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195話 魔法が使えない俺と人間改竄

サリスに連れられて、何時間かかけてこの町を案内させられた。


どうやらこの町では、物作りをして物を売りながら生活しているらしい。


作ったものはこの町から外部へと運ばれて、王都やその他各地に売られているらしい。


んで、その金をジーマとやらに、手取り8割の金額を収めているらしい。


なんともまあひどい話だよな。


しかも、町の人の借金額はどれもとびぬけて高く、とてもじゃないけど一生かけて返済できるとは到底思えないような金額だった。


それなのに、町民は楽しそうに生活しているのを見ると、マジで虫唾が走る。


サリス自身の話を聞いてみると、どうやらサリスの記憶として、小さい頃からここで生活しているらしく、町民全員と仲が良い、とのこと。


騎士団にいたことも、父親の事も、何もかもきれいサッパリ記憶が変わっちまってるってわけ。


そんな話をしながら歩いていると、最終的についたのは例のあそこ。


「でっけえなあここ」

「大きいのです。忌々しいのですね」


サリスに連れられてきたジーマの住んでる館は、空から見たのと比べてずっとでかかった。


目の前に広がる色鮮やかな花々と特徴的な形の木々が俺らを迎え入れ、道を案内するかのように花木がずらっと道を包んでる。


その道の先に存在する黒くでかい屋敷。


なんともまあ似つかわしくない光景だね。住んでる奴の精神が現れてるような歪さだわ。


「すごいだろうジーマさんは!憧れの存在なんだ!」

「そっか。とりあえず中入ろうか」

「なのです」

「無視するなぁ!!!!」


過去を改竄されても、サリスの性格は変わらないなぁ。


それに、いくらお頭が弱いからと言って、子悪党に尻尾振ってる姿を見るのは、流石に心が痛むけどね。


・・・ふうん、なるほどね。


中には何人かの気配があって、その中で特に異彩を放ってる気を感じる。


戦ってきた魔王配下たちと、同じ気配を感じるね。


・・・誰か来るな。


瞬間


早めのスピードで俺に斬りかかる人影。


俺は速攻で剣を抜き、襲い掛かる刃を剣で受け止める。


黒いローブに身を包むそいつは、俺の見知った女の顔。


「おいおい、お前もかよ」

「・・・」


フードがめくれ、太陽に照らされるその女の顔は、まぎれもなく探していた、シオ本人だった。


「シオもサリスと同じなのですか?」

「私と同じとはどういうことだ!・・・それに、なんなんだこれは・・・」


ニナに突っ込みつつも、現状に理解が追い付かないサリス。


そんな中で、屋敷の方から近づいてくる影が二つ。


1人は顎髭を蓄えて、黒い眼鏡をかけたオールバック。


もう一方は、・・・なんか男の腕に絡みついてるブロンドの女がいた。


「おいおいなんだよ?ネズミが入り込んだみてえだな」

「もー汚いわぁ‼二人の時間を邪魔してぇ!」


男と女がこちらに近づき、ため息交じりに俺らに声をかける。


多分オールバックの方がジーマか。んで、女は・・・ただの愛人か?


「こいつがジーマなのですか?」

「おい!失礼な態度を取るな!サリスです!納金しに来ました!!」


ニナをしかりつけ、ジーマの方へと笑顔で近づくサリス。


うわー、フィラ以外にこんな態度取る姿、マジで見たくなかったなあ。


あと、シオ邪魔。


「おおサリスじゃねえか!どれー?・・・チッ少ねえなぁ。折角俺が金を貸してやったんだから、もうちょっと気持ちを込めてくんね?じゃねえとお前娼館に売り飛ばすぞ?」

「ごめんなさい!もっと頑張りますから!!」


顎髭オールバックにヘコヘコするサリスの姿は、マジで痛々しくて見てらんねえ。


こいつぶっ殺してやろうかな。


シオの一撃一撃を捌きながら、俺は髭野郎に質問する。


「お前がジーマか?サリスが借金ってどういうことだよ」

「んあー?んだてめぇ。生意気なクソガキだなぁ。言葉通りの意味だろ、この女が金に困ってたから、俺が金を貸したってだけの話だっつーの。なあシウ?」

「ほんとほんと!このおこちゃまなに~?超うざいんだけど?」


どうやらあのブロンド女は、シウって名前らしい。


あの女から、魔王幹部の気配がするんだよな。


ジーマは額に血管を浮かせながらも、俺にサリスの事を話してくる。


「借金なんてするわけねえだろ。おめーをぶっ倒すために来てるんだからな」

「倒す?なぜ?俺が金を貸してやってんのに、なんで俺が悪者になってんだよ」

「うわー!このガキマジで馬鹿じゃん!うけるー!」


「ハハハはっは!!」と腹を抱えながら笑うクソ野郎二人。


あー、なんだこいつら。


ここまでコケにされるのとか初めてなんだけど。


俺がシオの剣を捌いている姿を見て、ジーマは「んー?」と舐めまわすように俺を眺める。


そして、「おお」と何かを閃いたかのように、わざとらしいリアクションを取り始める。


「お前、まさか噂のたくやか?魔法が効かないって奴!へー、まさかこんなしょんべんくせぇガキだったなんてなあ」

「えーそうなの?じゃー私の能力効かないじゃんー」


どうやら俺の事を知ってるらしい。


それにあの女、今能力って自分から口を滑らせたよな?


