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212話 魔法が使えない俺とアンジェの魔法

と、いうわけで今二枚扉の場所に向かってるところ。


ギルドでミシアから地図を貰ったから、迷う事はないと思う。


「うおぉぉおおお!!!エクス!カリバァァァ!!!!!」

「サリスやる気いっぱいなのです」

「あ、あはは、いつになくやる気だよね〜」


道中の湿地帯にいるんだけど、そこは結構魔物が湧き出てて、そいつらをサリスがバッサバッサでかい聖剣で薙ぎ倒してるんだよね。


後で絶対息切れするだろ。


「おい!私が全部倒すから、お前らはそこで見てろよ!!!」

「あ、危なくなったら言ってくださいねー」


みんなが見守る中、サハギンっていう半魚人みたいな魔物の群を薙ぎ払ってくサリス。


ここまで纏めて倒してくれると、見てるこっちは謎に爽快感が生まれるんだよなぁ。


「おらぁ!!もっともっとかかってこい貴様らァ!!!!」


元気だなぁ。


もしかしたら、シオの一件が消化不良で、その発散をしてるのかもしれないね。


「なんか、魔物逃げてってない?」

「わかる。あいつらサリスにビビってるよな。色んな意味で」

「そもそも、襲い掛かってきてませんよね・・・?」


そうなんだよ。


サハギンってそこら辺をうろちょろしてただけで、別に俺らの事気に留めてなかったんだよね。


サリスが勝手に、敵認定して倒しまくってるんだよ。


程のいいサンドバッグだよなぁ。


「逃げるんじゃない!!私が目立たないだ・・・ろ?」


イキってるサリスの言葉が止まる。


何故なら、目の前に巨大な魔物が現れたからだね。


「で、でかいのです!」

「あれって・・・ワニ?」


そう、サリスの前に現れたのは、二足歩行で背中を丸めたでかいワニっぽいモンスター。


全てを飲み込む巨大な口に、岩をも噛み砕く顎、一度噛まれたら絶対に離れない牙。


びっしりと黒い鱗に覆われていて、表皮は硬そう。


そいつが殺意マシマシでサリスを見下す。


「あ、えっとぉ・・・わ、私の邪魔をするな!!」

「多分邪魔してるのサリスの方だぞ?」


かなりご立腹らしく、三白眼がガチ。


そいつが大きな口を開ける。


「お前!いい加減にしろや!!黙ってりゃ調子に乗りやがって!!ぶっ殺されテェのか!?!?」


ワニって喋るんだ・・・


あ、ダメだ。


ワニの圧で、なんかすげえ震えてるわアイツ。


「そもそもうるせえんだよてめぇ!あー腹立つ!お前殺すわ!俺をキレさせて、タダで済むと思うなよこの野郎ォ!!!!」


いやー、ワニの意見って至極真っ当なんだよなぁ。


客観してみれば、サリスって勝手に大声で暴れてるヤバい奴だからね?


でも、殺すって言われた以上こっちも黙っちゃいられないな。


「おいサリス!下がれ!!!」

「あ、え、あ!いや!!下がるわけがないだろう!!うおおおぉおお!!」


馬鹿!


なんで1人で突っ込むんだよもー!!!


これ縮地で間に合うかなぁ。


もうばっくり口開けてんじゃねえかよ。


「噛み砕いた後で胃袋に放り込んで・・・」

「『シルフィード・ブラスト!』」


ワニが何やら話してる途中に、アンジェの魔法が起動。


ワニの足元から風が吹き始め、乱気流を作り出したと思いきや、ワニを囲むように吹き荒れ、風の牢獄が完成する。


そして、吹き荒れる風の牢獄の中、無数の風が刃となって、ワニの全体を切り裂く。


「うぉぉぉおおお!!!!」

「ナイスだ!アンジェ!うぉぁおおぁぁあ!!!エクス、カリバァァァ!!!!!」


あらゆる部位を切り裂かれるワニに対し、サリスが巨大な聖剣で縦斬りをかます。


「何故だぁあぁあぁあ!!!!!」


悲しい絶叫後、ワニの体は真っ二つになり、チリとなって帰る。


・・・可哀想。


「流石だなぁアンジェ!!!私がお前を褒めてやろう!!!」

「あ、ありがとうございます、はは」


苦笑しながらサリスの賞賛を受け取るアンジェ。


その様子を見て、ニナとミュラは一緒に「はぁ」と溜め息をついた。


ほんと、サリスはアンジェに頭下げた方がいいと思うけど。



・・・ふと思ったんだけど、アンジェって扱える魔法の属性多くない?


