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番外編 ミシアと権能

「おーい、大丈夫かー」


祝勝会?の次の日の朝。


アンジェとミュラは、ソファーの上でダウンしてた。


「たくやさぁん、気持ち悪いですぅ」

「頭、ガンガンするぅ・・・」


要は二日酔い。


アンジェはともかくとして、ミュラに関しては龍人族だよね?


彼女らって戦闘力は高いけど、意外と身体は人間と一緒なのかな?


「あんだけチャンポンしてたら、そうなるでしょうよ」

「飲み過ぎなのです。ニナを見習うのです」

「ニナは飲んでないでしょ」


昨日の酒の場にて、普段酒を飲まないアンジェとミュラは、SSランク昇格による嬉しさからか、調子に乗ってバカみたいに飲んでたんだよね。


昨日はマジで、帰る時大変だったんだよなぁ。


道端で吐くし、どっかプラプラ行こうとするし、大声出すし。


今後、酒飲まさないようにしようかな。



そんなわけで、二日酔いで悶絶している2人を俯瞰する俺とニナ。


普段は幼い感じで天真爛漫のニナなんだけど、時々こうやって冷めた態度を取るこの娘、一体何を考えてるんだろう。


すると奥から、ミシアが俺たちに近寄ってきて、水と・・・粉薬?を持ってきた。


「線引きしないで飲むからよ。ほら、これ飲みなさい」


アンジェとミュラは、有り難そうにミシアからそれらを受け取って流し込む。


最初こそツンケンしてたミシアも、最近になって優しさを見せるようになってきたように思える。


根は優しい人物なのかも?


なんとなくミシアに聞いてみた。


「ミシアって割と優しいのに、なんで魔王配下なんてやってたの?」

「え!わたくしの人となりを知りたいのですか!?わ!どうしよう!わわっ!!」


え、やっぱ質問取り消そうかな。


なんて思ってたらミシアは「コホン」と咳払いして、簡単に自分語りを始める。


「端的に言うと、わたくし元々親がいなくて、孤児院で生活していたのですけれど、そこから卒業し、補助魔導士として街を転々として、怪我や病気の人を助けてました」


ふむふむ。


「その時、不覚にもある街で恋をしてしまいまして・・・。でも、その人に騙されて、有り金全部持ってかれまして、魔物の巣にぶん投げられました」


そりゃ酷い話だな。


好きな人に酷い裏切られ方をした時の絶望感たるや、相当なものだったろうね。


「その時思いました。何故わたくしは愛されないのかと。人を助けたところで、誰もわたくしを愛さないのだと悟りました」


うん?・・・うん。


まあ、そうか。


「孤児院生活では、わたくしが面倒を見る事が多かったもので、親もいませんから、愛に飢えていたんです」

「愛情ねぇ。・・・それで、なんとか助かったんだ」

「はい、ポケットの中に入ってたんですよ、『魔力増強石』が。それを口にして、魔王の権能を手に入れて魔王配下になりました。それで魔物を一掃しまして」

「あー、例の魔王がどーたらの石か、ポケットにそれが入ってたと。でもさ、エジールは権能を持ってなかったように思えるんだけど?」


そう、魔力増強石は、人の魔力を増強させ、戦闘能力を高める石。


魔王から貰ったものがオリジナルなんだけど、キルスティンでは人間の魔力を使って廉価版を大量生産しようとしてたんだよね。


しかし、だ。


魔力増強石を使ったエジールからは、魔王の配下的な雰囲気を感じなかったんだよね。


何が違うんだろう?


「簡単に言うと才能ですね。大会の時も言いましたが、配下になる条件として、危機的状況、負の感情、魔力量、これら全ての条件が合わさって、権能が付与されます。彼らには、それに至る何かが足りなかったのでしょう」

「なるほどね。じゃあ、ミシアは才能があったって事か」

「そんなに褒められたら!!照れてしまいます!!!」


・・・言葉選びに気をつけないと、話が脱線しそう。


「えっと、それで成り行きで配下になったって事だよね?」

「そうです。権能を手に入れて配下になりましたら、自動的に魔王に従属するようプログラムされてます。そして、魔王からの下された指示はひとつ、魔力を集める事。最も、幹部クラスになりましたら、それよりも重要な支持が飛んでくるみたいですが、わたくしは幹部ではありませんでしたので、詳細は知りません」


