199話 魔法が使えない俺と白いゴーレム
白くでかいゴーレムの腕を渡り、肩あたりに座っているパルスの元へと駆け寄る俺。
走りつつ剣を構え、突きの体勢に入る。
だが
「うおっ!あぶね!」
でかいゴーレムの身体中から、人間サイズの針が無数に飛び出し、俺の身体を突き刺そうとする。
バク宙して空中に避難したのも束の間、身体中の針が、まるで避雷針になったかの様に雷を纏わせる。
そして、少し経った後に針の一本一本から巨大な雷魔法を俺に放つ。
やべー、訳わかんねー。
とりあえず、剣を前に突き出して雷を防ぐ。
しかし、俺が魔法を防いでいる事を良いことに、雷を纏ったゴーレムの両腕が、空中にいる俺を撃ち落とす勢いで伸びてくる。
ゴーレムって、魔法使うんだ・・・
とりあえず、受け止めてた雷を一刀両断して、ゴーレムからの鉄槌をギリギリ避ける。
ふう、危なかった。
俺の行動を見たパルスは、怒ることもなく俺に声をかける。
「・・・もしかして、あんたってティニーを倒した、たくやって奴?魔法が効かないとかなんとか」
「あれ、俺って有名人?」
「雑魚がイキがるなっつーの!!悪い意味で有名に決まってんじゃん!!!」
再び白いゴーレムが動き出す。
しかも今度はゴーレムが空を飛び始め、巨体に似つかわしくない速度で、炎を纏った腕をブンブンとぶん回し始める。
うわ、なんか気持ちわるっ!
とりあえず、一回斬ってみるか。
ゴーレムの腕が、右から左へと流れたことを確認し、俺は上へと回避しつつ、重力の思うままに、兜割りの要領で斬りつけてみる。
ガァン
・・・刃は多少通るけど、切断まではいかないなぁ。
やっぱ他のゴーレムたちと違って、特別仕様の物みたいだ。佇まいが違う。
が、やろうと思えば切れなくはない。
ネックになるのは、斬った部分が再生するってところ。
一点に集中して、連撃を食らわせれば必ず切断できる感じする。
なら剣が折れるか、岩が切れるかの我慢比べってところだね。
「ちょっと!再生するからって傷つけんな!今すぐぶっ殺して・・・はい?今いいところなんだけど!!」
てっきりまたその白いゴーレムで俺を攻撃すると思いきや、急に空を見上げて独り言を呟き始めた。
なんか、普通に頭大丈夫かな?ってなるね。
「はー・・・もう分かったっての!今行くから!!・・・ってことでウチ、これから用があるから」
「は?喧嘩売ってきた癖にどうした?」
「あんたには関係ないでしょ!ウチだって行きたくないんだから!!ウチのお小遣い貰う場所をこんなにして、腹立つし!!この!覚えておきなさいよ!絶対に許さないから!!!」
とかなんとか言って、謎空間が急に現れて、パルスは吸い込まれるかのように入っていき、その場から姿を消してしまった。
残ったのは、あいつが勝手に召喚した数体のゴーレムだけ。
くっそ邪魔くさい置き土産なんだけど?
見てると、なんだかんだサリスとシオの連携によって、割と対等に渡り合ってる雰囲気がうかがえるね。
「た、たくやー!!こいつら攻撃が効かないんだが!?!?」
「クソ!!刃が通らないぞ!だが負けない!負けないぞぉ!!!!はぁぁぁあ!!」
・・・撤回。対等じゃないかも。
はあ、しょうがない。
パルスがいなくなったとはいえ、この町を借金天国にした元凶であるジーマとシウは今館にいる。
ここで逃げられたらたまったもんじゃないし、まずはあいつらの確保が優先だね。
「じゃあ、館に入ってったあいつらをとっ捕まえた後で助けに行くから、それまで耐えてて」
俺の話を聞いて、サリスが反発する。
「な、何言ってるんだ!私達を助けろよ!!」
「この!この!!だ、大丈夫だ!!も、無問題だ!!!」
「ご主人様、早くしないと二人ともやばいのです」
うん、2人には頑張ってもらおう。
そもそも、シオとサリスが解決する問題だったんだから、これくらい頑張ってほしいところだね。
さて、あの詐欺師どもを捕まえに行きますか。
◇◆◇
『剣舞・飛燕迅刹』
空を蹴り、不規則な速さと動きで相手をかく乱させて、空中から死角への攻撃をあらゆる角度で斬り伏せる剣術。
まあ、適当に飛び回ってすれ違いざまに斬るだけなんだけどね。
そんなことで、ゴーレム達の身体を5等分くらいに斬る。
5つの岩の塊になったゴーレム達は、意外にも再生されることはなく、動かなくなったね。
「さて、ゴーレムの討伐も完了したし、街の様子を見て帰ろうぜ」
「やれやれ、私の聖剣が無ければ危なかったな」
「私の『ストップ』のお陰だろう。まさか、使えるとは思わなかったが」
「いやいや、私のエクスカリバーが」
「いやいやいや、私の極光剣が」
サリスとシオは、お互い自分の主張をぶつけ合ってるんだけど
なんでこいつら、マウント取り合ってるの?
俺が全部倒したのに・・・
「まあ・・・2人とも同じくらい、凄く頑張ったと思うよ」
俺の中で、最大級の褒め言葉を2人に送ると、「ふぅん!」と胸を張って得意げな表情を浮かべてきた。
俺がそれに若干呆れ返ってると、ニナが服の裾を引っ張ってくる。
「ご主人様って、実はマトモなのですね」
「実は・・・?ねぇ、ニナは俺のことどんな奴だと思ってたの?」
「むー?」
もうちょっと言葉選んで欲しいところなんだけど、まあニナは素直って事で受け止めておこう。
因みに、黒い建物の中にいた犯罪者2人はとっ捕まえて、俺の横で縛られて気絶してる。
若干予想通り、こいつら荷物まとめて逃げようとしてたから、捕まえないって正解だったな。
「これから騎士団の部隊がこちらに来て、彼らを護送します。シオさんはじめ、街の人たちの借金関連は王都騎士本部にて尋問します。みなさん、お疲れ様でした」
「かたじけない。借金の件よろしく頼む」
フィラから出た、これからの流れと労いの言葉に、シオは感謝して頭を下げる。
フィラは、俺がジーマとシウを連れてきた時には目覚めてた。
体力は完全に回復してないっぽいけど、歩く分には大丈夫そう。
「フィラもお疲れさん。忙しいのに来てくれてサンキューな」
「いえ、仮にも副団長が危険な状態でしたし、それにたくや様の頼みですから」
とりあえず、騎士団が来るまでは時間がかかりそうだし、それまで今、この町がどう言う状況かを確認しなくちゃね。
もしかしたら、町の人たちが全部を思い出して、混乱を招いてるかもしれないし。
・・・それにしても、こんなところで魔王幹部が絡んでくるとはなぁ。
てっきり、配下が勝手にこんな事してるとばかり思ってたよ。
見た感じ、ただの小遣い稼ぎに利用してたような側面があったけど・・・
ともあれ、今回は逃げられちゃったし、次はちゃんと仕留めないとね。




