間話 世界の象徴と神からのお話
「この度は、本当にありがとうございました」
アンジェの母親が頭を下げる。
隣にいるミューも同様、それに習って頭を下げた。
今俺達は、一昨日戦闘していた城内の玉座の間。
所々に戦いの痕が痛々しく残っているが、使用するのには問題ないといったところか。
一昨日、昨日はアンジェの休息を優先し、アーデンに泊まり城に泊まらせてもらうことになった。
アンジェの容体は、最初こそひどかったものの2日立てばギリギリ歩けるくらいにまでは回復していた。
どうやらアンジェは、自分の中での全属性を混ぜ込んだ魔法を使用したらしく、その反動でこうなったらしい。
ルシールが発動した能力によって、町から魔物がいなくなったことで、ニナ、サリス、ミュラは一目散に俺らのところに駆けつけた。
その時のアンジェに対する心配たるや、凄かったなあ。
というか、アンジェ凄すぎじゃない?
まあ、完全復活とまではいかないけど、回復の兆しが見えてよかったよね。
「アンジェ、行くのね」
母親が心配そうな様子でアンジェに尋ねる。
アンジェはもの悲しげな雰囲気を出しつつも、強張った笑みで母親に答える。
「うん、私は冒険者だから。それに、次に会う時は魔王を討伐してるからね!」
彼女の決意と表情を見た母親は、「しょうがない」と半ば諦めたような笑みを浮かべる。
「わかった。次会う時が楽しみね。・・・」
母親が俺を見る。
すると玉座に座していた母親はゆっくりと立ち上がり、俺の目の前まで近づく。
そして、俺の手を両手で強く握る。
なんだ?
「アンジェをよろしくお願いします。色んな意味で」
「あーやっぱりかあ」
そういわれると、少し思ってたなあ。
「たくや君、私もよろしくお願いね!」
「ニナもよろしくなのです!」
「私はよろしくされる側だがな!!」
何だこいつらは。
俺に何を求めてるんだろう・・・
少し気まずいし、話を変えたい・・・
「それより、聞きたいことがあるんだけど!」
「たくやさん、逃げましたね?」
視線が痛い。
特にアンジェの視線が。
いやでも、これ重要な事だし聞かないとダメだろ。
「魔王は今、とあるものを探してるらしいんだよ。どうやら次元を超えて魔神になるっぽくて。ここにある天穹石もその一つらしいんだけど、それについて何か知ってるかなぁって」
俺の問いに母親は微笑を崩すことなく俺の手を放す。
そして、自らの真っ白い衣服についている装飾の一つを手に取り、俺達に見せる。
それは青い楕円の石。
青単色というよりは、水色、白、青、群青とブルー系の色が止まることなく変わる。
これって、まさか?
「これが天穹石です。この大地ウラノシエラを支え、一説ではこの世界の天そのものを象徴する石だと言い伝えられています」
「わあ、キレイですねえ」
「ピカピカしてるのですよ!」
「えー!いいなあ、欲しいなあ」
アンジェ、ニナ、ミュラは石に見惚れてる一方で、サリスは「ふーん」といった興味なさげな反応だ。
こいつ、マジで戦闘以外興味ないんじゃねえの?
それにしたって、この石が天そのもの?大きく出たなあ。
それじゃあマジで、これ奪われたら一巻の終わりだったじゃん。
あぶねー。
「それだけではありません。この世界には様々な役割を持つ象徴があります。地を司る地麗晶、空を制する龍眼玉、時間の刻桀石、空間の宙創玉、そして、この天穹石です」
合計で6個。
内二つは王都にあるし、この国に一個。
ということは、あと2つどこかに存在するってことだよな。
・・・ん?転移結晶は?あれも必要な奴だったよな?
もしかして、地麗晶がそれなのでは?
「それらが全て集まるとどうなるかは分かりません。ですが、この世界が何かしらの変動を起こすことは明白でしょう。それらは全て、神が作り出したと言われています」
「神、なのですか?」
「スケールが大きすぎるよ~」
「うむ!!私もサッパリだ!!!」
神って言ったら、あのバレスクか?
いやいや、こんなもんなんで作ったんだっつーの。
魔王の件って神にも非があるんじゃないの?
じゃあ、尻ぬぐいのために俺をこの世界に連れてきたんじゃねえか!
クッソ迷惑だなあ。
その時だった。
「やーごめんてえ!!まぢでー!!」
!?
この感じ、もしかして・・・?
「あ、あなたは!!」
「えっと・・・どちら様?」
アンジェと母親が同じリアクションを取りながら、一瞬で現れたそいつに目をやる。
やっと出てきたのかよこいつ。
「あ、神なのです」
「えー!久しぶりに見たんだけど!」
「か、神!?!?こいつが神バレスク様なのか!?!?」
各々が好き勝手な反応をする。
その反応に神は「いや~」と頭を掻きながら笑う。
何しに来たんだろう・・・というか
「今までなんで出てこなかったんだよ?結構やばい状況なんだけど?」
「どーどー!アタシも色々大変だしぃ?やること多いしぃ?やになっちゃうんだわぁ。まぢむりって感じ」
本当に、その喋り方どうにかして欲しい。
「えっと・・・神様がさっき言ったものを作ったんですか・・・?」
恐る恐る神に尋ねるアンジェ。
それに対し神は「それなー!」とよく分からん言語を喋る。
なにそれ。
「アタシが作ったんだよね~。理由は世界形成の為、って感じ?」
「世界、形成?どういうことぉ?」
「意味が分からないのです」
疑問を浮かべる俺らに神は「んー」とわざとらしく考えるような素振りを見せる。
「アタシってこの世界作ったぢゃん?んでー、ずっと維持し続けるのもムリって感じだからぁ、アタシのぱわーを分割したってところかな?自動発電的な感じで」
じどーはつでん?なんだそりゃ。
というか、やばいじゃんそれ。
そんなもんを俺ら研究とか言って、ぞんざいに扱ってたの?
