198話 魔法が使えない俺と幹部・パルス
パルスって言ったか?
魔王幹部?このガキが?
まだ癇癪起こしてるし・・・
「態々ウチが自己紹介してあげたってのに、なんなの?馬鹿なわけ?アンタらも名乗るのが普通でしょ?」
「そうですね。わたくしは王都騎士団長のフィラ。幹部が何故ここに?」
あのー、勝手に話を進めないで欲しいんだけど。
「へぇー騎士団長?随分立派な肩書!雑魚の癖に!!しかも、ウチの事聞きたいって?全く、これだから頭の悪い連中は・・・」
「嫌なら答えなくても大丈夫です。あなたをここで仕留めますから」
「え?本気で言ってる?ウケる―!無理に決まってんでしょ!」
え、このガキなんだ?
すげえ人の事馬鹿にしてきてるけど、なんでこう魔王軍幹部は性格に難がある奴しかいねえの?
あ、シウが完全に元に戻った。・・・まあ、裸だよね。
「ぱ、パルス様!!も、申し訳ございません!こんな醜態を晒してしまって・・・」
「マジでそれなんだけど!ウチがここまで来てやったのに、何このザマ!!とっとと金よこしなさいよ!また踏まれたいの!?」
「ご、ごめんなさい!!」
そそくさと裸で屋敷に戻るシウと「待ってくれ!」と後に続くジーマ。
なんか、可哀そうだなぁ。
というかさ、この幹部様?は金をせびりに来たわけ?
器量ちっさ!!
やべ、フィラが倒れそうだ。
俺は早急にフィラの元へと駆け寄り、肩を抱いて支える。
どうやらフィラは、魔法を使い過ぎたんだろうね。
「申し訳ございませんたくや様・・・。不覚です」
「全然、寧ろよくやったでしょ。後は休んでて」
ニコッと微笑むフィラは、そのまま体の力が抜けて眠ってしまった。
俺が眠った彼女を抱きかかえた時、前にいたゴーレムの大きな足が俺の頭上から踏みつけようとしてくる。
速攻で仲間たちがいる後ろへ下がったため、踏みつぶしは失敗に終わり、ただ地面に足をめり込ませただけ。
その後、サリスにフィラを任せる。
「おいたくや、あいつ幹部って言ったぞ?」
「あの子供が幹部なのですか?」
フィラを受け取り興味津々で聞いてくるサリスと、単純な疑問を投げかけてくるニナ。
「らしいよ。あんな感じで幹部って、あんまりしっくりこないけど」
「だけど、確かな強さみたいなものは、あいつから感じるぞ・・・」
「シオは大会の時、あんな感じになるところだったんだよ?」
「や、やめてくれ・・・」
ゴーレムとパルスを無視して、ニナたちと小声で話していたところ、ガキが大声を張り上げる。
「あんたたち!何そっちで盛り上がってんの!!雑魚の癖に!無視するな!!」
んー?怒るところあった?
幹部は考えどころが違うなあ。
「なに?輪に入りたいのか?なら素直にそう言えよ」
「違うっての!!魔王幹部を見たら、普通だったら怖がるでしょ!あーー!!!腹立つ!殺すわよ雑魚!!」
「沸点低すぎだろ・・・」
どうやら、自分の中の普通が蔑ろにされたら怒るらしい。
なんつー自己中。親の顔が見てみたい。
「もう怒った!!殺す!絶対殺す!!」
怒りの矛先を持っている人形に向け、変形するくらい力を込めて潰す。
怒号をこっちに浴びせながら、右手で指を弾く。
すると、地面の至る所から魔法陣が現れて、見覚えのあるゴーレムが数体が召喚される。
これって、キルスティンで見たゴーレムじゃねーか?
