194話 魔法が使えない俺と気持ち悪い町
飛竜から降りて、デルフィンに入る俺ら。
恐らくここにサリスや騎士団、後シオがいるはずなんだけど、闇金のなんたらが征服している様子は、今の所見受けられない。
寧ろ皆、楽しそうに働いている様子が窺える。
織物したり、鉄を打ったりと手作業が多いみたい。
それでも皆んなニッコニコの笑顔で仕事をしなら会話しているもんだから、一見問題がないように見える。
ただ、俺はこの感覚が気持ち悪い。
仮にもここは、悪徳の闇金連中が収めてる敷地だと、出発前に受付嬢が言っていた。
だけど、ここにいる奴らは、不穏分子がないかのように、笑い合い、喜びを分かち合いながら過ごしている。
いや、普通に考えたらこんな、やべえ奴のお膝元になんて居たくないだろ。
逆の発想として、その悪い連中は自分の土地の人たちには優しいとか?
でも、違和感を感じてるのは、俺だけじゃないみたい。
「ご主人様、みんなちょっと気持ちが悪いのです」
「ニナもそう思う?なんだろう、楽しそうなのに、全然こっちに伝わってこないんだよ。なんだか、上っ面だけって言うか」
「ハリボテの笑顔なのです」
俺たちは、周りを観察しながらサリスたちを捜索をする。
あっちこっち見ても、ただ笑顔が溢れる街で、一見するといい町だなぁってなんとなく再認識。
とりあえず、近くにいる適当なやつに聞いてみるか。
「ちょっといい?」
「ん?」と笑顔で対応したのは、中年くらいのおっさん。
・・・目が笑ってない気がする。
「この町で人探しててさ、サリスっていう赤髪の女性なんだけど」
「あーサリスか!あの子のお友達かい?こっちにちょくちょく顔を出してるよ。確か、2番地区でアクセサリー作ってたかなぁ?」
「え、アクセサリー?」
「そうそう!あの子ねぇ、なかなか筋がいいんだよ!」
なに?アクセサリー作ってるって?サリスが?
どう言う事!?
あの不器用そうな窓際副団長が!?
「それ本当にサリスなのですか?」
「本当だよ!おっさんだけど、まだ頭はバカじゃあないんだ!アハハハハハ!!!!!!」
うえー、なんか笑い方がわざと臭くてきめぇ・・・
まあいいや、情報貰ったし急いで向かうか。
俺とニナは一応おっさんに感謝の言葉を送り、彼が言った通り、建物が両側に並ぶ道を真っ直ぐ進む。
◇◆◇
「この店なのですか?」
「うーん、アクセサリーって書いてるから、そうなんじゃない?」
おっさんの言われた通り、数分くらい歩いた距離に、アクセサリーと書かれた看板がついた小屋が現れた。
それは特別目立つ様な建物でもなく、横に並ぶ古い建物群の1箇所って感じ。
「こんな所にいるとは思えないけどなぁ」
「ニナもそう思うのです。想像できないのです」
「だよなー」と半信半疑でニナと話ながら、ドアをノックする。
すると
「はーい」と女性の声が奥から聞こえる。
バタンと扉は開け放たれ、声の主が姿を見せる。
・・・まじかよ。
「お!たくやじゃないか!アハハ!どうしたんだこんな所で!あれ?ニナも一緒か!?」
「え、マジでサリスじゃん」
「サリスなのです」
サリスが扉から出てきた。
赤い髪を後ろに縛り、服装はいつもの鎧をつけず、一般市民のそれかそれ以下の少しボロい服装だった。
・・・いや、いやいや、何でだよ?
「おい、お前こそここで何やってんの?」
「あはははは!!何って、仕事中だよ!今日中に何とか終わらせたいんだ!」
「そういう事じゃなくて!任務はどうしたんだよ?シオは?他の騎士は?」
「任務?騎士?シオって誰だ?」
・・・
いやいやいや!頭打ったのかこいつ?
流石に冗談が過ぎるんじゃねえか?
「サリスは窓際副団長なのですよ?」
「副団長・・・?うーんと、何かのファッションか?」
「やばいのですご主人様。頭がぶっ壊れてるのです」
「失礼じゃないか!?」
ニナは冷たい目をしてサリスを見る。
・・・目の前にいるのは確かにサリス。
だが、過去がすっぽり抜けてるように、今までの事を忘れてる。
しかも、笑顔がここに滞在してる町民と一緒だ。
「因みにサリスって、俺達の事はちゃんと覚えてるんだよな?」
「なにを馬鹿なことを言ってるんだ!お前ら冒険者だろう?前に任務でここに来た時に知り合ったんじゃないか!」
忘れてるわけじゃない、これは『過去が書き換えられてるんだ』
敵の洗脳魔法ってことか?
確か、ミシアは洗脳魔法についてこんなことを言ってたな。
「洗脳は、相手の心の隙を突いた方が、かかる確率が高い」
普段気丈にふるまってたサリスにも、内心では隙間があったってことか。
でもまあ、俺が頭を触れば、洗脳魔法は打ち消されるんじゃねえかな?
とりあえず頭を触って・・・
「おいやめろ!仮にも男女だろ!こんな周りに人がいる中で、なんてことしようとしてるんだ!」
「え、サリスってそんな感じだっけ!?」
「お前はおかしいぞ!!」
怒られちゃったよ。
・・・しょうがない、これは黒幕を叩きに行った方が早いな。
「分かったよ。悪かった」
「ふう、焦ったぞ本当に!」
「まあ、とりあえずさ。この町で一番偉い奴に会いに行きたいんだけど、どこ?」
俺が遠回しに親玉のところを聞き出そうと、サリス質問をした。
すると彼女は目を見開きながら笑い始めた。
・・・こええ。
「ああ!ああ!!もしかして、ジーマさんの事か?彼にはお世話になってるんだよ!!」
へえ、闇金野郎はジーマっていうのか。
「どうお世話になってるのですか?」
「ああ、あの人はな、私の借金を肩代わりしてくれてるんだ!それで今働いて、ちょっとずつ返してるところだ!」
「はぁ!?借金!?!?なんで!?」
「サリスは行くところまで行ったのです」
いやいや、普通に考えて借金なんてしないだろ!
任務でここ来たのに、何でそんなことになってんだよ!
「因みに、いくら?」
「ざっと1億だな!先は長いが、返し切ってみせるよあははは!!」
・・・もう驚く気力も出ねえや。
十中八九そのジーマって奴のせいだろ?そいつぶっ飛ばしてやるよマジで。
「そのジーマって奴、でっかい黒い屋敷にいるんだよな?」
「よく知ってるじゃないか!あ、それなら私が案内してやろう!ちょうど今日納金日だしな!ちょっと待ってろよ!」
サリスは鼻歌を歌いながら、再び小屋に入っていく。
さっさとこいつの眼を覚まさせてやらないと駄目だな。
それに、他の騎士団の奴らも、サリスと同じようにここで借金かなんかして働いてるのか?
「ご主人様、シオは何処に行いったのですかね?」
「確かに、ここで働いてるのかもしれないし、もしかしたら捕まってるのかも」
どちらにしろ、そのジーマって奴のところに行かないと話が進まねえな。
それか、隙を見てサリスに触って魔法を解くか、どっちかだな。
ああ、そういえばやることがあったな。
「あーこちらたくや」




