192話 魔法が使えない俺と大会あと
大会は終わった。
閉会式の時に、即興で作られた壇上に登って国王から魔剣貰ったんだけど、パン!とか言って邪悪な魔力?的なのが解放された感じ。
要は、俺が触ったら普通の剣に戻ったってことだね。
剣を破壊しなくてもよくなったと。
じゃあ最初から、こんな大変な思いしないで触っとけば良かったじゃんって、心底思うね。
んで、客が待望してる魔剣を引き抜くってやつだけど、普通の剣に戻ったわけだから、なんともまぁ呆気なく抜けて、客席がもう沸くのなんの。
俺のこと「勇者だ!」とか「伝説だ!」とか「オカシィダロー!!!」とか、客席から好き勝手言われる始末。
全く困ったね。
あーそうそう。
ティニーなんだけど、大会が終わってからロビの所に謝罪しに行って、最初はキレ散らかしてたロビなんだけど、なんとか場が納まったらしいよ?
というか、寧ろロビと意気投合したらしくて、研究部のお世話になる事になったんだとか。
まあ、フィラの力が関わってるのもあるんだけどね。
ティニーがこんなんになったのは、元々前の騎士団長のせいって事で、王都騎士が責任を取る形で、ティニーの保護をする?らしい。
良かったね。
そんで次の日、俺らは今冒険者ギルドにいるところ。
「おめでとうございます皆様!!こんな異例な事があるなんてびっくりですよ!!」
「ほんとだよ、俺だってびっくりしてるんだから」
ニッコニコで俺らに話しかけてくる受付嬢。
なんでかって言うと、まああれだよね。
「それでは正式に、たくや様達をSSランク冒険者に昇格します!!!」
「「うおぉおおああぁあおおおぁあぉお!!!」」
受付嬢が声を張り上げて宣言すると、ギルドにいた連中が一斉に声を上げて、拍手喝采。
ギルドの建物は、声の振動で揺れてる様な感覚。
冗談で冷やかす声や、純粋に祝福する声やら、とにかく俺たちを祝ってくれてるのだけは伝わるね。
「た、たくやさん!!まさか、まさかですよ!!」
「ニナ頭真っ白なのです!」
「やぁー、祝われるって気持ちがいいねぇ」
「あんまり実感ないけどね」
SSランクに昇格したのは、俺、アンジェ、ニナ、ミュラ。
あと一応サリスも冒険者って肩書きあるから、あいつも昇格してんのかな?
知らんけど。
歓声が湧き上がる中、受付の奥から何やらキラキラしたのを持って、こちらにやってきた。
「これが、SSランク冒険者カードになります」
ミシアから手渡されたのは・・・うぇ、めっちゃ虹色のカードなんだけど・・・
こんなキラッキラして目立つもん、盗まれそうで嫌だなぁ。
あと、ボボボボボキューンって鳴りそう。
「うわぁ綺麗・・・こんなの、本当に貰っていいんですか?」
「いやー生きててこんなに嬉しい事はないよぉ!」
「ご飯食べ放題なのです!!
まあ、アンジェ達も喜んでるみたいだし、別にいっか。
これで食うに困る事も無くなったわけだし?
・・・うえ!なんだこの男2人!急に後ろから肩組んできて!
「俺らよぉ、お前のこと最初からすげえやつだって思ってたぜ?」
「だからぁ、今日ギルドにいる奴らで飲み会でも開かないか?」
「・・・え、なに急に?」
藪から棒に、俺にゴマを擦って、飲み会の提案をしてくる男2人。
「いやいや、こんなめでたい日に何もしないなんて、冒険者としてぇ無視できないだろ!?」
「しかも大会優勝してんだから、そのお祝いもしないとダメだろ!!」
「言いたいことは分かるけど・・・」
初期の頃と今で、俺に対する態度の反転具合えぐすぎだろ。
それどころか、ギルドにいる冒険者達がそれに賛同し始めて、勝手に盛り上がり始めてるよ。
えー、流石に虫が良すぎないか?
・・・でもまあ、ギルドに顔出す事って最近なかったし、それに最初の時と比べて、俺を見る目が変わってるのも事実だし、仕方ない。
参加するか。
◇◆◇
「びゃぁぁああ!!!お前すごいなぁ!!あの有名な英雄の弟子だってぇ!?!?」
「そりゃ、あんなつぇえ訳だぁ!試合見てたけど、あの動きただもんじゃなかったなぁ!!!!おえっ!!」
「水飲みなよ・・・」
ギルドの横にある大衆酒場を貸し切って、冒険者達が集って酒盛りをしまくってる。
店内は割と広くて、テーブルや椅子の数は結構多い。
そして、そのテーブルには魔物料理とか酒に合いそうな濃いめの食い物、それに酒が尋常じゃないくらい置かれていて、こりゃ酒好きには天国だろうね。
50人くらいいるのかなあ。
そん中には勿論、雷帝剣やベーリとその仲間達とか、見知った奴らもいるから、何となく知ってる奴らとは雑談したかな?
