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204話 魔法が使えない俺と兄妹の出来事

セントラリアは錬金術師の街。


錬金術師は血統で代々続いていくゆえ、普通の魔導士では錬金術を使う事が出来ない。


いわば錬金術師は、種族と言っても過言ではない。


その錬金術の町で生まれた、彼女の名はパルス。


優秀な錬金術師の両親の下に生を授かり、天才と呼ばれた兄がいる。


パルスもまた、才能を期待されて育った。


しかし、彼女は凡人だった。


彼女に出来ることと言えば、土人形の錬成くらいで、他の事はからっきし。


両親の関心は全て兄に向かい、彼女に向けられたものは、冷たい眼差しと憤怒。


両親からの教育は、もはや暴力と言っても遜色ない。


外に出れば、落ちこぼれだと馬鹿にされる。


そんな中で、彼女の拠り所は自分が作り出した人形と兄の存在。


どれだけ彼女が酷い扱いを受けても、兄だけは優しく接してくれる。


人形達は、彼女の全てを肯定してくれる。


しかし、悲劇が起きた。


兄が街から去った。


理由は、広い世界を見て回り、己の培った錬金術をより高い次元で昇格させたかったからだ。


・・・と言うのは建前。


本当は、両親並びに周りからのプレッシャーや、期待が重くのし掛かり、逃げたかったからだ。


妹を残して。


兄は暫くしてから街に戻る。


街は火の海と化していた。


人の死、呻き声、ゴーレムの集団。


少なからず生き延びた人達に現状を問うと、どうやらパルスが引き起こしたとの事だ。


原因は賢者の石の存在。


そう、妹は作り出したのだ、賢者の石を。


そして知った、賢者の石の製造方法を。


妹を探す。


理屈は分かっても、理解が出来なかったからだ。


彼女が何故このような事をしたのか。


・・・だか、薄々気づいていた。


妹が、今まで受けた仕打ちを思い出せば、こうなるだろうと多少予測は出来た。


街中を探しても、妹はどこにもいなかった。


親も、友人も、知り合いも、全て消えていた。


兄の中には復讐心が芽生える。


だが、それよりも妹への後悔の念がより大きくのし掛かった。


天才と周りから持て囃された時の重さなんかよりも、何十倍、何百倍も。


賢者の石の製造方法を知り、兄は錬金術に嫌悪した。


ゴーレムになった人を元に戻す事は叶わなかった。


妹は、兄よりも上の次元に行ったのだ。


悔しさなんて、微塵も起きなかった。


それよりも、錬金術が人を狂わせる事に、兄は許せなかった。


もう、こんなものいらない。


大事な人を手放すハメになった、無駄な技術を呪った。


金?錬成?構築?合成?


何のためになる?


兄は街の生き残りをかき集め、ゴーレムにされた人たちを保護し、村を作る。


彼らを守るための村だ。


そして、妹を倒すための本拠地として。


◇◆◇


ざっと、シーンから聞いたのはこんな感じ?


結局のところ、親と街の人が悪いんじゃね?


俺だったらぶん殴ってるかも。


そんで、今いるのは、誰も住んでない平屋。


普通に、布団やら何やら王都の宿と変わらないから、泊まるのに困るって事はないね。


中もまあまあ綺麗だし、古すぎるってこともない。


居心地は上々だね。


一部屋しかないけど・・・


まあ・・・広いから別に窮屈ではないんだけど。


その部屋の中に俺ら4人とシーン、犬がいるって状況。


・・・というか、この犬は錬金術で合成して作ったらしいよ?


合成元は何だったか忘れたけど、とにかく頭がいいのと、相手の心理を読み取る技術に長けてるんだとさ。


だから、俺らが無害だって分かった訳で、俺らを村に連れてきたんだってさ。


だから、じゃんけん負けたのかー。


そんなんで納得できるかよ!


「そうか・・・、パルスは魔王の幹部に・・・」


一応シーンには、パルスが魔王の幹部であることを話しといた。


そんで、あいつがどんな性格でどんな戦い方をするのかってこともね。


「いっぱいゴーレムがいたのです!白くてでかいのもいたのです!!」

「とりあえず、ゴーレムが沢山いたんだね〜」


パルスにとって、ゴーレムは余程自分の中でのアイデンティティなんだろうな。


てか、もしかしてあの操ってたゴーレムも元人間だったりして?


