206話 魔法が使えない俺と打倒ゴーレム
3色の属性が周りに散りばめられる中、俺はパルスに接近する。
俺は魔王の権能を殺すモードに切り替えて、剣を構える。
「こっちくんな雑魚!!!死ね!!!」
「じゃあ、兄貴と会話しろバカ!」
肩の上にいる、宝石をまばらに装飾してるドレスの少女に向かって斬りかかる。
「黙れ!!!」
パルスは手に持つ人形を、あろうことか黒曜石のような黒光するレイピアに変換させて、俺の剣を受け止める。
おいおい、もう原型ねぇじゃん!
ー 嫌!やめて! ー
頭の中に記憶の断片が流れ込む。
これ、ティニーと戦った時もあったよな。
これは恐らく、彼女の記憶。
2人の男女が見える。
こりゃ・・・パルスの親か?
「邪魔邪魔邪魔!!!!消えろ!!」
「うおっ!」
パルスがレイピアを駄々っ子のように振り回すと同時に、ゴーレムから生える巨大な棘の複数本が伸び、俺を突き刺す勢いで飛んでくる。
それらをギリギリでかわし、一度地面に着地して、アンジェ達の元へと戻る。
ゴーレムの魔法攻撃が止み、ニナもまたこちらに戻ってくる。
ニナは足元がおぼつかない様子で、千鳥足で左右を行ったり来たり。
「目がぐるぐるするのですぅ」
「三半規管鍛よっか」
そんな中で、ゴーレムに乗るパルスは若干落ち着きを取り戻したのか、暴れる事をやめて、手に持つレイピアを指揮棒かのように振るって遊び始める。
「ハッ!ざーこ!無駄な事して図になるんじゃないっつーの!!ウチのゴーレムに勝てるわけないでしょ!」
んまーめんどくさくはあるけど、やろうと思えばやれそうだけどなぁ。
ゴーレムを先に倒して、そのあとパルスと戦えば・・・
んー?シーンはまだ固まってるなぁ。
というか、表情が怖い。
「シーン、どうした?」
俺の声を聞いて、目だけを俺に向けある事を話す。
「あの白いゴーレム、間違いない」
「なにが?」
「あのゴーレムから感じ取れる魔力と錬成跡、あれは『父と母』のものだ」
・・・えっと?
どういう事だ?
「つまり、あのゴーレムって」
「あぁ、パルスは親をゴーレムに変えたという事だ」
はぇーえぐいね。
んじゃあパルスは、自分の親を物みたいに扱って戦わせてるって事か。
賢者の石と言い、ゴーレムと言い、とんでもねぇな。
「あ、あれがご両親・・・ですか?」
「意味がわからないのです」
「えー!やってる事酷過ぎじゃない!?」
アンジェ達困惑した態度に対して、唾を吐き捨てるようにパルスが答える。
「はぁー?酷い?なんで?ウチのモノにケチつけないでくんない?だから雑魚なんだって!」
「パルスは頭がおかしくなってるのです」
「うっさい!半人が生言ってんじゃねぇよ!!」
急にキレだすパルスに、半ば呆れるニナ。
シーンも黙ってないでなんかいえばいいのに。
「なぁパルス、一体何があったんだ・・・俺はお前と話を・・・」
「黙れって言ってるでしょ!あー!!!!腹立つ腹立つ腹立つ!!うちのこと何も知らない癖に!!」
いやもう、めちゃくちゃじゃん。
話通じないしキレ散らかすし、情緒が安定しないにも程があるだろ。
それも、シーンに対しての怒りが尋常じゃねえな。
「なぁシーン、あのゴーレムってもう元に戻せないのか?お前の親だろ?」
「・・・他のゴーレム達ならともかく、あの白いのは恐らく無理だ。錬成構造が無茶苦茶で、元に戻したとしても、それはもう人間と呼べないかもしれない」
可哀想に、親があんなんなって正気じゃいられないのに、シーンは気丈に振る舞ってる感じ。
やるせねーなー。
「一応、ゴーレムの戻し方はあるんだな?」
