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225話 魔法が使えない俺とプレゼント・フォー・ユー

明るい大空洞から仄暗い帰り道へ身体を向けた時、後方から声が聞こえた。


んん、この明るめで爛漫な声は、あいつか?


後ろを一斉に振り返る俺らの前には、さっきまで上にいた、彼女の姿があった。


「み、ミューさん!?どうしたんですか?」

「お?私達に会いたくなったか?」 


アンジェはともかく、サリスのその思考はもはや褒めてやりたいくらいだな。


ゼーハー息を切らして項垂れてるあたり、余程急いで来たんだろうなぁ。


自慢の白い翼がヘタってるし。


「はぁ、はぁ、いや!ちょっと、はぁ、わ、忘れ、忘れ、も、まして、はぁはぁ」

「大丈夫なのですか?」

「い、一回落ち着こうよ〜」


俺たちは疲労困憊の彼女の元へと距離を縮める。


肩を一定間隔で上げ下げしてる彼女の背中をさするニナ。


そんな急いでどうしたんだろう。


ん?手になんか持ってない?


「ミュー、その手に持ってんのは?」

「はぁ、あ、これ、女王様がアンジェさんに、はぁって・・・」

「私に、ですか?」


ふむ、どうやらネックレスっぽいな。


アンジェがミューからネックレスを貰うと、手のひらに乗せた宝石部分をじっと見つめ、ゆっくりの上に翳す。


光の当たり具合によって色合いが変わり、エメラルドグリーンからターコイズブルー、スカイブルーとグラデーションが流れる。


それは地平線を取っ払い、広大な草原と青空を繋いでるように見えた。


「・・・素敵ですね」


目を輝かせる姿を、俺らは黙って見ていた。



・・・少し経ち


アンジェからの圧力を受け、俺は黙って彼女からネックレスを受け取ると、後ろに回り込んで背後からネックレスをつけてやった。


俺不器用だから、ネックレスつけるの結構大変だったんだけど・・・


何とか母親からのプレゼントをつけ終わると、アンジェは足元に水属性魔法を使用して、簡易的な鏡を作り出す。


水面に映ったネックレスを付けた自分の姿に満面の笑みを浮かべ、俺達に向き直る。


「どうですか!似合ってますか!?」

「おう、めちゃくちゃ似合ってんじゃん!」

「えー!いいなぁー!!可愛いなぁー!!」


アンジェもミュラも、めちゃくちゃはしゃいでんなぁ。


ネックレスをつけたアンジェは、様々な決めポーズで俺らに自慢してくる。


そんな陽気な空気の中、1人が単純な疑問を提示してきた。


「そういえば、これから何処に行かれるんですか?」


聞いてきたのはミューだった。


確かに、ついさっきエルフの森に行くって決めたから、彼女たちには特に話してなかったな。


「ニナ達はエルフの森に行くのですよ〜」

「ああ!一度でいいから行ってみたくてな!!」


言ったそばから興奮を隠せないニナとサリスを前に、「エルフの森・・・」と復唱する。


どうにも何か言いたげなご様子。


「なんかエルフと因縁とかあんの?」

「いえ、因縁というよりは、何と言いますか、懐かしぃなぁと。ここを閉ざす前までは交流が盛んでしたし」


へぇーそうなんだ。


確かに、さっきアンジェから母親がエルフと云々って話しがあったもんな。


「もし、エルフの方々に会ったら、よろしく伝えといてください!」


ミューからの言伝依頼に対し、アンジェは「お任せください!」と胸高らかに答えた。


その後、俺たちは再び道の方へと身体を向けた時。


俺はミューに対して1個思い出したことがあった。


「ミュー、この道って明るくならないの?」


振り返った俺はミューに尋ねると、彼女は最初ポカンとした顔をしてから、「ああ!」と納得した様子で握り拳を手のひらへ縦に置く。


「すいません、暗かったですよね!それ!」


ミューは右手で指をパチンと鳴らす。


音が出口へと反響していくのと連動して、青かった炎はオレンジ色に変色し、奥まではっきり見えるくらいには、道を照らした。


「これでいいですか?」

「ありがとう、道がバッチリ見えるよ」


◇◆◇


「あなた様!お帰りなさいませ!・・・何故アンジェを背負っているのですか?」

「ただいま、それはかくかくしかじかで」


喜の感情から疑の感情に移行する元配下のミシアは、じとーっと俺もといアンジェを見つめる。


何だろう、すっげえミシアに睨まれてる気がする。



長い道のりを超えて、俺たちは王都へ帰還して、今はギルド。


冒険者の数は少なく、皆んな出払ってるみたいだ。


