間話 休息中に
「ふわぁー、・・・重っ」
気がつくと昼過ぎに差し掛かってて、まだ外は明るい。
俺らは今、シーンと話してた部屋に布団を引いて寝てる。
結構寝心地が良いんだよこれが。
マジで気絶レベルで寝てたらしい、寝た時の記憶が全くないし、一回も中途覚醒しなかったなぁ。
アンジェとミュラが俺の両腕を占領して、ニナが上に乗っかってる事に気づいたのはつい今。
なのに、一回も起きないなんて、どんだけ睡眠深かったんだよって感じ。
「動けないなー」
最近は大会があったから、みんなが俺に気を遣って1人で寝れたり、アンジェとミュラが二日酔いだったり、色々と忙しかったもんだから、別々で寝てたんだけどなぁ。
・・・まあ、嫌って訳じゃないんだけど、なんかこう、起こさないかなーって言う漠然とした不安があるんだよね。
あと、普通に腹減った。
・・・いや、みんな今日は頑張ったし、静かに寝かせてあげよう。
だから、俺はまた微睡の向こう側へ行こうとするか・・・
キィィィ
部屋の扉が開く。
誰だろう?来客かなぁ。
「あなた達が、救ってくれるって方々?」
そこにいたのは、知らないおばさん。
俺たちがパルスを討伐するって話、広まってんのかな?
「まあ、そうかな?そうかも」
「ありがとう、感謝するわ」
「まだ始まってないんだし、頭下げないでよ」
おばさんは、瞳に涙を浮かべながら頭を下げる。
別に、そこまでしなくていいのになー。
「うちの子ゴーレムになって、錬金術でも元に戻せないし・・・もう見てられなくて・・・それに、当時のことも少し引っかかってて」
「当時のこと?」
なんか自分の話ばっかするなぁ。
当時ってどの時?街がまだあった時?
「ええ、あの女の子がまだ街を壊す前」
「あー、確かパルスが石投げられてたとか何とかは聞いたなぁ」
「あの時、誰も止められなかったのよね」
んー?止められない?なんで?
「なんで?止めればよかったじゃん」
「周りの目が怖くてね。多分みんなもそうだと思う」
おばさんの言い分はこうだ。
シーンとパルスの両親は、結構力のある錬金術師だったみたいで、誰も逆らえなかったらしい。
しかも横柄な態度が目に余るもんだから、恨みとか嫉みとか、色々みんな思うことがあったんだってさ。
んで、そんな中でパルスは落ちこぼれだったから、その発散先が彼女だったと。
別に、大人達が虐めてたわけではなくて、子供達がやってたらしいんだけど、でもそれを子供に注意したら周りから「アイツの肩を持つのか」って思われたくない、的な?
そうなったら、こっちがイジメの標的になるんじゃ無いかって、お互いにビクビクしてたんだって。
その結果として、パルスがあんなんなっちゃったから、心残りがあるとか。
もちろん、パルスに恨みはあるんだけど、若干責任感じてるっぽい。
要するに、パルスの親が悪いってことだね。
「確かにあの女の子がやった事は、到底許されることではないわ。でも、結果としてあの子を追い込む要因の一部だって考えたら、少しだけ自業自得なんじゃないかって、そう感じるときがあるのよ」
おばさんは、自分の服をグッと握って感情を吐露する。
「そんなもんなのかね。まあ、パルス的にはかなりのストレスだったんじゃないかな?あと、あいつ魔王の幹部だし、その幹部になる条件って、負の感情がかなり影響してるっぽいし、しかもかなり性格が変わるからね。要因が揃った結果だと思うよ」
「魔王・・・。側から見て、過激な事をするような性格には見えなかったんだけど」
へーそうなんだ。
幹部の性格補正があるとは言え、結構人のこと罵倒したり当たったりするような性格だと思ってた。
まあ、まさかこの人が!?って言うのは、よくある話だよなー。
でも、もしおばさんの言ってた、本人の性格が仮にそうだったとして、過去の騒動の引き金に魔王幹部が関わっていたのだとしたら、彼女は加害者以前に被害者って事になるよな。
じゃあ魔王と親が悪いわ。
「おばさん、もし過去の事件が魔王幹部によって引き起こされて、パルスは利用されたって言ったら、どうする?」
「・・・え?」
「つまり、パルスの当時の環境をうまいこと利用して、町を破壊するよう仕組まれたら?ってこと。今んところ、本人に確認を取らない以上、それは単なる想像になるんだけどね」
俺の仮説を聞いて、おばさんは黙る。
こんな唐突によくわからん事を言い出して、どうする?なんて聞かれても答えらんないよな。
しかし、俺の考えとは裏腹におばさんは、ある言葉を口にする。
「もしそれが、本当だったらその時は・・・」
・・・
ふーん、なるほど。
それもアリかもね。
◇◆◇
会話は一通り終わって、おばさんは帰ってった。
んじゃ、もしおばさんの言ってた事が村の総意なら、パルスを何とかしてやらないとダメだな。
上手くいったらって話だけど。
というか、こんだけおばさんと喋ってたのに、アンジェもニナもミュラも起きないなぁ。
かなり睡眠が深い・・・あれ?