一応形として、皆から祝いの言葉とか貰ったけど、もはやお祝いは形だけのただの飲み会だよなー。
あと、炭酸の酒ぶっかけられた時は、正直イラっとしたね。
もうね、うるさすぎて声あんまり聞こえないし、だる絡み多いし、飲ませてこようとするし。
酒ってそんなにいいもんなんかねぇ・・・
アンジェ達はと言うと、他の女性冒険者達と喋っていて、割と会話は弾んでるみたい。
ん?
「たくやさん!お久しぶりです!!」
「聞きましたよ!優勝おめでとうっす!!」
俺に話しかけてきたのは、ムロとドッジ。
前にゴブリンがめちゃくちゃいるダンジョンへ行った時に、俺たちが助けた新人冒険者の2人だね。
「おお、久しぶり2人とも。ありがとう!元気してた?」
「お陰様で!あの時依頼、俺たちめっちゃ修行して強くなったんですよ!」
「たくやさんみたいに強くはないっすけど、それでも結構、安定して依頼をこなせるようになったっす!」
へぇー、頑張ってるんだなぁ。
確かに、最初会った時と明らかに顔つきが違うし、なんか頼もしくなった感じする。
「あ、そういえばたくやさん、知ってます?」
「何が?」
「最近、新しいダンジョンが出現したかもしれないって噂ですよ!」
「かもしれない?」
急遽、ムロが俺にダンジョンの情報を教えてきたんだけど、俺そういうの疎くて全然んからんなぁ。
それに、かもしれないってなんだ?
「そうなんすよ、なんでも二枚扉だけがその場所にあるらしくて、開けても向こうの景色が見えるだけらしいんすよ」
「ただ、そんなところに扉だけあるなんて不自然だから、なんか特殊な魔法が掛かってて、入れないようになってるんじゃないか?って話です」
へー、なんかよく分かんねえな。
そこにポツンと扉があるだけって、そんなんもしかしたら誰かが適当に作って、そこに置いただけかもしれないじゃん?意味が分からないけど。
「お前らはもうそこに行ったの?」
「いえ、自分らはまだ・・・」
その時だった。
「た、くやさまーーーー!!!!!!会いたかったですぅ!!!!」
「うわ!ミーユ!」
いきなり俺に抱きついてきたのは、ムロとドッジの仲間の女、ミーユだった。
こいつらがいるから、彼女もいるとは思ってたけど、まさか抱き着いてくるなんて思いもしねえよ。
「たくや様に相応しい女になるために、凄い頑張ったんですから!褒めてください!!」
「あー、うん、それはすごいね。よく頑張った」
「えへへえ!!」
意味も分からなくミーユを褒める俺。
酒くせぇ・・・こいつ多分酔ってんな。
というか、ムロもドッジも助けろよ。
「たくやさん、ミーユなんかずっとたくやさんの事ばっか喋って、話にならないんすよー」
「一発ガツンと言ってくれません?」
「いやいや、パーティの問題に俺を巻き込まないでよ・・・」
飲んだくれたミーユの抱擁から脱出しようとした時、目の前に4人の女が現れる。
「たくやしゃぁあん!なにやっれるんれすかあ?」
「たくやくぅん!!わらしもらっこぉおお!!」
「ねえ、重たいよ・・・」
ミーユに続いて、アンジェとミュラも抱擁に参加し始めて、いよいよ辛くなってきた。
多分、アンジェとミュラは泥酔してんだと思う。目が半分開いてないし。
その様子を静観するニナとミシア。
「アンジェさんとミュラは酒雑魚なのです」
「あなたは飲んでないでしょ。あなたさま!!あ・・・!わたくし酔ってきてしまいましたぁあ!!」
「嘘つけ」
まあ、なんだかんだで夜がどんどん更けてく。
実際、最初は大勢集まって食事って、かったるいなあって思ってた。・・・いや、かったるいんだけど。
でも、普段こういう騒がしい場所で飯食うことがないから、割と新鮮な気持ちだね。
偶にだったら、こんなところに参加してもいいかもね。




