表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

232/242

227話 魔法が使えない俺とエルフの森へ

王都へ戻り、はや1週間。


アンジェの容体は割と重かったみたいで、生きていることが奇跡、とのこと。


ミシアもこんなこと初めて!だそうだ。


普通の人間なら死んでいてもおかしくはないくらいのレベルだが、何を隠そうアンジェは普通の人間ではない。


彼女が天人族とのハーフであることを聞いたミシアは、妙に納得していた。


完治まではおおよそ一週間、それまでは絶対安静とのことで、俺達は黙って王都にとどまっていた。


というか、死ぬくらい危ない状態だったのに、一週間で治るとはこれいかに。


まあアンジェの様子を見たり、ギルドに行ったり騎士団に行ったり、町をぶらついたり、なんとなく平和な一週間だったね。


世界はそれどころじゃないんだけど、何もせずに王都にいると、魔王の魔の手が忍び寄ってきてるって事が、嘘なんじゃないかと錯覚してくるね。


まあ、そんくらい暇って事。


ミシアはギルドでの仕事で忙しいし、ニナなんか王都の子供と遊びに行くようになったし。


そんな感じなもんだから、自ずと俺はミュラと一緒にいる時間が多かった。


なんか色々あったから、多少暇つぶしになったかも。


1週間いたのにも関わらず、魔王の情報が一切入ってこないのがもうダメだよね。


入ってくる情報といえば、クラン達が魔王の配下を倒したって事くらい。


頑張ってるんだなぁ。



んで、アンジェが完治したって事で、これからエルフの森に行くところだね。


王都から出て少ししたところ、舗装された平原を歩いている。


「さあ!行くぞ皆んな!!」

「あなた様?コイツも行くんですか?」

「コイツとは何だ!お前もギルドの仕事があるだろ!」

「長期休暇取ったから大丈夫よ。あぁ、アナタは毎日暇だからお休みみたいなものよね?」


仲良くしてくれないかなぁ。


この中で一番盛り上がってるのは、間違いなくサリスであるが、それにしてもうるさい。


ミシアも何故かエルフに興味があるみたいで、一緒についていくことになった。


「アンジェ、本当にもう大丈夫なのか?無理してない?」

「大丈夫ですよ、たくやさん!もう完全回復です!」


もう平気だと言わんばかりに、両手でガッツポーズをとるアンジェ。


「完治はしてると思うけど、あんまり無理するんじゃないわよ?」

「分かってますよミシアさん、本当にありがとうございました!」

「何かあったら言いなさいよ」


アンジェはかなりミシアに懐いているようだ。


まあ、結構ミシアはアンジェを気にかけてたし、一緒にいる時間が長かったこともあって、親密度が上がったんだろうね。


初期のミシアからは想像できないくらいの成長である。


「てかさー、エルフの森ってどこにあるのー?」

「むー、ニナ的には右だと思うのです」

「一応ギルドから場所を教えてもらったぞ?」


先頭を歩きながら、こちらに声をかけるミュラとニナ。


分からないのに先頭歩いてたのかよ。


俺はミシアから地図をもらい、丸まった茶色い洋紙を無理やり広げる。


それと同時にアンジェ達もまた俺の方へと近寄り、円陣を組むように地図をのぞいた。


◇◆◇


エルフの森までは割と距離がある。


どれくらいかっていうと、歩いて4日くらい。


そして今日2日目。


現在は山を越え、下り、そして緑が徐々に姿を表した砂利道ってところか。


昨日の夜に仕留めた魔物を焼いた、骨付き肉を齧りながら俺たちは歩いていた。


「あぁー、飛龍乗りたいなあ」


思わず愚痴をこぼすミュラ。


「まあ、飛龍乗ったら多分2日も経たないで着くだろな」

「でしょー?ギルドで貸してくれないのかなぁ」


ミュラはミシアをチラッと見ると、目を向けられた彼女は「はぁ」とため息を漏らした。


「はぁ、依頼でも何でもないのに貸すわけないでしょう?サリスの時が異例なだけで、普段から貸さないわよ」

「ん?呼んだか?」

「「呼んでない」」


ミュラとミシア息ぴったりだなぁ。


まあ、ミュラとアンジェに関しては、二日酔いで乗ってないからね。


「私も飛龍乗りたかったですよー、今だって空飛んだら山なんて飛び越えるのだって簡単でしたし・・・」


アンジェは口を開けながら一点を見つめる。


あれ、この気配はどこかで?