「アンジェ、起きてるでしょ」
「あ、えへぇ、バレました?」
アンジェは俺の腕をがっしりホールドして、ニヘラっと溶けたような笑顔を見せる。
いやいや、起きてるなら会話に混ざって欲しかったんだけど。
でも、ニナとミュラはガチで寝てるっぽいな。
あれか?異種族は少し仕組みが違うのかな?
「話聞いてると、一概にパルスさんとか街の皆さんが悪いって思えませんよね」
「人それぞれ何かしら理由はあるんだろうけど、それでも子供にやって良い仕打ちではないよな」
「確かにそうですね。この場合、悪いのって誰なんでしょう」
「親と魔王だろ。あと雰囲気」
「雰囲気?」と上目遣いで聞き返すアンジェに、さらっと説明する。
「そうそう、アイツだったら虐めても良いって雰囲気。反対したらダメって雰囲気。やって当然だって雰囲気。人って周りの雰囲気に同調しないと排除されるからね。出る杭は打たれるのと一緒で」
「それ分かります。私の村ではイジメとかはありませんでしたけど、多少周りの意見に合わせないとって場面、ありましたよ」
「まーつまり、自分の意志は大切にしろって事だね。周りに流されるなと」
「なんですかそれ・・・」
アンジェは若干呆れたようにクスッと笑う。
えー、俺なんか変な事言ったかなぁ。
大事じゃない?自分の考えを主張するのって。
「たくやさんは、あまり人に合わせるタイプじゃないですもんね」
「んー、そうなのかな?そもそも人生のほとんどが師匠と2人きりだったから、人との関わり合いがないって言うか、自分本位っていうか」
「私はたくやさんの、そういうところが好きですよ」
「んん?どういうこむっ!」
唐突な接吻。
アンジェの柔らかな唇が俺の口を塞ぎ、俺が話そうとした言葉は蕩けて消える。
んえ?なに急に?
唇が離れ、アンジェの顔が少しずつ遠のく。
俺の顔を砕けた表情で見つめ、自身が先程まで重ねた唇に人差し指を持っていく。
「この雰囲気なら、流されてくれますか?」
え、いやー、本気?
ニナもミュラもいるのに、そんな大胆な事する?
心臓の鼓動が早まる。
これってもしかして、このまま行かないと人としてダメなのでは?
あー!やばい!顔が近い!
めっちゃアンジェ期待してる感じ出してるし、ここはもう、男としての覚悟を決めて・・・
「何やってるのですか?」
「うぇ!」
やべ、変な声出た。
俺の上に乗っかってるニナが起きて、俺らの空間を疑問視してる。
「んー、なになにぃ?もう夜ぅ??」
左隣のミュラも起きた。
このタイミングで起きるって、なんたってこう間が悪いというか・・・
じーっと俺らを見たミュラは、「ハッ!」と閃いたような顔をする。
「わー!!二人でチュンチュンだぁ!!チュンチュンしたんだー!!!」
「なんだよそれ」
「鳥さんなのですか?」
ミュラが意味わからない事を発する傍ら、アンジェは今更ながらに自分が行った行動を恥ずかしがり、俺の腕で顔を隠す。
「ずるいアンジェ!私もやるからぁ!!」
「わーい!ニナもやるのですー!!何をやるのですか?」
「おい待て待て!!」
やめろ!!一斉に暴れてくんな!!
「あ!わ、私も!!」
アンジェも振り切れた様子で、二人に混ざる。
あーもうめちゃくちゃだよ。
俺悪い事してないのに、何で・・・
いってぇ!!!ぶん殴られたんだけど!?
「お前ら!もう良い加減に・・・」
バタン
部屋の扉が開く。
「お前ら、何やってるんだ?」
飯を持ってきたシーンが、俺らの惨状を見てドン引く。
「いや、これは違っ」
「ごゆっくり・・・」
飯を置いて、そそくさ部屋を出ていく。
んーなにこれ?