すげぇプログラムだな。


圧倒的な力を得ると同時に、一生魔王の奴隷になるシステムか。


「その後、わたくしは魔力を集めるのに各地を転々として、行き着いたのがホットスプラです」

「あぁ、俺たちが初めて会ったところな。宗教やってたのって、愛されたいとかどうとかと関係あるの?」

「はい。権能によるデメリットとして、負の感情がより強くなります。わたくしの場合は、愛欲ですね。信者に祭り上げられて快感を得ながら、魔力を集めるって言う一石二鳥の作戦です。・・・今思えば、とても浅はかでしたが」


先ほどまで微笑みながら話をしていたミシアの顔は、少し影を落として俯く。


シオの時、権能を手に入れてから性格が尖ってたように感じる。


恐らく、自身で感情の歯止めが効きにくくなるんだろうね。


感情に任せて喋ってたから、言ってる事がめちゃくちゃだった訳か。


妙に納得。


「温泉に魔力を流して洗脳っていうのも、よく分からなかったけどね。例えば、洗脳にかかるように、町全体に魔法をかけるとか」

「洗脳魔法って、心の隙を突くことが肝心なんですよ。温泉に入った時って一番落ち着くときですよね?つまり、心が無防備な状態にかける方が、高確率で洗脳できるんですよ。・・・まあ、それでかからない人もいますけどね」


へーそうなんだ。


洗脳魔法って、結構万能でめちゃくちゃ強い魔法だと思ってたけど、強力故に色々と難易度が高いんだなあ。


「話を戻すけど、結局ミシアは、自分で権能を放棄できたじゃん?普通なら勝手にそう言う事出来ないんじゃない?なんで?」


するとミシアは、俯いてた顔を少しあげ、頬を赤らめながら説明を始める。


「わたくしにも分かりません。出来る気がしたんですよね、権能の力を全て使って、街を元通りにできるって。それは・・・もう!言わせないでください!!」


まーたこれだよ、話がマジで進まねぇ・・


・・・あの時彼女は「恋した」って言って、権能を放棄してた。


そこから考えられるに、権能を放棄出来る条件は、負の感情を上回るほどの前向きな感情。


つまり、ミシアが放棄できたのは、愛されたいって欲求を押さえつけて、恋と言う強い感情が芽生えたから。


そう言うことなんだろうね。


そんな考えを1人でしながら、顔を少し赤くしてモジモジしているミシアを見てると、何故だろう。


緑の長髪を垂らし、整った顔を伏せ、ドレスを握る彼女の姿は、何故か可愛く見えた。


「ミシアはなんでモジモジしてるのですか?」

「子供には分からないわよ」

「おばさんの気持ちは理解できないのです」


あーあー、また始まったよ。


なんでか分からないけど、ミシアとニナはすぐに売り言葉に買い言葉でバチバチし始める。


もうちょっと言葉に気をつければいいのに。


まあ、それだけ心を許してるってことなのかな?


とりあえず2人の間に入って「まあまあ」となだめる俺。女ってこえー。



ふと、俺はなんとなくミシアに聞いてみた。


「なぁ、ミシアは昔に戻りたいとか思う?」

「昔にですか?」

「あぁ、もし過去に戻ってやり直せたら、配下にならずに済んだでしょ?」


俺が疑問を投げかけてすぐにミシアは、「なにそれ?」と言わんばかりの、きょとんちょした表情を浮かべて答えた。


「何言ってるんですか?今あなた様と一緒にいれるのですから、戻る必要なんてないですよ」


・・・。


後ろで手を組んで俺に向けたミシアの笑顔は、一番星と差し支えないほどの輝きを見せてた。


なんか、ちょっとあざとくない?


「たぁぁくやさぁん、ギルド行かなくていいんですかぁ?おえっ」

「あ、やべ!」


そうだった!


今日は、昨日ムロとドッジが言ってたダンジョンについて、ギルドの受付嬢に聞こうと思ってたんだっけか!


「じゃあ、俺らギルドに行くから、アンジェとミュラは安静にしてろよ!ミシア、2人をよろしく!」

「行ってくるのですー!」


アンジェとミュラは死にそうな顔をして寝転がりながら手を振り、ミシアはにっこにこの笑顔で見送ってくれた。


普段人となりとかの話ってしないから、こういう話を聞くのは貴重かもね。


もっと、みんなの事を知らないといけないのかもしれないな。



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