205話 魔法が使えない俺とセントラリアの癇癪少女
「さて、俺たちはどこいけば良い?」
「まずはこの人形をワン太郎に嗅がせる」
次の日になって、俺たちは早速パルスの追跡を開始する。
シーンが俺らに見せてきた、ちっこい人形をワン太郎の鼻に近づけると、スンスンとくまなく嗅いだのち、おもむろに歩き出す。
「あ、早速分かったんでしょうか?」
「ニナの鼻よりすごいのです・・・」
「合成獣ってすごいんだねぇ」
アンジェ達がワン太郎を感心しつつ、尻尾を振る尻を見ながら後ろをついていく。
俺も後に続くか。
「こんなすげえ動物作れるって、錬金術便利過ぎじゃない?」
「便利でもないさ。合成するには、物とモノの相性が良くなければならない。物体の構造や生物の遺伝子情報を解析して、その中で・・・」
「いや!わかった!ありがとう!!」
興味本位で聞いてみたけど、言ってる事訳わかんねえわ。
ニワカが簡単に、首突っ込むもんじゃねえな。
「こんな技術はもう、必要ないんだがな」
「ん?なんでさ?」
「錬金術は人を不幸にする。探究心は行き過ぎると痛い目にあう。そもそも錬金術は、無から有を作り出す事を目的としたもの。それは、自然の摂理に反している」
んー、何言ってんだ?
ざっくり言うと、錬金術はダメなんだよーって事?
そんな感じでいいか。
「結局、賢者の石だって人の命を弄ぶもの、これはキメラの合成と大差ない。改めて思うが、こんなものを追求する方がおかしいのだ」
あ、自覚あったんだ。
いくら便利になるとはいえ、それは生き物を犠牲にする事でしか得られない・・・って思ったけど
俺らって動物食って生きてるんだから、大差なくね?
◇◆◇
歩いてどれくらいだったかなぁ。
ちょいちょい休憩挟みながら歩いてるんだけど、なかなか見つからないよね。
アンジェ達は、犬が可愛いとかどーのこーの言って盛り上がってるけど、俺は暇なんだよなー。
「たくやさん!ワン太郎さんの尻尾の振り方可愛いですよね!?」
「えー!私も尻尾動かせるよー?」
「ニナもできるのですよ?」
アンジェの言葉を聞いて、なぜかニナとミュラは自分の尻尾をブンブン振り回し始める。
何がしたいんだろう・・・
「お前ら仲良いな」
「あーそうかな?いい奴らだからね」
「羨ましい限りだ」
シーンの頬は若干砕け、少しだけ笑みを浮かべていることが分かる。
遠くを見つめて、何か想いに耽っているような感じ。
恐らくパルスの事を考えてるんだろうな。
その時
「たくやさん!見てください!」
ん?なんだ・・・って、うん?
街・・・か?
街というより、荒廃した廃墟だな。
崩壊した建物群が、至る所に点在してて、明らかに過去誰かが住んでたような形跡がある。
建物は崩れ落ちて室内が丸見えで、住んでたであろう生活感が妙に生々しい。
どれもこれも建築物は自然に侵されてて、苔や蔦が絡まってる。
瓦礫が散乱して、生活物やら焼けた本やらが所々にぶん投げられてる。
そんな建築物達が広がる敷地は、結構な面積でぱっと見王都の半分くらいありそう。
てか、ここって・・・
「セントラリア・・・だと」
「これが、破壊された街、か。まさか、ここにアイツが?」
犯人は現場に戻るっていうけど、まさかこんな廃墟の街に戻ってくるなんて思わねえだろ。
「こ、ここに、パルスさんがいるって事ですか・・・?」
「むー、誰もいなさそうなのです」
「えー、なんかちょっと不気味なんだけど・・・」
しかし、ワン太郎は歩みを止めず、それどころか「ワンワン!」と鼓舞するように走り始める。
「おい!まて!」と俺が走る犬の後ろについていき、続いてニナ、ミュラ、アンジェ、シーンの順番で続いてくる。
廃墟の街中を走り抜けると共に、周りの痛々しい戦いの傷跡が嫌でも目に入る。
地面の亀裂、黒いシミ、焼けた跡、片方だけの靴など、見つける事に嫌な感情が呼び出される。
いやー、なんか、どんだけ凄惨だったんだよって感じだなぁ。
走っていくと、街中の道路の突き当たりあたりにまだ進むと、かなりの広い庭があっただろう敷地に辿り着く。
