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226話 魔法が使えない俺と英雄たちの行い

暗雲立ち込め、大地は荒廃。


魔王が根城にしているとある場所で、彼らは最終到達点へとたどり着いた。


その終着地点はすぐそこにまで届きつつあった。


「ハハ!!温いな!!!貴様らの打撃も!物理も!何もかも!!!」

「お前すげえじゃねえか!ここまで歯ごたえのあるラスボス、死にゲー裸クリア初見の時以来だぜ!!」


淀んだ空気に閃光が走る中、彼は最終局面という絶好の舞台を楽しんでいた。


魔王からなされる黒い大粒の雨を、自慢の我流二刀で捌いていく。


男には特別な能力があ。


それは、相手の魔法を吸収し自分の力に変換することが出来ることに加え、自分の魔力を他人に譲渡することも可能なのだ。


しかし


「貴様の能力は知っている。強みも弱みもな!」

「やべ!!」


彼の弱点、それはキャパシティの問題。


魔力を吸収し、変換するまでにはタイムラグが生じる。


つまり、強力な魔法を受け続ければ、いずれパンクしてしまう。


それ故、一度吸収した分の魔力をどこかで放出しなければならないのだが、奴もそれは理解しているようで、そんなことはさせまいと無限に近い手数の巨大な闇の弾を彼らに撃ち続ける。


「一旦下がれ!私が前に出る!!」

「流石、頼りになるな!!」


「フン」と鼻を鳴らし、得意な高速移動でことごとく奴の大玉をひらりとかわし、彼よりも前に出る女剣士。


「『剣舞・斬空天断!』」


その場で女剣士は横薙ぎを繰り出す。


斬撃は最早次元を切断したのではないかと、誰しもが錯覚を起こすほどの魔法剣。


空間に生じる疑似的な亀裂は、魔法を中和していく。


「ああ!避ければ良かったか!サンキューな!!」

「・・・こんな時でも、いつも通りお前は阿保だな」


彼を小ばかにしたような態度の女は、何故か口角を上げ嬉しそうに剣を振るう。


その後ろから繰り出される七色の槍。


暗いステージを明るく照らすスポットライトが、奴に向かって放たれる。


「『エンシェント・エレメントレイン!』」


炎や氷、風などほとんどの属性魔法を散りばめた虹の雨は、襲い来る黒をことごとく消していく。


「皆さんを守って見せます!」

「私も!『ホーリーライト・サンクチュアリ!』」


攻撃魔法を放った彼女に奮い立った白魔導士は、全ての力を限界以上に底上げする広大な領域が展開され、仲間たちに絶大な力を与える。


「たく!攻撃魔法も補助魔法も最高だぜ!!」

「後ろ向いてないで!前見て前!!」

「油断しないでください!危ないですよ!!!」


油断なのか何なのか、彼は戦闘中にも拘わらず彼女達に顔を向けるも、次の特大魔法が放出されたことを察知して、彼は振り向きながらも魔法に二刀の剣を突きつけ、魔力の吸収を図る。


「油断?これは余裕ってもんだ」

「はあ・・・冷や冷やさせるな馬鹿者」


最後の決戦とは思えないほどの緊張感の無さ。


しかし、彼の行為は無意識に彼女たちの支えとなっていた。


一方で、一連の様子を見た闇の存在は笑う。


「フハハ!愉快だ!我を楽しませろ!!!」




状況は終了した。


この世界始まって以来の激闘の末、彼らはついに勝利を手にし、奴を跪かせたのだ。


「ふぅ、お前もう詰んでるぜ?どんくらいかっつーと、エロゲで最後の選択肢を間違えて、ノーマルエンド直行レベルの詰みだな」


所々に傷を負った黒髪短髪の彼は依然、余裕な態度と独特な台詞回しで禍の者へ突きつける。


「フ、フフ、人間の分際が生意気を言う。我は死なぬ、人間が生きている限りな」


禍の者は強がりなのか、それとも真実なのか、真偽が入り混じる不透明な言葉を紡ぐ。


「あなたは、人の手によって生まれた筈。なのに、何故あなたは人を淘汰するの?」


絹のようなシルバーの髪を靡かせる彼女は、自身が持ち得ない感性に対する単純な疑問を禍の者に投げかける。


彼女達は奴に苦しめられてきた人々を多数見てきた。


故に分からない。


人から生まれし存在が、人に恩義を感じる事なく醜悪な災いを引き起こしたその理由が。


「奴には分からんだろうな、人の心など。でなければ、世界を掌握するなどと言う下衆な発想にはならぬ。感情なぞ欠如しているのだろう」

「で、ですが、もしかしたら、何か過去に酷い目に遭ったとか・・・」


尖った耳の女剣士は冷静に侮蔑し、ゴミを見るような目で見下す一方で、丁寧で弱々しい声の彼女は、寧ろ逆ではないのかと希望を見せる。


その4人を前に禍の者は笑う。


「ハハ!さぁ、もう忘れてしまった。しかし、我は浅はかであった、とだけは理解できる」


浅はか。


その言葉はどのような感情の動きで、どういった思考からくるものなのか、女剣士には分からなかった。


「理解し難いな。反省しているつもりなのか?魔王の分際で」


女剣士は弱る魔王に切先を向ける。


しかし、それを制止するのは短髪の彼だった。


「まあ落ち着けって。自分が浅はかってことは、少なくとも行いが間違ってたって認めたってことだろ?過ちなんてのは誰にでもある。俺だって、推しの配信者に粘着してBAN喰らったことあるんだからな!」