「どうしたのですか?」

「いえ、あれって・・・」


アンジェが見ている方向をニナ始め、全員が視点を移す。


そこには1件の少し大きい所々崩れた廃墟と、周囲を囲む水分を膨らませたような、複数体の丸い物体。


あれって、スライムじゃね?


「あれは、スライムね」


ミシアは魔物を見て、いつものやつかと見飽きたような口調で正体を答える。


「スライムだと!?初めて見るぞ!」

「えー!スライムって結構可愛いじゃん!」

「なんだか、癒されますね〜」

「美味しそうなのです」


俺はアーデン襲撃の時に、スライムと対峙したから分かるけど、反応から察するに、同じ街にいたニナとミュラは見なかったようだ。


一応俺がアイツらの注意点を話しとくか。


「気をつけろよ、スライムは触れた奴の姿形、能力を全てコピーするからな」

「あなた様流石です!!よくご存知で!!」


いや、そんなに褒められる事じゃないんだけど・・・


そんなやりとりをしていると、スライム達は俺らに気づいたようで、ジリジリと近づいてくる。


「皆さん、スライムがこちらに来ましたよ!」

「まあでも、触られなければ大丈夫なんじゃないかな?」

「はは!なるほどな!!指一本を触れさせぬまま、成敗してくれるわ!!」


ミュラ、サリスをはじめ、なんとなくみんなはスライムを見た目で判断し、かなり舐め腐ってるようだ。


確かに、俺以外の誰かがスライムに触られた場合は、少し厄介かもしれないが、そもそも触られなければいい話だ。


だが、実際はそうではなかった。


「なんか、形が変わってるのです」

「ほんとだー!・・・なんか人の形になってってない?」


彼女達は気付く。


スライムというモンスターの厄介な部分を。


水をそのまま固形にして球体にしたような魔物は、どんどん人の形変化していく。


数は11。


それぞれ別の人の形、そして誰がどう見ても人間だと思うくらいには変化していた。


「えっと・・・人、ですよね?」

「子供がいっぱいなのです」

「なんだか、おじさん?が子供を守ってるような感じだよね?」

「す、スライムはスライムだろ!!」


俺達の目の前にいるのは、白髪が混じった前髪を上げたおじさんと、その後ろに隠れる子供達。


子供達の年齢は大体3~10歳くらいとまばら。それくらい小さい。


「いやいや、これってどういう・・・」


ふと俺は、ミシアの顔をチラっと見る。


彼女は眉に皺を寄せ、怒りなのか困惑なのか、ぱっと見では判断できないような表情を見せていた。


空気の変化に気付いたアンジェはミシアに向かって「どうしましたか・・・?」と声をかけた時


「みんな!くるよ!!」


ミュラの一声が、強制的に俺達を前に向かせた。


唯一の大人の皮を被ったスライムが地面を蹴り上げ、奴が俺達に突撃してくるのと同時に、その後ろから側だけの子供たちが、一斉に魔法の詠唱を始めた。


魔法陣は一つ一つが大きく、その七色に輝く魔力の光だけで、村一つの証明には十分だと言っても過言ではない。


「そ、そんな!あんな小さな子供があんな魔法陣を!?」

「アンジェ!相手はスライムよ。人間ではないわ」


アンジェの焦りを払拭するように、ミシアは声をかける。


そう、どんな形であろうと、奴らはスライムだ。子供相手に攻撃できない、なんて甘い考えは出来ない。


「なにがなんだか分からんが!敵に同情の余地はないぞ!おらああああああ!!!!」

「もー!サリス!一人で突っ込まないでよぉ!!」

「ニナもついていくのですよー!」


俺は剣を握りしめ、襲い来るおっさんスライムに迎撃を開始する。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