それじゃあ、こいつが一枚噛んでたってわけか。
「ウチのゴーレム達からボッコボコにされて、そのまま死ね!」
「お人形さん遊びに付き合わないといけないってか?」
ゴーレム達がこちらに進軍を開始する。
動き自体は遅いけど、実際割と硬いことは前の戦闘で体感済み。
斬れない事はないんだけどね。
「ゴーレムがこっちにくるのですー!」
「こんな奴ら、私の聖剣で!」
「私も戦うぞ!」
サリスはフィラを地面に寝せ、掌から魔法陣を展開して剣を取り出す。
そんな事できるんだ、便利・・・
サリスは剣に魔力を注ぎ込み、いつものでかい剣を作り出す。
シオは同様に、黄金色の魔力を剣に込め、迎撃準備に入る。
あ、そういえば
「ちょっと待って、あのゴーレムは・・・」
俺が止めに入るも、すでに剣を振りかぶってた2人は、なりふり構わず攻撃を続行する。
「エクス、カリバァァァァァ!!!!!」
「『極光連波ァ!!』」
サリスは馬鹿でか聖剣をゴーレム達に振り下ろし、シオは大会で使ってた広がる黄金の衝撃波を二重にして打ち出す。
こう見ると、2人の魔法って光属性?っぽいんだよな。
なんか相性良さそう。
だがしかし、2人の魔法攻撃が当たるも、ゴーレム達は諸共せず、こちらへと進む足は止まらない。
「あ、当たったろ!!聖剣!当たっただろ!?」
「ま、全く通用しない・・・だと?」
割りかしショックな様子の2人。
まあ、初見だとビビるよなぁ。
「あのゴーレムは魔法耐性が高いんだよ。前回戦った時は、ミシアの魔法でギリギリ通用するレベルだったんだけど」
「それを先に言え!」
「無駄に魔力を使ったじゃないか!」
うわ、2人揃って同じキレ方してきたんだけど!うざ!!
なんかあれだな、大会中のシオはずっとナイーブになってたから分らなかったけど、今こうして接してると、ちょくちょくサリスと似通った部分がある。
姉妹って言っても差し支えないんじゃない?
「サリスが2人いるのです」
「俺も思った。あ、ニナはフィラを守ってて」
「了解なのです!」
ニナを後方に待機させ、俺はサリスとシオの横に並ぶ。
今までの状況を見て、少し遠くにいるパルスは俺らをあざ笑う。
「ハハ!ハハハ!!そんな弱々な魔法、ウチのゴーレムに効くわけないじゃん!バーカ!!ほらほら!行っちゃえ!!」
パルスの声に同調するかの如く、ゴーレム達は岩を無理やり繋げた様な腕を、俺らに向かって伸ばしてくる。
腕で叩き潰そうとしてるっぽいね。
「くるよ!回避!」
「回避だと!?そんな事するわけないだろう!!」
「なんで?」
俺の指示に反発し、再び剣を巨大化させるサリスは、襲いかかる複数の腕に対して、でかい聖剣をぶつけにかかる。
辛くも全ての腕を塞ぐものの、身体をプルプル震わせながら、必死に抵抗を見せてる。
「ぬ、ぬぉおおぉお!!!負けないぞ!負けないからなぁ!!!」
「ナイスだサリス!!私も負けていられないな!!」
サリスの勇姿を見たシオは感化され、ゴーレムの群れに突っ込む。
その光景にイラつくパルスは、自分の所有物達に怒りをぶつけ始めた。
「もーーー!!!何やってんのポンコツども!!とっととやれっつーの!!」
「怒ってていいのか?」
「!?」
パルスが気を取られてる隙に、俺は奴が座っている白いゴーレムのところまで近づいてた。
怒ってないで、視野を広く持たなきゃね。
「調子に乗んな!このゴーレムは特別なんだから!!」
「生憎、俺には全部同じにしか見えないね」
白く一際でかいゴーレムが動き出し、両腕をぶん回し始める。
ぶん回している腕に、タイミングよく俺はしがみついて、パルスの元まで腕をつたって走る。
簡単な話、いくらゴーレムが増えたところで、結局のところ、あのガキをシバけばすむ話なわけで。
んじゃ、本体を叩きますか。




