208話 魔法が使えない俺とパルスと記憶
頬をぶたれる。
髪を引っ張られる。
地下に閉じ込められる。
食事を抜かれる。
両親は自分に嫌なことをする。
そんな人形を作ってなんの意味がある?と罵倒し、壊す。
自分たちの恥だと馬鹿にする。
冷たい目を浴びせる。
罵声を浴びせる。
何故できない?
何故分からない?
何故、何故、何故。
自分には分からない。
何故父と母はこんなにも怒るのだろう。
外に出てもそう。
子供達から石を投げられ、物を盗まれ、突き飛ばされる。
子供は言う。
雑魚、無能、ゴミ。
大人は助けてくれない。
見て見ぬふり。
両親は助けない。
自分が悪いからと。
でも、兄は助けてくれる。
怪我をすると治療してくれる。
食事を抜かれると用意してくれる。
罵声を浴びせてられる自分の間に入って、止めに入る。
子供に虐められても、割って止めてくれる。
そんな兄は、親に甘やかされ、笑顔を向けられ、色々な本を買い与えられる。
兄の事は大好きで、尊敬の対象。
同時に妬ましい。
自分とは真逆の存在であり、相いれない人。
愛想をつかされてもしょうがないと思っていた。
だから、いなくなった時は何も思わなかった。
と思いたかった。
兄がいなくなり、両親のあたりは強くなる。
暴力はより強く、食事は水かカビの生えたパン。
眠ろうとすると、水をかけられる。
身体に力が入らなくなり、考えも纏まらない。
死ぬ。
死?
何故?
何故自分がこんな目に合うのだろう。
何故、何故、何故。
「可哀そうですね」
「誰?」
誰かがいた。
目が霞んで顔は見えなかった。
「本当に危なくなったら、これを食べなさい」
一つの黒い玉を貰う。
なんだろう。
気付くといなくなってた。
知らない人。
気が付くと両親がいた。
倒れてる自分を蹴とばす。
「なにを寝ているんだ。根性が足りない」
「そんなんだからダメなのよ。恥さらしが」
手には金属の塊。
それで殴られたら、自分はどうなるのだろう。
死ぬ。
死ぬ?
何故?
自分が何をした?
悪いことをしたか?
悪いのはこいつらじゃないか。
こいつらだけじゃない、この町の連中全員。
悪いのは全部こいつら。
金属の塊が振り降ろされる。
死ぬ。
玉を口に含む。
・・・・・・
・・・・
・・
「ぎゃあああああああ!!!!!!」
「腕が!腕がぁ!!!!!」
ああ!楽しい!!
何て弱いんだろう!!!
「た、助けてくれ!!悪かった!今までの事!!!」
「あ、あなたは自慢の娘!だから!もう千切らないで!!」
はー?何言ってんの?
散々馬鹿にしたくせに、ひどい事したくせに!殴った癖に!!!
雑魚!ざーこ!!
「か、身体が・・・!!」
「いや!なに!?なに!?!?」
ウチの人形壊したから、お前らを代わりの人形にしてあげる。
ははは!!!
おっもしろーい!!!
錬金術って簡単じゃん!
・・・・・・
・・・・
・・
「お母さん!たすけ・・・」
「ごめんなさい!ごめんなさ・・・」
「うわあぁあああ・・・」
「やめて!やめ・・・」
「死にたく・・死にたくな・・・」
へぇー、人間って弱らせたらこんな真っ赤になっちゃうんだぁ。
雑魚?無能?ゴミ?
どっちが?
雑魚はお前らだろ!!!ざーこざーこ!!!!
殺すのも可哀そうだし・・・
あ!そうだ!こうすれば生きていられるよね!!
ほら、こうすれば・・・っと
真っ赤で綺麗な玉だねえ。
これで死なないから安心していいよ?
あははははハハハハハ!!!!!!!
んー、赤い玉作るのも飽きちゃったなあ。
あ、そーだ!!せっかくこんなに人がいるんだから、みーんな人形にしてあげよっか!
皆仲良く人形になっちゃえ!!
人形沢山幸せー!!!
もうこんな町いらないや、壊しちゃえ。
兄なんてもう戻ってこないでしょ。
◇◆◇
頭に記憶が流れ込んでくるけど、これって多分パルスの記憶だよな?
うん、やっぱ親が悪いじゃん。
親ってここまで子供に対して残酷になれんの?