俺が見て来た魔導士とか魔法剣士って、多くて3属性とかだと思うんだけど、


アンジェの場合、4、いや5種類くらい使えない?


「アンジェってさ、何種類の属性魔法使えんの?」


気になって聞いてみた。


すると、「うーん」と斜め上を見ながら少し考える。


「えーっと、火、水、風、土、氷、雷だから、6種類じゃないですか?」

「え・・・アンジェってもしかして凄い?」


えっへんと胸を張るアンジェ。


「たくや君今更気づいた?私だって3属性くらいしか使えないよ?というか、ほとんどの人が私と同じかそれ以下くらいだから、かなり凄いよ?」


マジで?


ミュラも確かに属性魔法使うよな?


そのミュラがすごいって言うくらいだから、アンジェって実はとんでもない人物なのかもしれない。


「俺は魔法のこと全然分からないから聞くんだけど、そういう属性とかって遺伝なの?」

「基本は遺伝じゃないでしょうか?あとは、急に覚醒するパターンもあるみたいですし。ほら、フィラさんの時間停止とか!」


フィラの場合は属性って訳でもなさそうだけど、あれはフィラ自身の才能ってことなのかな?


「むー?アンジェのお父さんの遺伝なのですか?」

「お父さんはそこまで使えませんね。多分お母さんだと思うんですけど・・・」


・・・あれ、そういえばアンジェの母親って、あの村にいなかったよな?


父親と二人暮らしとか言ってたけど、もしかして訳アリ?


「えっと、因みにアンジェのお母さんって・・・」


ミュラが何やら申し訳なさそうに質問する。


俺から聞きにくかったから、ありがてえ。


「お母さんはどこか遠い所に住んでるみたいです。離婚とか死別とかではないってお父さんは言ってましたよ?」


あ、そうなんだ。


複雑な話じゃなくてちょっと安心。


「住んでる場所とか、父親から聞いてないの?」

「聞いたことはあるんですけど、遠くとしか言われた事なくて・・・、あ!別に寂しいとかそういう訳ではないので!全然気にしないでください!」


両手を全力で振って訂正するアンジェ。


見た感じ、強がりとかではないっぽいから本心かも。


会いたいとか思わないのかなぁ。


でも待てよ?


俺も両親と会った事ないし、別に会いたいって思った事ないから、そんなもんなのかな。


「因みに」


サリスがこちらに戻って来て、「オッホン」とわざとらしく咳をする。


「4属性以上使える魔導士は、私が知る限りアンジェしかいないぞ?」

「そうなんですか?私って凄いんですね!」


あ、調子に乗ったなアンジェ。


でも、無邪気にはしゃいでるアンジェの姿ってあんまり見ないから、少し可愛いかも。


じーっとアンジェの事を見つめてた俺に気づいたのか、アンジェは俺に接近してくる。


顔が近い。


「たくやさん、私に惚れました?」

「え、や!は!?」


なんだ急に!


魔法がすごいって話と惚れるって話はイコールにならないだろ!


長いまつ毛にくっきりした目が、俺にプレッシャーを与えてくる・・・


この状況って、何が正解なんだ・・・


なんか気の利いた事を言ってやったほうが・・・



「ちょ!何やってるの!」

「やばいのですよ!」


ニナとミュラの声に「ハッ!」と我に帰ったような表情を浮かべ、俯いて赤面し始める。


いやー助かったー!


正直空気に耐えられな・・・



「何やってんだお前ら!囲まれてるぞ!!」


・・・あ。


まさか、サリスに怒られる日が来るとは思わなかった。


俺らが馬鹿やってる間に、サハギンの群れに囲まれちまってるよ。


「さ!一気に片付けるよ!」

「ボコボコなのですー!」

「私の聖剣の錆にしてくれるわ!うおおおわあああ!!!」


ニナ、ミュラ、サリスがサハギンの群れに飛び掛かる。


やばいやばい!俺も参加しなきゃ!


「いくぞ!アンジェ!」

「・・・はい!たくやさん!」


俺もニナ達に続いて前に出る。


その後方からアンジェが魔法の準備を開始。


あーあ、こんなところでする会話じゃなかったなぁ。



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