ということはだ。


あの女が例の右腕とか言うやつだ。


髭の右腕に絡みついてるから、右腕って言葉案外似合ってんじゃない?


「ご主人様、あいつ能力って言ったのです」

「聞こえてたよっと!じゃあ、サリスもシオもあの女の力でこんなんなってるってことだな」


俺の見解を話した時、ブロンド女は不敵な笑みを浮かべる。


「まあ別に隠す必要ないわね。私の魔法は『人間改竄』。人の過去を変えられるし、性格だって変えられるのよ?だから、みーんな借金したってことになってるのよ?分かるかしら?」


馬鹿な女は自分の能力を説明し始めた。


「まあでもいいじゃない?みんな楽しそうに仕事してるんだしぃ?最も、金はぜーんぶ、ジーマに入っていくんだけどね~」

「マジで、シウがいないとぼくちゃん、生きていけないよ~」

「私もジーマがいないと無理~」


うわ、きっも!!!!


目の前で繰り広げられるイチャイチャを見せられて、胃酸が逆流しそうだわ。


・・・つまるところ


サリスも町民も、全員過去も性格も書き換えられてるって訳か。


控えめに言って、能力が陰湿すぎるだろ。


その女の話を聞いてか、サリスは「え?え?」と困惑し始める。


「わ、私にもその魔法が掛けられてるのですか!?」

「はぁー?お前何質問してきてんだよ?ぶっ殺すぞ?」

「すいません!余計なことを!!」


性格を変えるとか言ってたから、サリスも多少書き換えられてるらしい。


完全に、ジーマに逆らえなくなるようにされてる。


俺はシオの攻撃を受けながらも、クソ野郎二人をキッと睨む。


そんな俺を見てクスクスとあざ笑う2人。


「ああ、私を殺そうなんて考えてる?やめといた方がいいんじゃない?」

「あ?なんで?」

「やろうと思えば、私が書き換えたやつらの精神破壊できるから」


うわー!人質取ってきたぞこいつ!


小悪党が過ぎるだろおい。


「騎士と飛竜はどうした?」

「あーきた奴ら?精神破壊させてどっかにほっぽり出したわ。あと、飛竜は売った。私の魔法、魔物にも効果があるから、何でも言う事聞いてくれるのよね~」

「でもよ、飛竜は高いとはいえ、一匹はここに置いといた方が良かったよな。移動便利だろ」

「やー!!確かにー!!ジーマ頭良すぎぃ!!」


うっぜー!!


何こいつら目の前でいちゃついてんだよ!クソ腹立つなあ!


「さあてと、たくやぁ?分かってるよな?もしその戦ってる女を倒したら、その瞬間サリスの頭はボン!だからな?今のまま戦ってろよ」

「知り合いに倒されるとか、マジ面白すぎ!いやーそれにしてもこの女可哀そうだよねえ。大した額でもない金額を何億単位にされちゃって、挙句の果てにはここで護衛にさせられちゃってさあ!」

「かわいそー!!ワルドには感謝してもしきれねえよぉ!!あいつが貴族をぶっ殺してくれたおかげで、借金の口実を作れたんだからなあ!!」


やはり、このジーマとワルドは繋がっていたっぽい。


それに、サリスが前に行っていた、貴族が運んでいた金。


この資金を使って、シオの家族に多額の借金を背負わせたってことかな。


やってること普通にやばすぎだろ。


「あー、シオがその男と戦ってる間に、そこの獣耳のガキも改竄しちゃおうかなぁ!」

「お!いいねえ!!メイド服っぽいし、この館でこき使ってやろうか!」


どうやらニナの過去を改竄して、この館で働かせるらしい。


そんなことしたら、マジでここ血の雨降らせてやるからな?


「んじゃ、改竄開始ー!ほら~」


ブロンド女がニナに向かって手を突き出す。


するとニナは言葉を出さず、目が半目になる。


「さ、改竄完了!ほら、こっちおいで?」

「おら早く来やがれ!馬車馬みたいにこき使ってやるからよ!」


改竄が完了したらしいニナが、ゆっくりとあいつらに近づいていく。


これまずい奴じゃね?


「ニナ?マジで?」

「・・・」


俺の事を見向きもせず、ただただふらつきながら二人の元へと足を運び始める。






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