マジで信じられないんだけど。
でも、おばさんがなんか、パルスの親がやばい奴らみたいな事言ってたっけ。
あんな奴らの子供に生まれて、可哀そうだなあ。
魔王の幹部になって正解とまでは言わないけど、結果的に命を救ったことに変わりはないよな。
・・・というか、幹部になる奴ってみんなこういう重たい過去があるの?
って思ったけど、幹部になるってことはそれくらいの感情と状況が必要ってことなのか。
シーンは結構パルスを気にかけてたみたいだし、兄を攻撃しないっていうのは、無意識で兄の事を気にしてるからなんだろうね。
って、あぶね!!
「わわ!!棘が出てきたのです!!」
「白いゴーレムの能力も使えるんですか!?」
レイピアを掴む手を放して距離を取る。
先程まで何もないつるっつるな身体だったのに、身体中棘だらけになって、まさに人型のモーニングスターだね。
「『ヴォルカニック・て』・・・うわ!!」
ミュラが燃える尻尾でパルスを叩きつけようとした瞬間、身体中から生える無数の棘の先端から雷と氷属性の魔力放出され、それらを纏いながら突進してくる。
俺が間に入って突進を剣で受け止めるものの、ギリギリと剣が悲鳴を上げる。
うわー、剣折れないかなあ。
「たくや君ごめん!」
「気にすんな!俺が注意を引き付けるから、シーンを守ってくれ!」
腕に力を入れて、何とかパルスを仰け反らせる。
その勢いのまま、俺は右斜め上から剣を振り下ろす。
キィンと鉄同士を打ち付けたような音が響くも、白金の身体にはかすり傷程度しか与えられていないみたいだね。
超硬いじゃん。
「『バーン・フェニックス!』」
アンジェから火属性魔法が放たれ、巨大な炎は徐々に不死鳥を思わせる外見へと変化し、パルスを燃やし尽くす。
だが、燃え盛る業火の中でも全く効いていない様子で、動きは止まらない。
「ま、魔法が効きません!」
「沢山ゴーレム吸収したから、その分の魔法耐性があるってことかよ」
俺は前進し、アンジェ達の方へと行かせないようパルスに接近し、剣を振るう。
『剣舞・水鳥流月』
棘がびっしりと生える白金の身体に、あらゆる方向からの多連撃を与えたのだが、斬り刻んだ部分の棘は切断されるも、すぐに高速再生されまた生える。
うわーうぜー!
ここまでめんどくせえ敵って、邪龍以来じゃねえか?
んあ?なんだそれ?
生えていた無数の棘が身体から離れて、宙に浮く。
それぞれ宙に浮いた棘は炎、雷、氷属性の魔力に覆われ、それらを散弾のように発射してきやがる。
「この!『剣舞・千襲刹華!』」
無数の弾丸を弾きながらパルスに接近する。
しかし、打ちもらした棘が後方へと飛んでいく。
「やべ!大丈夫か!?」
「はい!!『アブソリュート・メテオ』」
「『コキュートス・ブレス!』」
「おお!ニナトルネードぉ!」
シーンを守るように、各々が棘を弾き返すことに成功。
冷や冷やしたなあ。
俺は勢いを殺さずに、棘を失った滑らかな体表に向かって剣を斬りつけ続ける。
いやー、傷はつくんだけど、中々一撃が通らねえなあ。
しかも、斬っても崩れないってことは、この身体魔法のそれじゃないってことだろ?
純粋に硬いってことじゃんね。
ダイヤモンドよりかってえのかぁ、錬金術って便利だねっと!
「お前、少しはなんか喋ったら?」
「・・・」
まあ喋るわけねえよな。
うわ!攻撃が通らないのをいいことに、そのままレイピアで突き刺しに来やがったぞ!
っぶねえな!!
レイピアを弾き、パルスの上半身はガラ空きになる。
そのままゼロ距離で突きをかます。
その時
「たくや!!解析した!」
シーンから放たれた希望の声。
やっとかよー!
俺はパルスの相手をしながら説明を聞く。
「で?どうすんの?」
「俺がパルスの錬金構成を弄って結合を脆くする!そうすると多少攻撃の通りが良くなるはずだ!ある程度体力を消耗させたら俺がパルスをサルベージして・・・」
「おし分かった!とりあえずこのまま攻撃し続ければいいんだな!」
よくわからん専門用語を並べられても理解できないし、頭使わないで攻撃の手を止めなければいいってわけだな?
さて、反撃の時間だな!