その少数は俺らを見るなり挨拶に来たり、手を振ったりしてくる。


いやぁ、俺に対する目も変わったなぁ。



アンジェはまだ全快してないし、足取りも不安定だったから、俺が背負ってここまで連れてきたわけだな。


道中、ちょくちょく俺の耳息吹きかけたり噛んできたりして、子供みたいなイタズラをしてくるのは流石にキツかったけど。


「私が代わっても良かったのだがな!」

「サリスには任せられないのです」

「落としたら最悪だもんねぇ」

「お前らぁ!!!」


相変わらずのサリスの信用の無さは、普段からの素行にあるのだろうか。


少し可哀そうまである。


寧ろ、許してるサリスは聖人君主という説が有力だな。


・・・


ギルドに来たのには訳がある。


魔王関連の情報共有もあるけど、一番はアンジェの身体について。


先の戦いで身体に異常をきたした彼女の事を心配して、ギルドに出勤しているミシアに見てもらおうっていうのが今の優先事項。


ミシアであれば、どれだけの負傷具合でどれくらいの時間で完治するのか等、詳細が分かるかなということでここに足を運んだというわけだね。


ということで、アンジェの事を一通りミシアに伝えた。


「分かりました。とりあえずこれからアンジェの検査をします。少々時間が掛かると思いますので、暫くお時間ください」

「ミシアさん、よろしくお願いします」


ミシアは「はいはい」と半ば呆れた様子でアンジェに返事をし、俺達をギルドの医務室まで連れていく。


んで、ベッドに寝かせた俺達は部屋から出され、急遽暇な時間が訪れた。


ん-どうしようかなあ。


とりあえず、フィラのところにでも行こうかなぁ、国王に色々聞いてみるって話もあったし。


「ここに居てもしょうがないから、騎士団に行くか」


ニナ、ミュラ、サリスは俺の提案に同意して、一旦騎士団に行くことにした。


◇◆◇


騎士団に到着し、騎士団長室に足を運んだ俺たち。


ドアをコンコンコンと3回ノックすると、奥から「どうぞー」と声が聞こえ、中に入る。


ドアを開けて目に入るのは、大量の紙束をいくつも乗せて机にかじりつく騎士団長様の姿。


忙しそー。


紙に目を通し、ペンを走らせつつ次の束の紙を凝視するフィラ。


「忙しいなら後日改めようか?」

「紙がいっぱいなのです」


俺の声に気づいたピンク髪がハッと顔を上げ、来訪者の存在を確認する。


目の下に薄く黒いラインが入ってるあたり、あまり寝れてないのかなぁ。


「あ、お帰りなさい皆様。・・おや、アンジェさんがいらっしゃらないのですね。どうぞかけてください」

「あぁ、ちょっとあってな」


部屋の中央にある小洒落た長椅子に座る俺ら。


サリスはフィラに近づき、背筋を伸ばして「何か手伝いますか!?」と若干焦った様子で協力の意思を示す。


「お帰りなさいサリス。紙には触らなくて大丈夫なので、あなたは団員の訓練についてください」

「わ、分かりました!!!っしゃぁぁああ!」


力強いガッツリポーズをした後、土埃が舞う程の勢いで駆け出し部屋を出るサリス。


サリス・・・それ、遠回しに戦力外通告受けてないか?


部屋のドアが壊れるのでは?と疑う音と共に、フィラは「はぁ」と息をつき、重そうな腰を上げで俺らの目の前まで移動。


「騎士団長って・・・なんだか大変なんだな」

「たくやさんも入りますか?サリスと代わってもいいですよ?」


邪悪な笑顔を向けるフィラ。


何故だか、半分くらいはマジで言ってそうだ。


ぜってぇ嫌だ。


「ニナ、偶にならお手伝いするのですよ?」

「わ、私も手伝おうかなぁ。なんか、かわいそうというか・・・」


ニナとミュラはいくつもの紙の束を見てドン引きしつつも、同情の目をフィラに向ける。


「フフ、お気持ちだけで十分です、ありがとうございます。・・・魔王の件ですね」


笑顔から一変、キリッと一瞬にして雰囲気を変えたフィラに対し、俺はいままで起こった一部始終を伝えた。


俺が話を終えるまで、一切流れを遮ることなく聞き続ける。


そして、国王から聞いた、当時の魔王がどうだったかについての話題にうつる。


「んで、そっちは何か収穫あったか?」

「一応、国王に聞きました。聞くところによると、あまり関連性があるかどうかは微妙ですが」

「そうなのか?」

「はい。わたくしが聞いたのは・・・」


これを皮切りに、フィラは国王から聞いた話を語り出す。




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