「あぁ、だが、戻せるのはパルスだけだ」
「なるほどねぇ、んじゃあ」
剣を肩に担ぎ、前に出る。
「まずは、ゴーレムを無力化して、パルスが普通に話せるくらいにまでボコボコにすりゃいいんだな?」
「ぼ、ぼこぼこ・・・?」
仮にも自分の妹をボコすって事に、ある意味で嫌悪感を漂わせるシーン。
しょうがねーじゃん、会話になんねーんだもん。
俺は再び前に出て、高みの見物をするパルスに声をかける。
「おーい聞いたかー?ゴーレムを元に戻さねえと、お前とその白いゴーレムボコボコにすんぞー?」
「はぁ?何言っちゃってんの?寝言は寝て言いなっての!」
白いゴーレムの周りが光る。
地面からはデルフィンで見たゴーレム達が次々に現れ、ゴーレムを守るように取り囲む。
「またあのゴーレムなのです!」
「キルスティンの時のやつと一緒です!」
「わぁ!あれも人間なの!?」
随分と手厚い護衛が増えたなぁ。
「俺とニナで前に出る。アンジェとミュラはシーンを守ってくれる?」
「「「了解」」」の声と共に俺とニナは前に出て、アンジェは魔法の準備、ミュラは口に魔力を溜め始める。
「ハハっ!!ざーこざーこ!!死んじゃえー!!!!」
ゴーレム達が一斉に動きだす。
白いのは両手をこちらに突き出し、炎と雷の魔法を放射する。
「ニナは先に行け!俺が魔法を食い止める!」
「りょーかいなのですー!」
剣を振り、2つの魔法を斬る。
鍔迫り合いの如く魔法を中和する間、ニナは俺を抜き去りパルスの方へ向かう。
ニナは脚に力を込めて大きく跳び、ゴーレムを飛び越えようとする。
だが、それをよしとしない通常のゴーレム達が、ニナに向けて腕を伸ばす。
「わわ!手がいっぱいなのです!」
「させませんよ!『アブソリュート・メテオ!』」
突如現れる巨大な氷塊が、腕を伸ばすゴーレム達に襲いかかり、着弾と同時に岩塊達は凍結し、腕は伸びなくなる。
「ありがとうなので・・・おわ!!」
今度は白いゴーレムから、無数の棘が伸びてニナを襲う。
「邪魔しないでよね!『コキュートス・ブレス!』」
ミュラの口から細く青白い閃光が放たれ、それが白いやつから伸びる複数の棘に当てていく。
当たった棘は次々に凍りつき、動きがみるみる遅くなる。
「そんなことで!邪魔すんな!この雑魚!!!!」
遂には、俺が防いでいた魔法を辞めて、白いやつの両腕はニナに向けて動きだす。
「や、やばいのです!」
「突っ込めニナ!」
「ご主人様!?正気なのですか!?」
「正気なわけねえだろ!」
少し俺の事を侮蔑したような目で見るニナは、仕方ないと言わんばかりのため息をついて、自らの体を螺旋回転させる。
「『ニナァ・ドリルゥ・ブレイカぁああぁ!!』」
ニナが回転しながら白い奴に突っ込もうとするも、両の腕が行手を阻む。
さてと、ちょっと本気でやろうかな。
『剣舞・鳥襲刹牙』
ニナを拒む腕に向かってぶっ飛び、剣を握る手に渾身の力を込めて振る。
斬
思ったよりも簡単に白い岩の腕が切断され、ボロボロと崩れ落ちていく。
おー、斬れるもんなんだなぁ。
前はあんまり刃が通らなかったのにねぇ。
「うぉぉぉ!!!!行くのですぅ!!!」
「こ、こっちくんな畜生もどき!!!」
「ニナはニナなのですよー!」
空間を削り取るのかと言うレベルで回転するニナの身体が、白いゴーレムの頭に接触する。
「や、やめ!」
「おっと、させねえぞ?」
パルスは頭を削るニナにレイピアを突き立てようとするものの、俺が割って入って止める。
「じゃ!邪魔邪魔!!どけ!!!」
「それが俺の仕事だからね」
そして
ズドン
ニナの螺旋が、ゴーレムの頭を貫いた。




