203話 魔法が使えない俺と錬金術師
錬金術師?
マジで?ラッキー!
こんなところでお目にかかれるなんて、運が良すぎて滅って感じだね。
センタラリアまで行く手間が省けたわー。
「れ、錬金術師さんですか?」
「この村にいたのです?」
「手間が省けたじゃん!」
女性陣が安堵と喜びを分かち合う中で、俺はジーっと彼を見つめる。
自分から名乗りをあげて、しかも待ってたってかい?
じゃあ、この村に来るように仕組まれてたんじゃねえか。
とりあえず、話を聞いてみるか。
「シーン、だっけ?待ってたってどういう事?」
クールな印象の青年シーンは、表情を変えずに淡々と説明を始める。
「俺にはやらねばならない事がある。その為には必要な条件がある。強く、そして敵対心が無い事だ。この村の周囲には、俺が作ったキメラを大量に放っていた訳だが、それはただ野放しにしていたわけでは無い」
ペラペラとよく喋る!
キメラってそもそもなんだよって事は一旦置いといて
恐らく、俺らに襲ってきた魔物は、この男が作ったって事だな。
「つまり、私達を試したって事ですか?」
「端的に言うとそうだ。弱い奴はあそこで死ぬ」
「むー、やばい奴なのです」
「ちょっと、シャレにならないよねぇ」
シーンの言葉に、少し引いてるアンジェ達。
俺も普通に、コイツやべえなって思うわ。
何も知らない中級冒険者だったら、余裕でやられちまってるってことだし。
「なぁ、なんでそんな事したんだよ?やる事ってなにさ?」
「簡単だ。コイツらを元に戻す為だ」
俺の疑問に対して、ゴーレムに指をさすシーン。
ゴーレムを元に戻すって、言ってることがよくわからないんだけど。
ゴーレムが今、特別仕様とかになってるってこと?
「意味不明なのです」
「元に戻すって、何なのかな?」
ゴーレムに指をさしながら俺たちを見つめ、強い眼差しで訴えるシーン。
「もしあいつらが、元々人間だと言われたら、信じるか?」
・・・え?マジ?
背筋凍るんだけど。
あの作業してるゴーレム達全員、元人間!?
うわー、ちょっと怖くね?
アンジェ達も、シーンの言葉を聞いて絶句してるっぽいね。
「いや、それどう言うこと?」
「あいつらは、ゴーレムにさせられたんだ。妹のせいでな」
「えー・・・お前の妹、やばいやつじゃん・・・」
「・・・そうだな。今は行方をくらまし、何処にいるのか検討もつかんが」
表情と体勢は変えないものの、少し顔が曇ったように見える。
訳ありって感じ?
「あの、つまり私達はどうすればいいんですか?」
「確かに、私達じゃ戻せないし・・・」
「無理よりの無理なのです」
アンジェ達の言うとおり。
俺たちは別に医者でも無ければ、特別な能力があるわけでもない。
じゃあシーンは俺たちに、何を欲してるんだろうね?
「いや、俺がして欲しい事は『妹の討伐』だ」
「いいのか?妹をやっちまって」
「・・・仕方のない事だ。実際、あいつのせいで、俺たちの街が滅んだんだ。この村にいる人達しか、もうあの町の生き残りはいない。」
ふむ、じゃあ錬金術の町センタラリアを滅ぼしたのは妹で、しかも人間をゴーレムにするって言う徹底ぶり。
確かに処刑ものかもね。
村の人達的にもそれが本望だろう。
でもなー、シーンが辛そうな顔してるんだよなー。
なんか、まだ迷ってる感じ?
本人的にはまだ、踏ん切りがついてないんだろうね。
「というか、その妹を見つけない事には話が進まねえな。名前も姿も分からねえし・・・あっ」
「どうしました?たくやさん」とアンジェが俺の顔色を窺う。
えーっと、単純に考えてだよ?
ゴーレム使ってたやつって、魔王幹部のパルスだよな?
まさか、そんな事ないよねぇ・・・
「因みに、妹の名前って、パルス?」
「・・・何故知っている?」
マジじゃん。
アイツ、シーンの妹だったのかよ。
じゃあ、パルスも錬金術師って話になるんだけど・・・
あ、そうか。
「だから、シウの中から賢者の石が・・・?」
「賢者の石、だと?」
シーンは片方の眉をピクッと動かし、俺に鋭い目つきを刺す。
怒らないで欲しいのだ・・・
「はい。私達は賢者の石について聞きたくて、錬金術師さんを探してたんです」
「シウって奴の口から、賢者の石が出てきたのですよー!」
アンジェとニナの言葉に対し、肩を震わせるシーン。
「でも、その賢者の石が本物か分からないから、王都に来て欲しいって感じなんだけどー・・・」
「やめろ」
ミュラの話を遮り、彼は中断を促す。
「あんなものを知ってどうするんだ。俺たちはもう、賢者の石なんてもの望んでもいないし、聞きたくもない」
「どう言う事だ?」
「お前らは、賢者の石について何を知っている?」
なんで質問されなきゃいけないんだろう。
俺らだって別に、錬金術のことも賢者の石の事も詳しいわけじゃないのに。
「不老不死って話しか、聞いてませんね」
「だろうな。一般的に流通している説としてはそれであっている。だがな、実際は認識が違う。あれを作ろうと思えば、俺たちは作れるんだ」
「は!?」
作れるって!?
錬金術師の切望かなんかじゃないの!?
「じゃあ、何で作らないんだ?あれがあれば死なないし、研究だって・・・」
「教えてやろう、賢者の石を作る方法を。それは、人間の生命エネルギーと多量の魔力、そして血液。この3つを使い錬成すれば作成が可能だ」
「むー、どう言う事なのですか?」
「はぁ」と溜め息をつき、一言。
「つまり『複数人の生きた魔導士を石に変換し、再構築する』って事だ」
・・・えっぐぅ。
こりゃ、非人道的、もしくは悪魔の研究といっても差し支えないな。
そりゃ、作りたがらないわな。
「え・・・じゃあシウって人から出てきたあの石って、人間・・・?」
「そのシウって奴が誰かは知らないが、言える事はひとつ。あの石は生きている。それも、自我を持ってな」
あたりが嘘みたいに静まり返る。
最早、言葉も出ないって感じ?
想像したら怖いよなぁ。俺があの石っころになって、意識あるままあれでしょ?
いやー無理っす。
「賢者の石を取り込む事で、死なないと言うのは語弊がある。人間の生命力と魔力を使って、取り込んだ人間の組織を修復をするのだからな。石にされたやつにとっては、生き地獄だろうが」
・・・はい、じゃあ俺たちの仕事は終わりだ。
この話を王都に持ち帰って、ロビに報告すれば納得するだろ。
あんな石、早くぶっ壊して楽にさせた方が身の為だな。
・・・というか
「賢者の石から人間に戻せないもんなの?」
「何を言ってるんだ?石にされた奴の肉体なんてもうないだろ?それに、他の人間の身体を使っても意味はないぞ。拒絶反応で石が壊れるからな」
いやー、それじゃあもう、賢者の石になった奴らは助からないってわけか。
可哀想に。
シーンは腕を組み、ふんと鼻息を荒げる。
そして、彼から言葉が放たれる。
「俺は話したぞ。ならば、お前らにはその対価として、妹を討伐してもらう」
「・・・やっぱり?」
そうきたか。
こりゃ取引って事だね。
賢者の石のことを言う代わりに、そっちの条件を飲み込めって、そういうことだ。
「あぁ、『等価交換』だろ?」
あー、随分と便利な言葉だな。