「ゆうたの発言は、ちょくちょく意味わからないよ・・・。でも、過ちを反省して、もう一度やり直す事は出来るんじゃないかな?」

「流石だなルル!俺はそれを言いたかったんだ!」


ゆうたの発言に半ば呆れつつも、ルルは彼の心中を代弁した。


彼と彼女の中では、浅はかだった。の一言から、魔王が反省の兆しを見せていると受け取ったのだろう。


「魔王はさ、本当は何が欲しかったんだ?この世界で生まれて、見て、聞いて、その結果、人を歪に理解しちまったんだろ。なら、魔王だけじゃなく俺たちにも非があると思うんだ。そう思わないか?ランベルム」

「・・・お前は本当にお人好しのバカだな。出生がどうであれ、私は悪い事は悪い。裁かれるべきだと思うが」


基本的にゆうたとランベルムは思想が合わない。


だが、お互いの心情の理解はできる。


「フン、つくづく甘い。我がこの地に降り立った時から、この世界は混沌だった。そして、人と人がぶつかり合っている場面しか見てこなかった」


「しかし」と今までを己を否定する。


「貴様らとの戦闘、会話、思考を目にした時、我は人間の奥行を知った。我は恐らく、人間に興味があったのかもしれん」


シン・・・とひと時の沈黙が訪れ、荒廃に吹く暖かい風だけが彼らに音を運ぶ。


「・・・あなたは、やり直せます。今はまだ、世界があなたを許さないかもしれない。ですが」

「カバネ?それは・・・」


カバネの理想の続きを、ランベルムが続ける。


「奴が許される世界になるまで、封印をすると言いたいのか?」


奴は魔王、この世界を闇に染め、全てを己の手中に収めようとした極悪人だ。


しかしそれは、過去に縛られた魔王による唯一の障害だっただけであって、彼だけの罪としてはならないと、カバネはそう考えているのだ。


「いいじゃんそれ!俺は賛成だね!世界が何週もしたら、いい世の中になるだろ!!」

「私達は希望を持たないとダメなんだね。よりよい世界、争いのない世界にするために」


内心ランベルムは飽きれている。


ここまで来て魔王を許すという、彼らの神経が。


しかし、これまでの旅で彼女は嫌というほど思い知らされた。


どんな時でも希望を持ち続ければ、自ずと未来は開ける。


魔王に対しても同じことだ。


奴が少しでも兆しを見せたこと、微かな光が見えたこと、それを手放さないようしっかりと握りしめなければいけない。


「いやーこういう展開いいよな!ラノベの無機物少女が、心を手に入れた時みたいな?とにかく、何でも前を向いて真っすぐ進んでいこうぜ!な!魔王!」

「・・・」


明るく振る舞うゆうたへの答えは沈黙。


「それじゃあ始めるね。ゆうた、手を」

「お、おう!」


ゆうたはルルの手を握り、今まで魔王から吸収した魔力を己の力に変換させ、ルルへと流し込む。


その魔力は確かに暖かく、そして眩く光る。


魔王の体は光に包まれ、そして・・・


◇◆◇


ってことが昔あったらしく、次元だの神だのの話は一切出てこなかったね。


国王が英雄パーティだったころに、魔王を封印したところを話してくれたわけだ。


それにしても、俺の父親ってちょっと、なんというか、うざいな・・・


それに、師匠って昔ツンケンしてたんだね、ギャップがすげえ。


話を戻すと、国王から聞いた話はかなり丸く収まった綺麗なストーリーで、とても今魔王が世界をどうこうしようと思えるような内容ではない。


「なので、魔神の話は一切出てきませんでした。魔王は当初、この世界の征服を目論んでいたようです。どういった経緯で今、魔王が動いているのかという手がかりにはなり得ないと思います」

「なんだか、少し感動的だよねぇ。希望に満ちた話?みたいな」

「いい話なのです」


うーん、確かに今回の件と当時の話は全く関係が無さそうな気がする。


何がおかしいって、当時の魔王は人間に対して興味を持ち、魔王が未来でやり直そうって話だよな?


それなのに、今の魔王はスケールが広がってるし、第一当時の英雄は爪が甘すぎると思う。


俺だったら確実にとどめ刺してるし。


これでよかったのか?英雄たち・・・





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