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216話 魔法が使えない俺と天人族と女王

サリスを俺が、ニナをミュラが背負って白く眩しい街中を歩く。


街並みは石なのかレンガなのかよくわかんないけど、とりあえずそんな感じの磨き掛かった白い石材が利用されてる。


建物の姿形、高さ、大きさは大多数が統一されてて、見てて気持ちいい。


加えて、白という汚れが目立ちやすい色にも関わらず、汚れがあまりない。


それゆえに、王都と比較しても新目な印象を与えてくる。


そんな中で暮らしてるのは、白い翼と青い髪が目立つ天使もどきたち。


そいつらが一斉に囲って来て、そんで今。


「な、なんで人間がいるんだ!?人間だけじゃない、半人もいるじゃないか!?」

「普通ここには来れないはずでしょ!?どうやって入ったの!?!?」


いやー、すっごいもう、居づらい・・・


何十人に囲まれながら、色々声をかけられたり、至る所からヒソヒソ話が横行したり、これ殺されるんじゃね?


とんでもねえ所に連れて来たなコイツ。


ミューはオドオドしてるし。


「たくやさん、どうします?」

「うーん、流れに身を任せようぜ。それかチャンス見て逃げようか」

「でもさー、こんな数逃げられる?」


まあ、逃げようと思えば逃げれるけど、問題は空の上ってことだよなぁ。


落ちたら終わりだし、そこんとこがねぇ・・・


あら、周りがどんどん近づいて来て、パーソナルスペースが縮んできたなぁ。


「たくやさぁん」

「や、やばいよぉ」

「うーんそうだなぁ。ここは・・・」


逃げるかと言おうとした時。


白服のおっさんが俺の目の前まで近づいて来て



「よく来たねぇ!!!!!」


握手される。


・・・は?


「久々に人と会えたなぁ!!!!!!」

「新鮮でいいわねぇ!!!どこから来たの!?!?」

「君たちは冒険者なのかい!?!?」


めっちゃ歓迎されとる・・・


でけえ声が街中に響いて耳が痛い。


「君って龍人族!?うわぁあ!!初めて見たヨォ!!!」

「あ、あははありがと・・・尻尾引っ張らないで!?」


ミュラは囲まれながら、子供に尻尾を引っ張られてるようだね。


周りの声に反応したのか、ニナが目を覚ました。


「むーなんなのですか?」

「君は獣人族だね!?うわー柔らかーい!」

「な!なんなのですか!?」


なんかニナもウザ絡みされてる・・・


半人2人は触られまくってるなぁ。


あ、サリスも意識取り戻したか。


「んー、なんだ?これは・・・てどう言う状況だ!?」

「おねえちゃんは騎士なの?」

「お!そうだぞ!!しかも副団長だ!!!」

「わー!!!凄い人なんだね!!!」


子供に煽てられて、俺の背中ではしゃぐサリス。


こいつ落とそうかな。

 


そんな感じで、俺ら全員は珍獣に遭遇した時みたいに、物珍しい目を向けられながら騒がれてる。


まあ、戦闘になるよりマシか。


それにしても、この驚きようはなんだ?


今までずっと、上の世界と下の世界は完全に隔絶してて、彼らは人と接したことがないとか?


まー考えても分からんな。


「なあミューみんなのこの状況って・・・」と俺が彼女に質問しようとしたら


「よく連れてきたなあミュー!お手柄も限界突破じゃないか!」

「はい!私はやればできる子なんです!」


話聞けねえな。


てか、こいつ攻撃してきた癖に、なんで誇ってんだよ。


さっきまで靴舐めるとか言ってたくせにさぁ・・・


それにしてもすげぇな。


老若男女みんなミューみたいな白い服着てるし、耳尖ってるし髪青いし。


この街は統一されてないと気が済まないのかな・・・


ん?


アンジェって青髪じゃない?


一応、色は水色に近いけど、俺青髪の人って会ったことないかも。


もしかして、関係ある?


