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222話 魔法が使えない俺と召喚能力

爆音が響く。


黒い影は左右に揺らめくと、漆黒を纏った鎌が不自然に空中で回転し、6つの凶器を飛ばす。


耳障りな回転音を鳴らしながら空を切り、私の身体を切断しようと不規則な挙動を見せる。


「『トール・ブレスター!』」


私は両手を前に突き出し、目の前に巨大な雷の槍を創造する。


槍の発射と同時に次の魔法を扱うために、魔力を一瞬で練り上げた。


「『ガイア・ディラクション!』」


足元から出現する山脈を思わせるほどの巨大な岩石が、私の前方を覆いつつ、地を抉りながら直進するとともに、6つの鎌は弾かれ消滅。


雷の槍は回転鎌を素通りし、両手に鎌を持ち直立不動のルシールに向かって飛んでいく。


「派手な魔法だ。嫌いじゃないぞ」


ルシールは黒い魔力を覆った鎌をまるで遊ぶように回すと、やがてどす黒い闇の輪っかを2つ形成する。


「そら、プレゼントだ」


黒いリングは次第に勢いを増し、自身を襲う雷の槍に向かって飛んでいく。


闇の輪と雷は衝突し爆発する。


だが、もう一方の輪っかは勢力を落とすことなく、私へと飛んでくる。


あんな簡単に、私の魔法を無力化するなんて・・・


でも


「まだ!『アブソリュート・メテオ!』」


氷の隕石を降らす。


そして


「『テンペスト・ブラスト!』」


空を裂く暴風を発生させ、巨大な氷塊と共に奴の攻撃を無効化し、そのまま・・・


「それだけか?」

「・・・っ!!」


目の前が反転したようだった。


それくらいの衝撃。


嘘・・・


信じられなかった。


混沌極まる暗黒の輪っかが複数形成されていた。


1つ2つではない、10、いや20はあるだろうか。


それが一斉に私に降り注ぎ、私が発動した魔法をことごとく闇に葬っていく。


「ヴぉ、ヴォルカニック・・・」

「無意味だな」


駄目、間に合わない・・・


どうする、どうする?


魔法を・・・



「『ダイダル・ノア』」


突如、目の前に雷を纏った巨大な渦潮が出現し、黒のリングを消し去っていく。


その渦潮は徐々に威力を増し、部屋全体を包むよう。


神の洪水を思わせるそれは、リングはおろか、ルシール諸共呑み込み、絶叫と共に沈む。


見なくても分かる。


あの魔法で、ルシールは跡形もなく消滅したはず。


あれで生きてるとは到底思えなかった。


それくらい凄まじい魔法が脳に焼き付く。


それをなした人物が目の前にいた。


「・・・お母さん!」

「アンジェ、大丈夫?・・・はあ、はあ」


疲れ切ったお母さんは膝から崩れ落ちそうになり、私は咄嗟に体を支える。


お母さんの様子を悟ったかのように、災害とも呼べるような魔法は縮小していく。


・・・体力の消耗が激しい。


先程の魔法、かなりの魔力を消費するようだ。


「ありがとうお母さん・・・守ってくれて」

「はあ、はあ・・・当たり前、でしょ」


そういってお母さんは私の頬に手を触れようとする。



「全く、まだそんな力が残ってたか」


・・・え?


顔をあげる。


目線の先には、あいつがいた。


「嘘・・・」と口から零れてしまう。


「さっき言っただろう?俺様の能力を」


全くアクションがなかったのに、奴は復活したんだ。


記憶を保持した別のルシールに成り代わった。


突きつけられた現実はそういうことだ。


「貴様には恐れ入る。俺様と戦ってまだ動けるとはな。一応、お喋りしてる間に体力を回復させてたってことなのかもしれないが、それももう限界のようだな。ハハ!!」


面白くもないのにワザとらしく笑う悪魔に、かなりの嫌悪感を感じてしまう。


つまり、私が来る前からお母さんはミューさんと戦っていたってこと。


それでも奴はピンピンしてる。


そう考えると、絶望感が脳天に重くのしかかってくる。


・・・あれを使うしかない。


でも、あの魔法を使えば、私は暫く動けなくなる。


もし、効かなかったら?


「いいもん見せて貰ったお礼だ。とっておきを見せてやろう」


両手を広げると同時に姿形が変化していく。


あれは、たくやさんが戦っていた時と同じ形態だ。


歪な角、6枚の翼、無数の目、それに体形の巨大化。


それがとっておきってこt


「『アペルピシア・ニュクス』」


床から魔法陣が出現する。


2・・・3・・・10・・・


そこかしこに黒い魔法陣を展開していく。


そして



「絶望を送ろうか」



魔法陣から現れる。


ルシールが。


どんどん、同じ悪魔が魔法陣から姿を現す。


「え・・・や・・・」


思わず口に出る。


目が離せない。


その光景は最早、絶望の2文字を体現するかのようだ。


「俺様『達』が相手をしようか」


ルシールは、己自身を召喚した。


《《10体》》のルシールが一斉に私達を見つめ、ほくそ笑む。


奴らを一遍に相手する・・・?


