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207話 魔法が使えない俺と憤慨と合成

ゴーレムの頭から、ニナの身体が飛び出す。


顔面であろう箇所は、見事なまでの風穴が空き、風の通り道として機能する。


そして、ゴーレムを構成していた岩がボロボロと崩れ落ち、徐々に形を失ってく。


最終的には上半身のみとなり、仰け反るような体勢で動かなくなる。


「ニナさん!やりましたね!」

「やるじゃーん!!でも、あれって再生しないの?」


後方からアンジェとミュラの声がする。


確かに、俺が剣で斬りつけた時は即座に回復してたけど、頭を破壊したらこんな簡単に壊れるんだなぁ。


核みたいなのが頭にあったのかな?


んー、パルスの方は「あっあっ」って漏らしながら固まっちゃってるし。


あ、ニナが地面に激突しそう。


「天地が回転してるのです〜」


目が回って力が入らないのかな?


・・・よし、キャッチ!


「よくやったぞ、ニナ」

「ありがとうございますなのです、おえっ」

「え?吐かないで?」


とりあえずアンジェ達の元へと戻る俺。


氷漬けのゴーレムを飛び越えて、みんなのところに帰ってくる。


「たくやさん、ゴーレムの腕切り落としましたね!」

「なんかできちゃった。なんでだろう?」


・・・もしかして弱体化してた?


シーンに目をやる。


「もしかして、シーンがなんかやった?」


彼の足元には巨大な魔法陣が展開されていて、なんかめちゃくちゃよく分からない文字が至る所に書かれてる。


なにこれ?


「ゴーレム達の内部構造を少しだけいじった。無論、人に戻すことは出来ないし、破壊することもできないが、結合部位にハッキングしその中の・・・」

「いや、なんとなくわかった。助かったよ」


正直意味わからんけど、要するにシーンがゴーレムどもを弱体化させたってことらしいね。


へぇー、だからゴーレムに魔法が通用したわけかぁ。


それ先に言ってくんね?


「だが、あの白いゴーレム。恐らく再生準備中だ。破壊するなら今だぞ」

「いいのか?両親なんだろ?」

「・・・やってくれ。どの道、人に戻ることはない。それに・・・」


シーンが何かを言いかけた時


「・・・ね」


聞こえた声は、白いゴーレム辺りから。


パルスが叫んでいる。


「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇ!!!!!!!!!」


崩れたゴーレムを見つめたままに怒りをあらわにし、ドス黒い魔力が彼女から溢れ出す。


「雑魚!雑魚!雑魚!!雑魚!!!許さない許さない許さない!!!ウチのゴーレムによくもやってくれたな!!!!!」


パルスからの激昂。


黒い魔力が噴出し、崩れた白いゴーレムに加え、氷漬けになったゴーレム達、そして自分をも包み込む。


「な、なんですかあれ!?」

「魔力がえぐいんだけど!?」

「おぇぇぇぇ」


ニナ吐いちゃった・・・


後方から震える声が聞こえる。


「あ、あれは・・・」


パルスの様子を見て、シーンが青ざめているようだ。


「なんか分かんの?」

「あれは、自分を母体にゴーレム達を素材として合成している・・・」


んーつまり合体ってこと?


バーグの時はドラゴンと合体してたけど、あんな感じかなあ。


「それじゃあ、パルスさんはキメラになったってことですか!?」

「いや、それとはまた違う。キメラは複数の動物や魔物をミックスさせて、複数の能力を併せ持つ一体の別物を生成するもの。パルスのは違う、あれは、自分に対して複数のゴーレムを取り入れている。つまり、あくまで自分を支柱として体の中にゴーレムを取り入れているのだろう」


あーそういうこと?


キメラは合体、パルスは装備って感覚かな?


