結までは色々と大変だったらしいが、偉い奴が始めた馬鹿な事さ!んな事もう2度と拝みたくないね!」
「紛争や戦争なんて、勝敗が決まるまで終わらないものよ。よく丸く収まったわね」
ミシアが何故かゴミを見るような目で吐き捨てる。
ミシアって色んなところ旅してたって言ってたから、そういう揉め事とかを直に見てきたのかな?
「そうだなぁ。俺が生まれる前の話だからよく知らんが、なんでも両町の兵士がエグい死に方したりとか、領主が行方不明になったり、色々らしいぞ?」
「の、呪いですかね?」
「え、怖い話はやめてよぉ」
アンジェとミュラは怯え始めるものの、ニナとサリスはポカーンと思考を停止して話を聞き流してる。
そんな中で、ミシアは下を見ながら何か思考を巡らせてるみたいだ。
何考えてんだろ。
「ミシア、何考えてんの?」
俺が彼女に話しかけると、「あ、いえ!」と首をめちゃくちゃ横に振る。
首もげるぞ。
◇◆◇
町を後にして、俺たちは森の入り口まで来た。
うーん、いや、確かに森自体はでかいし、結構鬱蒼としてるからさ、住んでそうだなーとは思うんだけど、
イメージがなんと言うか、キラキラしてる?とかなんだここは!?とか、もっと感動するようなところだって勝手に押し付けてた感。
言っちゃ悪いけど、ただの森にしか見えないんだよね。
「たくやさん、ここにエルフさんがいるんですね」
「うん、あんまり想像できないけど」
アンジェの言葉に同調するように、首を縦に振るメンバー達。
「ここ、ただの森じゃないのか?私が思ってたのと違うぞ!」
「まあまあ、押し付けは良くないよ〜」
「とりあえず入りましょう?ここに立ってても意味がないわ」
ミシアの言う通りだね、入らない事には何も始まらないし。
俺達は、人の介入なぞ微塵も感じられない草木が伸び放題かつ獣道へと入っていく。
足元や周りの気配を感じ取りながら奥へと進み、森の奥へ入っていく。
一応地図を確認すると、エルフの森?らしき部分には赤いバッテンが記入されているし、気配探知で迷う事はないかも。
なんとなくで、気流の流れとかを察知すれば、森を抜けたりする事はできるからね。
「むー、歩き辛いのです」
「むしろ、これが防衛拠点としての働きって言われたら、納得は多少できそうね。普通の人間なら迷ったまま死ぬでしょうし」
周りを見回す限り、天に向かって伸びる木と倒木のみが光景として映ってて、奥の方まで見えるかと言われたら、答えはノーだ。
魔物の気配は特にない。
こんな広大で生い茂った場所なら、魔物に出会しても不思議じゃないと思うんだけど。
・・・うん?
前言撤回。
気配を感じるな。
ただ・・・
「ご主人様、嫌な臭いがするのです」
「ニナもそう思う?」
ぐいぐいと俺の袖を引っ張るニナ。
「魔物かなぁ?ちょっと飛んで見てみようか??」
ミュラが背中から翼を生やし、飛ぼうとした時
「あぶね!」
翼を羽ばたかせるミュラに、黒い魔法の玉が飛んでくる。
急いで俺はその凝縮された魔力を剣で叩っ斬った。
ふう、ギリセーフ!
「たくや君!ありがとう!」
「どういたしまして!・・・これ、囲まれてんぞ」
安堵の表情を浮かべるミュラに警戒を促す俺。
動物達の声は消え、ズッズッと何かを引きずるような音だけが、木々にこだまして響く。
「て、敵か!?エルフか!?」
「エルフじゃないと思うよ、これ多分・・・」
何故か目を爛々とさせるサリスは、剣を徐に振り回してる。
はぁ、戦闘狂だなぁ。
「一体何が来てるんでしょう・・・?」
「みんな!注意しなさい!!くるわよ!」
木陰から続々と姿を表す。
森の中とは思えない程、歪で醜悪なそいつらに、アンジェ達は息を呑む。
「嘘・・・こんなところにいるんですか?」
ボソッと呟くアンジェ。
俺たちは戦闘態勢に入る。
感じ取れる数は約100体。
食物連鎖とは全く無縁のそいつらは、木を次々倒しながら俺たちを囲う。
「テロスだ」