そこには、貴族の屋敷と遜色ないくらいの、二階建ての大きな崩壊した建物が現れる。
そこにいた。
先に着いた俺は吠える犬を抱き、背を向ける白いデカブツの肩に乗っかる、探していた奴に声をかける。
「帰宅か?」
「・・・は?」
白く、馬鹿でかいゴーレムはゆっくりと振り向き、同時に奴のご尊顔が見えてくる。
「何であんたがここにいるの?」
「お前に会う為にな」
「うわキモっ。雑魚の癖にストーカー?キモ過ぎ」
パルスはいつもの怒号を浴びせてくるわけでもなく、冷たい目で俺を見下す。
なんか元気ねえな。
「聞いたぜ?お前錬金術師なんだって?」
「そんな事まで知ってるなんて、本当にストーカーじゃん!死ね!」
癇癪を起こすわけでもなく、少しイラっとしたくらいの雰囲気で罵声を吐く。
「何で知ってるぞ?お前の生い立ちも、ここでやったことも、賢者の石のこともな」
「はーうっざ!あんたになんの関係があるんだっつーの!正直生かしとくのも癪だから、ここでアンタを殺して・・・」
俺の後ろを見て、パルスは言葉を紡ぐ事をやめ、表情が固まる。
「な、何で・・・」と小さく呟く。
さて、ご対面だな。
「パルス・・・なのか」
「・・・」
俺に追いついたアンジェ達とシーン。
後方から彼は、実の妹を見つめる。
久々の対面に言葉が出て来ず、お互いがただ無言を貫く。
ここで俺らが、なんか喋ったらいけないだろうな。
それくらい俺は空気が読める。
最初に沈黙を破ったのは、シーンだった。
「お前に、会いたかった」
「・・・っ!」
シーンから出てくる心からの言葉に、パルスは唇を噛み締め、怒りとも悲しみとも取れない苦悶の表情を浮かべる。
「なに、なに!?うるさい!!逃げた癖に!置いてった癖に!!黙れ黙れ!!!何も知らない癖に!!!」
「ぱ、パルス・・・」
シーンの心配を無碍にするよう、彼女は癇癪を起こしで怒鳴り散らし始める。
何でそんなキレてんだ?
「今更!いまさら!!兄貴ヅラすんな!!!雑魚!!」
「すまなかった、俺が悪い。お前に寂しい思いをさせてしまって・・・」
「そうだ!!お前が悪い!親が悪い!人も!街も!!錬金術師も!!!全部全部全部全部!!!!ウチがこうなったのも全部!!!」
静止した白いゴーレムの肩の上で暴れ散らかすパルスは、持っている人形を振り回し、まるで子供のように叫ぶ。
「死ね!死ね!!全部!!!死ね!!!!」
白いゴーレムが動き始める。
「来るぞ!構えろ!!」
「はい!」
「了解なのです!!」
「りょーかいだよー!!」
シーンはその場に立ち尽くしたまま、俺たちは戦闘態勢に入る。
白いゴーレムは身体中から、人間くらいの大きさだろう棘を生やし、一本一本から炎、雷、冷気、3種類の属性魔法を混濁させて、棘の先端から放出し始める。
周りなんかお構いなしと言わんばかりに、狙いを定めず全方向に魔法を吐き散らかす。
「わわっ!前の時よりやばいのです!!」
「任せて!こんのぉ!『アーテム・ドラッヘ!』」
「止めます!!『トール・ブラスター!!』」
ミュラは、背中から龍の翼を生やし、それをバタつかせながら上空へと昇る。
そして、アンジェが放った、雷属性魔法により顕現した巨大な槍に合わせて、ミュラの口から魔力を凝縮したような、扇形に広がるブレスを吐き出す。
アンジェ達を襲うまばらな魔法は、アンジェとミュラ、2つの魔法によってかき消される。
そんな中で俺とニナは、デタラメに発射される3色の魔法を避けつつ、白いゴーレムに接近する。
俺は肩に座って暴れるパルスに向かって跳躍し、ニナはそのまま腹部あたりに突っ込む。
ニナの存在を検知したゴーレムは、棘だらけの右腕を振りかぶるものの、ニナも右手に力を込めて、腕を引く。
「ニナの拳は、手をも貫くのです!!『ニナ・ドリルゥ・ブレイカァァア!!』」
ニナは右手を突き出し、体を螺旋回転させてゴーレムの拳へ突っ込む。
あれ、それ聞いたことあるぞ?走り出しそう。
一方俺は、撒き散らす魔法を全て蹴散らし、空を思い切り蹴って、パルスの元へ向かう。
「おら!そのデタラメな攻撃やめろ!」
「うっさい雑魚!!来るな!!!消えろ!!!」




