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228話 魔法が使えない俺とスライム

息を突く間もない程の魔法弾幕は空を覆いつくし、降り注ぐそれは天から降り注ぐ星々のよう。


「おらああああエクスカリ、バアァアアアアア!!!」

「『ヴォルカニック・ブレス!』」


サリスの聖剣とミュラのブレス攻撃が、無数の魔法に衝突する。


しかし、あまりの弾幕の多さに魔法を防ごうにも、砂埃を手で払う程度のレベルで留まってしまう。


「なんだこれは!子供の魔力じゃないぞ!?」

「スライムってこんなに強いの!?」


見た目は子供、中身はスライムの攻撃に焦りを見せる彼女たちに、後方からミシアの声が掛かる。


「『マギカ・イグニス!』ほら!強化したんだから突っ込みなさい!」

「おお!!体が軽いぞ!」

「ミシアありがとー!!」


俄然やる気を取り戻したサリスとミュラが、再度魔法群に向かっていく。


一方で、ニナはスライム達に何度も拳を振るっているのだが、まるで目の前に透明な壁があるかのように、拳が届かない。


「パンチが効かないのですー!!」

「私が何とかします!『ラヴァ・トルネード!』」


アンジェから溶岩の渦が発生し、スライムたちに伸びていく。


螺旋は敵に近づくにつれて大きくなり、ニナをも巻き込みそうになる。


「わわ!!あちちなのです!」

「すいません!まだちょっと慣れていなくて!」


アンジェがつい最近習得した魔力の混濁。


しかし、使用頻度が少ない点と病み上がりの体によって、どうも魔法のコントロールがうまくいっていないようだ。


溶岩がスライム共の目の前に迫り、やはり見えない壁に衝突する。


しかし、魔法の威力があまりに高かったのか、ジュゥゥ・・・と何かが溶け出す音とともに、溶岩が浸食を始める。


そこを察知したニナは、再度スライムに攻撃を仕掛ける。


拳を突き出し、身体を高速回転させる。


「チャンスなのです!!ニナ!ドリル!ブレイカー!!」


パキパキ


ガラスに亀裂が入る音が聞こえ、ニナの体は少しずつではあるが、進行方向へと進んでいく。


それをチャンスと踏んだミシアは、間髪入れずに補助魔法を使用した。


「『アシッド・レイン!』」


スライムたち頭上に小規模の暗雲を出現させ、何処かで見たことのある紫色の雨を降らす。


効力こそ見た目では判断しづらいが、すこしづつスライムたちが放つ魔法間隔が徐々に開いていっているように感じられる。


「このスライムたち、中々魔力耐性が高いわね」


ゴーレムの魔力耐性を下げたミシアの魔法でさえも、スライムへの効き目は薄いらしい。



「うおおあああああ!!!ガラティぃィィィィン!!!!!」

「『サイクロン・ウィング!』」


サリスのバカでかい聖剣が炎を纏い、なりふり構わずブンブンと振り回す傍ら、ミュラは背中から生やした翼を羽ばたかせ、ふたつの竜巻を作り出し、魔法を飛ばしていく。


先程よりも自身の身体能力が向上したことを期に、鮮やかな魔法の弾幕を蹴散らしていく。


そして、魔法は止んだ。


そう、ニナが見えない壁をぶち破り、回転するニナが次々にスライムを宙に浮かせていったのだ。


スライムたちはダメージに耐えかねたのか、子供を模していたスライムは変身前の丸っこい水の塊へと戻っていく。


「やっほー!!なのです!!」

「でかしいたぞニナ!!このまま一掃する!!ガラティいいいいいいん!!!!」


サリスが持つ燃え盛る巨大な炎剣は、宙に浮いたスライムたちを纏めて押しつぶす勢いで振り下ろす。


しかし、そう甘くはなかった。


最後の悪あがきなのか、スライム一体一体から大きな水の柱が繰り出され、炎の剣を押し戻そうそしてきたのだった。


「お、押されているだと!?この私が!?!?」


ありえないと言わんばかりに口を大きく開けるサリス。


それを見たミュラは、一応フォローする。


「た、多分水だから炎と相性が悪いんじゃないかな?じゃあ、凍らせてみるか!『コキュートス・ブレス!』」


ミュラの口から、氷の冷気を吐き出す。


それに合わせて、アンジェは氷属性魔法の準備にかかっていた。


「ミュラさんに合わせます!『アブソリュート・メテオ!』」


巨大な氷塊と広範囲の凍てつく冷気は、スライムたちを凍り付かせ始める。


それを見た数体のスライムは、自分たちは生き延びると言わんばかりに逃げの姿勢に入る。


それを止めたのはミシアだった。