「それで、どうしますか?パルスさんを探そうにも、何処にいるのか分かりませんし」

「あぁ、それなら」


アンジェの質問に対して、シーンはとある物をポケットから取り出す。


なんか、小さいゴーレムの人形?かな?


これで何するんだろう?


「人形?なんで?」

「こいつには、パルスの魔力と錬金跡が残ってる。これを元にワン太郎を魔力探知機と見立てて、アイツの所在を探る」

「へー、ワン太郎・・・は犬か。結構こいつ優秀なんだなぁ」

「ワン!!!!」


優秀って言葉にが嬉しかったのか、俺に飛びかかってきて頬を舐めまわし始めた。


冷たい・・・


「仲良いね〜」

「ご主人様はモテるのです」

「モテるって言うんでしょうか?」


はぇーっと不思議そうな顔をして、アンジェ達は俺を見つめてる。


それを他所に、シーンは「コホン」とわざとらしく咳払いして、話を戻そうとする。


んー、でもなー。


なんか腑に落ちないんだよなぁ。


「こんな事出来るなら、探せばよかったじゃん。強い弱いとか関係なく、兄妹なんだから戦わないで話くらい出来るでしょ」


すると、シーンは少し顔を俯いて、考えるような素振りを見せる。


「賢者の石を作ったような奴だ、何をしてくるか分からないし、街を破壊したんだ、話し合いにもならないだろう」


少し間を置いて「だが」と逆接を使い、話を続ける。


「これは言い訳だ。本当は・・・怖いんだ」

「怖い?」

「あぁ。殺されるかもしれないとか、そんな感情ではない。今まで放置してしまったあいつに、今更どの面を下げて会えばいいのか。だから、1人だと怖かったんだ。悔しいが」


空気は鉛みたく重い。


んー、要するに気まずいって事じゃないの?


あと、妹に拒絶されたくないんだろうな。


そんな中、意外にもミュラがその空気を割く。


「兄妹なんだから、腹割って話した方がいいよ?私だって兄さんと結構喧嘩してたし」


ミュラの兄、フォーとの話か。


あの里長って割としっかりしてるイメージだけど、喧嘩するって意外だなぁ。


「でも」と言い、ミュラは話を続ける。


「面と向かって話さないと、分からない事だってあるんだから、ちゃんと向き合わないと、もーっとモヤモヤすると思うよ?」

「そーなのです!お喋りするのです!ニナも弟といっつも喧嘩なのです!」


確かにミュラの言う通りかもなぁ。


ヒヨって行動移さないと、どんどんメンタル追い込まれるから、さっさとやらないと不安って膨らむんだよね。


・・・てか、ニナって弟いたんだ。


ニナの家庭事情、そういえば俺全然知らねえな。


「私は一人っ子なのであんまり分からないですけど、少なくとも胸のつっかえは落ちると思います」

「そうだな。だから、シーンも俺らと一緒についてこいよ?任せきりじゃなくて」


俺らの言葉に、シーンは拳をぐっと握り、力を込める。


自分の中で葛藤があるっぽいね。


その様子を見たワン太郎は、俺から離れてシーンの元へと近寄り、握り拳を舐める。


ワン太郎に気づいたシーンは、少しだけ口角を上げて、握り拳を緩める。


「お前らの言う通りだ、俺は逃げてはならないんだな。唯一の家族に背を向けるなんて、愚かだ」


決まったね。


そうなりゃ、とっととパルスを追わないとな。


「じゃあ、明日から捜索始めようぜ。今日はちょっと・・・休みたいんだけど・・・」


俺の一言に対して、アンジェ達は思い出したように身体をぐったりさせ始める。


「そうですね、私もそろそろ寝たいです・・・」

「私もー!徹夜明けは辛いんだよー!」

「ニナもそろそろ、おねむの時間なのです」


っつーことで、パルスの捜索は明日から決行で。


まだ朝だけど、今日はここで休むことにした。


やー、大変だなぁ。


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