冗談ではない。


お母さんが体力を限界まで使って一体。


それを10体分。


加えて復活する。


「は・・・はは・・・」


笑うしかなかった。


どうすればいいのか、頭の中で様々な感情が渦巻き、停止してしまう。


胃酸が逆流しそう。


足が震える。


逃げ出したくなる。


でも、お母さんが・・・


たくやさんも、ニナさんも、ミュラさんも、サリスさんも外で手一杯。


入り口にいるたくやさんを呼びに行く?


たくやさんを待つ?


その間にお母さんは?ミューさんは?


ここには私しかいないのに、身体が動かない。


皆さんが外で頑張ってるのだから、私も。


私はずっと、たくやさんに甘えていたんだと実感する。


何があってもあの人が解決してくれる、だから今回も大丈夫だと過信していたのかもしれない。


ああ・・・こんな時たくやさんは今までどうやって



『大丈夫だから、怖かったら目瞑ってて』



ふと思い出す、最初の時の事。


同い年くらいの少年が、自分よりもはるかに大きなドラゴンを生身で戦った時の事を。


そこから先もずっと、倒せないと思っていた相手をことごとく倒していった。


配下、悪魔、幹部・・・


それらをすべて、余裕を見せながら剣一本で解決していった。


軽口を叩きながら剣を振るう彼の姿が目に浮かぶ。


「フ、フフ・・・」

「あ、アンジェ?」


思わず笑ってしまい、お母さんに心配されてしまった。


身体の力が戻っていく。


何故か恐怖心が消える。


視界が鮮明になり、目の前の光景にちゃんと向き合える。


「どうした?気でも狂ったか?」


首を傾げ、ルシール達が私に注目する。


そして、奴らに言ってやる。


「あなたが増えたところで、別に何も変りませんよ?」


シーン・・・


辺りは静まり返る。


奴らは面を喰らったような雰囲気を漂わせつつも、徐々に体が震え始める。


「は、ハハ、ハハハ!!!!!言うようになったな小娘!!死なんか生ぬるい程の苦痛を与えてやろうか!!!!」


10体のルシールが一斉に翼を広げる。


そして、広大な玉座を覆いつくすほどの黒より黒い輪っかが無数に現れ、白かった部屋はもはや黒一色に染め上げられる。


その様子に驚愕するお母さんは、私の服を引っ張る。


「に、逃げなさい。あなただけは逃げて・・・」


私は口角を上げて、お母さんに言う。


「大丈夫だから、見てて」


真っ黒く無限のような闇の数々は、もはやこちらに放たれる直前だった。



魔力を集中させる。


ミストが炎、水、風の三属性だった。


それなら、4属性、いや全部を混ぜ込む。


私の身体がどうなるかは予想もつかない。


だが、どっちみち死ぬのなら、やった方が格段に良い。


意識を、神経を、魔力を、全て集中させて・・・


「ゴフッ」

「アンジェ!?何を!?!?」


口から血反吐が出る。


これ以上はやめろと体がセーブをしているようだ。


だが、そんなものはいらない。


取っ払ってしまえばいい。



「さあ!!絶望を味わえ!!!『パラダイス・ロスト!』」



闇が解き放たれる。


一斉に現れる闇の混濁が、ここら一帯を呑み込みすべてを消滅させていく。


そんなことを気に留めず、自分自身に集中する。


そして出来上がる。


全属性を混ぜ込んだとっておき。


それを奴に放つ。


『アレヴィサス』













身体が動かない。


ぼんやりと意識だけはある。


・・・どうなったのだろうか。


ルシールは?


魔法は?


目を開け確認しようとする。


「アンジェ・・・」


お母さんの顔が見えた。


目に涙を溜め、私の顔を見つめている。


少し笑顔を見せるお母さんの顔を見るに、どうやら私は奴を倒したようだ。


良かった。


じゃあ、この町はもう大丈夫なんだ。


これでお母さんたちも


「貴様・・・」


!?


一番聞きたくない声が聞こえてきた。


「まさか・・・ここまでできるとは・・・はあ、はぁ・・・思わなかったぞ」


かすれた声を聞く限り、かなり限界に近いような状態だと思われる。


でも、奴はまだ生きている。


倒せなかった・・・


「驚愕だ。俺様を何十回も殺すほどの魔法とはな。召喚先の俺様にまで影響を及ぼすその魔法、称賛に、価するぞ・・・」


横目で見ると、奴の身体は新品そのもの。


しかし、内部に影響が出ているのか、万全な状態ではないようだ。


「少しすれば、また体力が戻るはずだ。まあ、貴様らを殺すとなれば、今のままで十分だ」


ルシールが近づいてくる。


お母さんも、ミューさんも、そして私自身も動くことはできない。


ああ、ここで死ぬのか・・・


「貴様の事は忘れん。誇りを抱いて死ぬがいい」


あ、ダメ・・・


私はここまでだったみたいだ。


死の瞬間ははっきりと分かる。


でも、ここまで追い詰めたのなら、きっと皆んながなんとかしてくれるだろう。


みなさん、たくやさん


どうか


後は、頼みます・・・



ドスッ


























「よく頑張ったな。大丈夫だから、怖かったら目を瞑ってて」


























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