「あ、ちょっとやそっとじゃ壊れないし、普通の人間に扱えるものじゃないから!それはおっけー!でも、流石に魔王にわたるのはチョベリバなんだよねえ」
ち、ちょべりば?
「魔王に渡ると、魔神になるんですよね?」
首を傾げながらアンジェが聞く。
「そうだな~、魔王ってさ、いっちゃえば魔界の王な訳。あ、魔界はアタシが作ったわけじゃないんだけど!その魔界で頂点の存在がそれら全部集めたら、そりゃなんでもありよりのありなんよ。それが神に等しい能力ってことじゃないかな?知らんけど」
そうなんだ、意味わからん。
ざっくり言うと、普通の人間は大丈夫だけど魔王は駄目ってことだな。
「本当だったら、アタシが作った神とか大精霊とかが守るはずなんだけど、なーんでか言う事聞いてくれなくてえ。つらたんなんよぉ」
お前のそのうざい喋り方の問題じゃない?
愛想尽かされてるんだよ多分。
じゃあ、神ってダクレクシアだけじゃないし、大精霊もあの墓に存在する以外にもいるんだね。
あったことないけど、俺らが見えないだけ?
・・・いや、ちょっと思ったんだけど。
なんで父親を追加で呼ばないんだよ。
絶対いた方が楽でしょ。
「なあ、話変わるんだけど、なんで父親とか呼ばないわけ?悪魔はこの世界にちょろちょろいるわけじゃん?だったら俺の父親とか母親呼べば戦力になるだろ」
「いやいやいや、無理無理!そんなぽんぽん連れてきたら、あっちの世界の神に怒られるし!しかも一回ブチギレられてるし・・・」
両手をブンブン振って、焦った様子の神。
こいつほんとに神?
「怒られるくらい、いいだろ別に」
「なーに言ってんの!下手したらアタシ消されるからね?アタシ消されたらこの世界も終わり!どう?」
どう?じゃねーよ。
・・・神の世界はどうやら厳しいらしい。
むしろ、自分の世界の人間を、魔王とか言う危険分子を孕んだ世界に差し上げるあっちの神様は、優しささえ覚えるね。
そこで生じる疑問。
別世界から人間を連れてくることはダメなのに、何故悪魔はオッケーなのかと言うことだ。
魔界には別の神様がいて、そいつは全然いいよってことなのだろうか。
「それで言うと、悪魔だってこっちに来たらダメじゃないか?魔界にだって神様はいるだろ?」
「あー確かに!それってずるいよね!」
腰に両手を当てて頷くミュラ。
しかし、神から放たれたのは意外な言葉だった。
「あっちに神はいないけど?」
・・・はい?
「神がいないのに、なんで魔界が作られたんだよ。じゃあ仮に魔王が神になったら、魔界を統制してくれるかもしれないじゃん」
神はスンとした表情で俺を見る。
なんか、俺が変な事言ったみたいじゃんか。
「あぁ、それは無理。その前にこの世界が滅びるから。いったぢゃん?世界を形成してるのは、アタシが作った奴だって。後から知ったんだけど、あれらって一度切り離したらアタシに還元されないんよ・・・」
・・・・・・
やっぱコイツが諸悪の根源じゃねえか!
自分の仕事放棄したせいで、俺らこんな目に遭ってんのかよ!
そりゃ、他の神も大妖精とやらもため息もんだな。
「んじゃ!アタシ戻るから!!ガンバでーす!」
「お、おい!!」
・・・
神は消えた。
それはもう、瞬きした瞬間には誰もいなかったかのようだ。
「行っちゃいましたね・・・」
「何でも急なのです」
「もー頭痛くなってくるんだけどぉ!」
「本当か?私は最初から聞いてなかったぞ?」
皆が不満を垂れ流している中、母親とミューは驚きの表情を垂れ流していた。
・・・色々と情報を詰め込まれて頭が痛えよ。
しかも最後、逃げたな?
まだ聞く事あったし。
それに気になるのは、魔界には神がいないってことだ。
神のニュアンス的に、世界というのは神が作り出して、その世界を見守ってる?って事だ。
そうすると、魔界とは神が創り出したのではなく、勝手に創られたって事であってるよな?
・・・まあ、そんな事考えても仕方ないか。
結局のところ俺たちがやる事といえば、神が作り出した6つ象徴。
これを渡さないようにしつつ、幹部を倒してついでに魔王を撃破する。
まとめてみれば、やる事は簡単な事だな。




