214話 魔法が使えない俺と戦闘・天使様
さて、俺への魔法が来なくなったから、とっととやっちまおうかな?
見た感じ、天使様が同時に展開できる魔法陣は6つ。
扱える属性は炎、氷、風、土かな?
まあ、俺には関係ないんだけど。
「『ボルカニック・ブレイド!』」
アンジェは土属性の魔法を展開しながら、2つ目の魔法を実行する。
巨大で燃え盛る業火の剣を出現させ、天使に飛ばす。
「ふむ」
天使は眉をひそめ、ミュラ達に連射する、4属性の魔法陣のうち、2つをこちらに向ける。
「人間にしては、中々魔法を扱えますね」
「あ、ありがとうございます!」
「アンジェ、あいつ多分褒めてないよ」
天使の声掛けに、感謝を述べるアンジェ。
アンジェって、言われたことをいいように捉えるよなぁ。
天に立つ天使様はほくそ笑み、2つの魔法陣から魔力が立ち込め、融合し、放つ。
「『ラヴァ・ドレイクファング』」
恐らく、炎と岩混ぜ合わせて溶岩を作り出したのかな?
その溶岩の塊が龍となり、口を開けて襲いかかる。
「うわ!なにあれ!?そんなことできるの!?っとと!」
「あちちーなのです!」
ミュラとニナは、飛んでくる魔法の弾丸をかわしながら天使の魔法を見て驚く。
「ま、魔力を混ぜ合わせるだと!?なんなんだそれは!?」
サリスはいまだに聖剣と奴の魔法の鍔迫り合いをしながら、目の前の光景に対して、信じられないといった心情を吐露する。
あれ、そうかな?
なんか、魔法を合わせるって、普通にやってるもんだと思ってたけど、そうでもないのかなぁ。
俺が今まで見た、火とか水の竜巻って、原理同じじゃない?違うのかね。
とりあえず溶岩の龍に剣をぶつけて相殺する。
中々消えないなぁ、あちち。
なんとなくサリスに聞いてみた。
「火の竜巻とかと何が違うの?」
「何を指しているのかは知らんが、奴の魔法は炎と岩を完全に混ぜ込んで、違う属性の魔法を作り出している。たくやが言っているそれは、あくまで炎属性魔法の威力を上げる為に、風属性の魔法を使用しているのだろう」
まさか、サリスからこんな難しい話が出てくるとは思わなかった。
ただの単細胞だと思ってたけど、ちゃんと知識あったんだ・・・
じゃあ俺が見て来た魔法は混ぜてるんじゃなくて、1つ目の魔法を支える役割として、2つ目の魔法を使ってるってことかぁ。
さっぱりわかんねえな。
・・・あ、あれかな?
大会の時にシオが光と闇の魔法を混ぜ合わせてたやつ。
イメージとしてはあんな感じ?
まあ、考えても仕方ないし、そろそろ天使様に接近しようか・・・
「ふむふむ、なるほど」
アンジェ?
なんか水色の髪を揺らしながらひとりで納得してるけど、どうしたんだろう?
「アンジェ?どうしたの?」
一点を見つめて考え込んでたアンジェが俺の方を向く。
「あ、いいえ!色々考えてて!あ、それじゃあ見ててもらえます?」
アンジェはおもむろに手を、天使様の方へと伸ばす。
掌を開くと同時に、3つの魔法陣が展開される。
ん?まさか?
「いきますよー!『ミスト!』」
随分と単純な名前だなあ。
何が起こるんだろう・・・
えっと、魔法陣から白い霧が手てきて、天使が発動する巨大な岩石、溶岩の龍、氷山を包み込んで・・・
溶けた。
「なんだ!?奴の魔法が全て溶けていくぞ!?」
サリスが大げさにリアクションを取る。
・・・うえ、こわ!
あの霧に触れたら溶けるじゃん!!
そう思ってると、アンジェが「あれ?」とふらつき始める。
「うわあ、結構これ疲れますね・・・」
「おっと、大丈夫?」
「あはは、ありがとうございます」
魔法を使った瞬間、身体の力が抜けて倒れかけるアンジェを俺が抱き留める。
なになに?何したの?