・・・いや、でもゆうて、髪の色なんてあんまり関係ないか。


大会にいたベレイなんてピンクだったし。


アンジェは耳尖ってないしね。


「あなたの髪、私たちに似てるのねぇ」

「そうですか?少し私の方が薄いと思いますけど」


アンジェも当然のように絡まれてて、俺が考えてた髪の話をしてるらしい。


「あと、顔がなんと言うか・・・似てるのよねぇ」

「誰にですか?」


「それは・・・」と言いかけた時、奥から声が聞こえる。



「どういった騒ぎですか?」



鈴の音のように澄んだ声。


奥から徐々に近づいてるみたい。


まだ見えないけど、気配的には周りの奴らと一緒で翼が生えたやつ。


ザワザワとしてた騒音は、徐々に音を止め始める。


目の前に広がってた白い群れが左右にはけて、一筋の道が開かれる。


ミュラとニナが「え・・・と誰だろう?」「綺麗なお方ですねえ」と小声で感想を言う。


ひらけた道の真ん中には、女性一人と左右に男性二人。


周りの人と同じように、青髪で白い翼と尖った耳。


だけど、服装が他の人とは違い、ところどころに青のラインや、金色の装飾が施されてるあたり、多分偉い人なんだろうね。


あれ?なんか見覚えが・・・


「あなた方は下の世界からいらっしゃった方達ですか?」

「そうだね。なんか来れちゃった。あ、道案内はこのミューに」


「あ!!あ!!」とミューが意味不明な声を出している傍ら、眉をピクリとも動かさず、少しだけ優しい表情を崩さずに俺達を見つめる女。


「この人は誰だ?」

「さー?偉い人かな?」

「なんだかすごそうな人なのですね」

「あんまり言ったら私達、不敬にあたりませんか・・・?」


女性陣がこそこそと話す中、周りを囲ってた天人族たちは左右に列をなしていて、全員片膝立ちしていた。


この状況を見るに、マジで偉い人なんだろうなあ。


するとミューからでけえ声が放たれる。


「なにしてるんですか!頭を下げてください!!この方は、アーデンの女王『セラフィ』様ですよ!?」


おー、マジで偉い人じゃん。


ミューの注意勧告を聞いたセラフィ―は「良いですよ」と許可する。


それに対し、片膝ながら地面につく勢いで頭を下げる。


なんだかなあ。


「どういった経緯でこちらまでいらっしゃられたのかは存じませんが、久々に下の世界の方々と出会えて嬉しく思いますよ」

「それは、どうも?」


かたっ苦しー!


空気も硬いし俺この感じ嫌なんだよなあ。


「いい人みたいで良かったですね」

「ほんとだよー、これで処刑って言われてたら、もう発狂しちゃうよー」

「まあ、私は分かっていたぞ?」


嘘つけ。


と一同が安心する中、ニナが「ご主人様」と俺の袖を引っ張る。


それに対して「どうした?」と聞き返す。


「なんとなくなのですけど、アンジェに似てますのです」

「あー俺も思ってた。雰囲気というか、顔のパーツっていうか、ちょっと似てるよね」


俺とニナの会話を聞いたセラフィは急に



「アンジェ・・・」



と驚いた表情を浮かべた後、目が潤い始めた。


小さいながらも彼女から漏れた声は、母が娘の名前を呼ぶ声に思えた。


感極まり、口元を両手で隠し、徐々に表情が崩れていく。


・・・これって、もしかして。


当たり?


「え、嘘!?アンジェってまさか!」

「おい!本気か!?アンジェは天人族なのか!?」


アンジェは難しそうな顔をしながら、少しだけ前に出る。


急な展開に理解が追い付かないながらも、本当には母親なのかもしれないという葛藤が、彼女の中で渦巻いてるんだろうね。


静寂の中で、アンジェとセラフィが一歩、また一歩とゆっくりと互いの距離は近づいていく。


そして2人の距離は、手を伸ばせば届く距離。


「えと・・・お母さん・・・なの?」

「その目・・・その髪・・・ああ、アンジェ・・・」


もはや言葉は不要と、セラフィはアンジェに抱きつく。


娘を抱く母の腕は、自身の感情を表すかのように強く、最初こそ戸惑っていたアンジェの腕は、徐々にセラフィの背中に回していく。


アンジェの内に秘められていた母への渇望が溢れ出し、母を抱く腕は力を増していくとともに身体が震える。


娘から母へと向けられる感情の吐露は、仄かに場の空気を温めていく。


「良かったのですね~、感動的なのです」

「なんか私、泣けてきたよお」


ニナとミュラがほんのりと涙を滲ませるのとは別に


「うわああああああああ!!!アンジェえええええ!!よかったなあああ!!!!」

「こんなの泣くに決まってるじゃないですかあああああ!!!!!」


うるせーのが2人。


サリスとミュー。


感動が台無しなんだけど・・・


まあともあれ、ここへ来た収穫はかなりあったね。


暫くあのままでいさせてあげようか。



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