なんとなくだけどね。



パン


と弾ける音が聞こえた気がした。


黒い魔力が徐々に霧散する。


見え始めるパルスの姿。


いや、パルスとは姿形がかけ離れていた。


「あれが、パルスさんですか?」

「・・・なんか、思ったよりも小さくない?」


確かに身長は等身大サイズ。


見た目はなんというか、全身が白金に覆われていて、磨きかかったような表面は、反射で俺らの姿が映される。


顔は最早無く、何の絵も描かれていない、お面をつけているようにのっぺらぼう。


それどころか、身体全体がもはや裸と言っても差し支えないほど何もない。


タダそこにあるのは、人型の白金そのものが手に体と同色のレイピアを持っている。


ただそれだけ。


「なんか、眩しいな」

「ニナが映ってるのです。おーい」


パルスと思しきものに映る自分の姿に手を振るニナ。


なにやってるんだろう。


奴は気付くと目の前にいた。


「はっや!!!」


ガァン!と高い打撃音が響く。


パルスの突きを、ギリギリ俺が剣で受け止めた音だね。


っぶねえ、マジで油断してた。


「ニナパンチィ!」

「『ドラッヘ・テイル!』」


ニナは拳を突き出し、ミュラは尻尾を縦に振る。


そこには既に奴はいない。


アンジェの目の前に棒立ちしていた。


「え・・・?」

「この!!」


アンジェとパルスの間に割って入り、パルスのレイピアを受け止める。


「あ、ありがとうございます!」

「気をつけろ、こいつ馬鹿速ええぞ」


集中すれば、なんとなく次の位置は予測できる。


だけど、アンジェ達が狙われると、こっちは防御に徹さなければいけない。


まさにヒットアンドウェイって事。


ニナとミュラが必死に追いつこうと攻撃を与えようとするも、握った物がするりと抜けるように当たらない。


「ちょ!全然見えないって!!」

「むー、パンチが当たらないのですぅ」


攻撃をかわし、俺らに攻撃を加え、俺が防ぐとまた移動。


まるでなぶり殺しだね。


結構めんどくせえなあ。


こりゃ、一回動きを止めないといけないな。


それに、一個だけ分かったことがある。


アイツはシーンには手を出さないってことだ。


それじゃあ、俺らが防いでいる間、シーンには時間があるってことだね。


「なあシーンっとお!こいつをもとに戻す方法はねえのか?」

「・・・すまない。解析しているのだが、全然掴めない。色々な物が複雑に混ざり合い過ぎて、何をどうすればいいか手を付けられない」


チラッと見ると、シーンの足元には先ほど見たような、字がびっしり書かれた魔法陣が展開されていた。


どうやら最初からそれらしいことはしてたっぽいけど、なかなか難しいらしいね。


「たくやさん!!」


アンジェの叫び声が聞こえる。


どうやら俺がよそ見してたから、心配して声をかけてくれたらしいな。


知ってるよ、俺に攻撃してくるんだろ?



「ちょっ!たくやさん!?」

「え!?嘘でしょ!?」

「ご主人様目が良いのですね!」


俺の顔面目掛けて飛んでくる、レイピアによる突きにギリギリで避けて、レイピアの根本を片手で掴む。


単純に突きしかしてこないなら、こんくらい余裕だね。


「おいシーン、止めてやったんだから解析しろ」

「な・・・、だからできないと言って・・・」

「妹がこんなんになってるのに、なんでお前は頑張らねえの?」


シーンはハッとしたような表情を浮かべる。


そして


パン!


その後、あろうことか自分の頬をぶつ。


「シーンさん!?どうしました!?」

「痛いのが好きなのですか?」

「いやいや、違うでしょ」


アンジェ達がシーンの事を心配?する中で、赤みを帯びた頬を晒しつつ覚悟を決めたような顔を見せる。


「ああ、天才とか言われていたのに、俺は馬鹿だな。時間をくれ」


おお、やる気になったか!さて、じゃあ時間稼ぎを・・・


ー いや!やめて! ー


ん?これは・・・






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