すると上空からミュラとニナが
「わわ!霧が広がってくるのです!!」
「魔法が飛んでこなくなったけど、こっちも近寄れないよお!!!」
魔法から逃げていたミュラとニナは、今度は広がる霧から逃げまどい始める。
ちょ、被害が広がってるんだけど!?
その霧が迫りくる中、天使は少し焦ったような顔をしていて、むやみやたらに魔法を発動する。
「え!?な!?なんですかこれは!?!?魔法が!魔法がすぐ消えて・・・!?」
そう、天使が魔法を連発しているのだが、その魔法は全てアンジェから放出された霧により、一瞬で消滅していた。
おいおい、これとんでもねえ魔法使ったんじゃないの?
「アンジェ何したの?」
「ええと、あの天使さんと同じように、魔法を混ぜてみました。炎と水と風の属性魔法です。初めてやったので、ちょっと疲れちゃいました。えへへ」
えへへじゃないよ。
まさかとは思ってたけど、アンジェって天才の類じゃないの?
天使の魔法は属性二つを掛け合わせて発動したもの。
それに対してアンジェは、3つの魔法を混ぜたもので、しかもぶっつけ本番。
学習能力えぐ・・・
兎にも角にも、これで魔法が飛んでこなくなったわけだし、ちゃちゃっと終わらせちゃいますか。
なんか、天使が無駄に魔法を連続で発動してるから、疲労困憊って感じだし。
「ちょ!溶けてる!!私の剣溶けてる!!!」
サリスが慌てて霧から剣を引っ込めて、剣を鞘に収める。
やば、霧がもうこっちまで来てるな。
「す、すいません・・・」
「いや、アンジェはよくやったよ。ちょっと休んでて」
「たくやさん・・・!きゅるん」
・・・?
んじゃ、霧を斬って消し飛ばして、そのまま天使に突っ込むか。
斬。
霧に向かって剣を振ったら、あっという間に充満しつつあった白い空気は消え去った。
脚に力を入れて、思いっきり床を蹴る。
「はぁはぁ・・・こ、これで、これで魔法が・・・」
「もう遅いよ」
「!?」
俺と天使の距離はもはや、目と鼻の先。
剣を右上に振り上げ、振り下ろすまで秒読み。
「え、『エレメント・ブラスト!!』」
疲労の様子を見せながらも、天使は魔法を発動する。
突如、俺の目の前に出現する4色の魔法。
炎、氷、風、土の4属性がゼロ距離で発射体制に入る。
んま、そんなもん、もうやらせないよね。
剣を振り、縦、斜め、横と魔法に向かって3回斬りつけると、ものの見事に消失する。
「ま・・・魔法が斬られた・・・!?魔法も使ってないのに・・・」
「あーはいはい、もうそれ聞き飽きたから。んじゃ、斬るねーそれっ・・・」
と俺が天使に向かって振りかぶる瞬間。
刹那、彼女は空中で頭を下げ、腰を曲げ、膝を曲げ、肘も曲げて縮こまる。
なんだか、すごい綺麗な体勢だなぁ。
しかもすげー早い。
「こ、降参です!!!すいませんでした!!許してください!!!!」
当たる直前に刃を止める俺。
・・・こいつ、負けを認めやがった。
「は?降参?」
「はい!参りました!なので!命だけは!!!」
うわー、最初の威厳もへったくれもねえな。
最初は天使だと思って少し神々しいなって思ってたけど、いざこうやって頭を下げられたら、なんともまぁ俗物だなぁ。
ともあれ、許すか許さないかは俺じゃなくてアンジェに決めてもらうか。
MVPだし。
「降参だってー!アンジェどうするー?」
内股でヘタレこむアンジェは、口元に両手をそえて大声を出す。
「生かしてあげても!いいと思いまーす!」
だそうだ。
優しいなぁ。
とりあえず天使に向かって切先を向ける。
「だって、よかったな。あ、もし下手に反抗したらそのまま剣を突き刺し・・・」
「絶対にしません。服従します。私を助けてください。靴舐めますか?」
「やめて?」
プライドはない。
まあ、状況は終了したわけだし、一旦こいつ連行して、皆んなで集まろうかな。