「逃がさないわよ!『デモンズ・スワンプ!』」


逃走を図るスライムたちの足元には黒い沼が出現しており、何本もの黒い手がスライムを逃がすまいと巻き付いていく。


逃げられない魔物達は凍り付くほか選択肢はなく、そのまま無残に冷凍保存されてしまった。


◇◆◇


その一方、俺は白髪交じりのおっさんスライムと戦闘を繰り広げていた。


スライムのコピー能力は俺には効かない。


しかし、アーデンで出会ったスライムとは一線を画しており、なかなかいい勝負になっていた。


おっさんスライムはただ拳を握り、割と多い手数で俺の剣撃を防いでいた。


一瞬の隙を突いて俺の頭に手刀を繰り出そうとしたり、蹴りで距離を取ろうとしてくる。


結構やるなあ。ティニーと同じくらい強いかも?


本気を出してはいないものの、一手一手に張り合いがあって、俺は結構楽しんでいる。


同時に、この光景には既視感があった。


こいつの戦い方、空気感、それに顔。



もしかして、若い頃のマイフじゃないか?


まあ、若いと言ってもおじさんではあるんだけど、今のようなシルクハットの老人ではないね。


しかし、だ。


スライムがこの姿になるってことは、マイフは若い頃にスライムと接触しているということだ。


それにあの子供たちの姿も同様。


そして、あの崩壊しつつある廃墟。


子供たちとマイフが一緒に居たってことなのだろうか?


キィン、ガキン


剣と拳がぶつかり合う。


握りこぶしのはずなのに、剣を通しての手ごたえは鉄を叩いているそれに近い。


その証拠に、剣同士が打ちつけ合った時と同じように火花が生じていたからだ。


それに何が不思議なのかって、俺の剣を喰らっても姿が元に戻らないということだ。


てっきり魔法の類で姿を変えているのだとばかり思っていたが、どうやらそうでもないらしい。


これは体質?ってことなのか。


マイフの面影が見えるスライムは一度距離を取り、俺の方向へ向けて、神速の正拳突きを繰り出す。


これは、空気を殴って衝撃波を作っているんだな。


じゃあ俺も『断空衝波刃』


空気を押し出すイメージで剣を振る。


それによって発生する飛ぶ斬撃を、奴の衝撃波にぶつけて相殺させる。


その遠距離での攻防は数分間にも及ぶ。


お互いの持つ近距離武器の性能を引き出した、飛び道具による空間汚染はやがて、スライムが劣勢となっていく。


よくもまあまあ、魔法無しでここまでやれるもんだよな。


目に見えて魔法で身体を強化したり、使って来たりしてないもんな。


俺の剣が触れてもあの拳の硬さは変わらない訳だし。


ということは、さっきからあの拳から繰り出される攻撃は、自身で身につけた技術って訳か。


こえー。


あんなんで殴られたら、たまったもんじゃないね。


「おっと」


スライムは痺れを切らしたのか、最初し向かって来た時と同様、両手を引っ込めながら俺に接近を図る。


接近中、右手が僅かに後ろへ引いた瞬間を見逃さない。


奴が上体を少し捻り、右手に力を少し溜めている間、俺もまた相手の攻撃範囲に入り込む。


右フックが繰り出される瞬間を見計らい、剣を下から上へ逆袈裟斬り。


目標は奴が振るう腕。


ガァンと打撃音が響く。


フックをかわし腕橈骨筋辺りに思い切り剣をぶつけ、スライムの体勢を崩す。


そのままの勢いで、斜め上から剣を振り下ろし、スライムの上半身を斬りつけた。


肩から股関節上入りまで斬られた部位はバックリと割れ、血液の代わりに真水を噴き出す。


間欠泉のように激流を吐き出す姿は、みるみるマイフの姿から一変し、丸い水の塊へと戻る。


「正体表したね。さて、土に返そうか」


一言付き、変身を失ったスライムを斬り刻む。


2・3、回振るった末、スライムの形は跡形もなく消え去り、湿った土だけが残った。


まあ、強かったけどマイフの若い時と戦っただけだし、今の魔王幹部としての能力を見るには至らなかった。


結果、女性陣の健闘により、ここらのスライムは跡形もなく消え去り、俺達を遮った魔物達は綺麗さっぱり消し飛んでいた。


正直なところ、今後マイフと戦闘するにあたって、色々と情報を手に入れたかったのだが仕方がない。


というか、なんでスライムなんて出て来たのかなぁ。


それに、ポツンとある廃墟ってなんぞや?

                  

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