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191話 魔法が使えない俺と集う雄姿

辺りはシーンと静けさに支配される。


空気が凍結したように冷たく、耳を塞いだように無音が続く。


マイフの表情は無そのもの。


怒りをあらわにするでも、驚くでもなく、ただただティニーを真顔で見続ける。


だが、無だったのは表情だけだっだ。


ガキン


堅物をぶつけたような衝撃音が響いたのは、俺の剣とマイフの手刀がぶつかり合ったから。


ノーモーションから、一気にスピードを上げてティニーに近づこうとしたもんだから、俺が割って入り進行の妨害をする。


「どいてくれますか?」


静かだが、重くのしかかる声を出すマイフ。


「振られたんだから、潔く引けよジジイ」

「なに、あの娘を殺して奪うだけです。最初から、こうしておけば良かったですね」

「行かせると思うか?NOだね」


手刀に込める力が増し始めるが、こっちも負けてられない。


寧ろこれはチャンス、ここでこいつを倒しちまえば、魔王軍の弱体化は明白。


それに、ティニーにはもう、悪いことはさせたくないしね。


「不本意ですが仕方がない。あなたから先に葬りましょうか」

「やれるもんならやってみな?爺は早く寝ろ」


手刀と剣が交わる中、お互い殺気を出して相手を威圧する。


そんな時。


「たくやさん!加勢します!!」

「ご主人様をお守りなのです!」

「女の子に酷い事しようとするなんて、許せないからね!!」

「ここで殺すわ、マイフ。あ!あなた様!わたくしはここにいますよ!」


後方からアンジェ、ニナ、ミュラ、ミシアが客席から降りて俺の方へ向かってくる。


俺が思い切り腕に力を入れて、相手を押し返すと、マイフは少し飛んで後ろに下がる。


その間にアンジェ達が俺の横に並ぶ。


「来たか、皆!」

「当たり前ですよ!もう試合じゃありませんからね!」

「これって俗にいうエキシビションマッチってやつ?でも、相手がやばすぎだけどね~」


アンジェとミュラが戦闘態勢に入り、俺の言葉に返答する。


だが、俺の元に来たのは彼女たちだけではなかった。


「ゆけ!」


女性の声と共に、クリスタルの物体が飛び回り、マイフに向かって細く赤い魔法の閃光を放つ。


その赤い閃光をマイフは手で受け止めて払う。


ジジイに攻撃を仕掛けたのはあいつだ。


「私も参加しよう。彼女に死なれては、リベンジできないからな」

「べレイ?ティニーに負けて、意気消沈してると思ってた」

「たわけが。そこまでヤワではないわ」


ピンク髪を揺らして俺の前に立つべレイは、何故かしらやる気に満ちているようだ。


マイフがパッパッと服を払い、眉間に皺を寄せてこちらを睨む。


そして、マイフはおもむろに右手をこちらに向け、黒い三日月形の衝撃波を放つ。


皆がジジイの遠距離攻撃に身構えている中、突然俺達の目の前に透明な六角形の多重バリアが展開され、その防御魔法によって阻まれ、衝撃波は届くことなく霧散する。


「僕も加勢します」


後方から少年の声が聞こえ、振り返る。


そこには

「えっとー、ノイエ・・・だっけ?」

「はい。・・・昨日は守って頂いてありがとうございました。恩返しさせてください」

「ありがとう。まあ、無理するなよ」


昨日シオと戦っていた時と、少しだけ雰囲気が変わったように見える。


挫折を味わったゆえの事なのか、舐めたような態度は無くなっているように感じる。


その様子を見て、忌々しそうに見るこちらを睨むマイフだったが、ふと何かに気付いたように数回後方へ飛ぶ。


マイフが立っていた場所から打撃音が数回鳴り、地面が数か所抉れているように見える。


要は見えない攻撃だ。


「・・・やあ」


現れたのはゼターだった。


彼は少し歯切れの悪そうな顔をしながら、俺らに近づいてくる。


「ゼターじゃん」

「ああ。・・・その、すまなかった。僕は、君を軽視していた。それだけじゃない、僕自身本当は余裕がなかったんだ。だから強く当たり、君を目の敵にしていた。だが、目が覚めたよ。君の決勝戦を見て、嫌でも思い知らされてしまった。僕は、天才ではないんだってね」

「そっか。まあ、もう過ぎたことだし別にいいよ」

「・・・感謝する」


ゼターは俺に頭を下げ、自らの非を認めた。


まー改心したことはいい事なんじゃないかな?


ゼターから視線を外す。


ん?え、これって?


気が付くと、俺達の周りには大勢の人が加勢に加わっていた。


そう、今まで戦ってきた大会参加者たちの姿。


アリーナには参加者たちが大勢集まり、全員がマイフを倒そうと奮起しているのだ。


「ここで、負けた時の借りを返してやらねえとなあ!」

「僕のデータでは・・・こんなデータ無いぞ!?」

「まさか、この大会の最後でこんな大きなイベントが起きるとは」

「ま、魔王の幹部なんて、どうなってるんだ!?」

「賭けに負けた分、ここで鬱憤を晴らしてやるぜ!!」

「女の子に乱暴はさせないわよ!」


各々が勝手にセリフを吐いていく。


彼らは、まだ自分の大会が終わっていないかのように、闘志を燃やして幹部に立ちふさがる。


アリーナ内には百人を超えた戦士が集っていたのだ。


これが、昨日の敵は明日の友ってこと、なのかなあ。


アリーナに集う俺達の姿を右から左へ眺めるマイフは、「はぁ」と再びため息をつく。


諦めた為の溜息なのか、この状況をばかばかしく思ったのかは分からないが、先ほどまでの殺気は感じられない。


「どーする?俺ら全員と1人でやるか?ぜってえ負けねえぞ?」


俺の言葉を受けたジジイは「フフ」と少し苦笑し、形だけの笑顔を向ける。


「やめです。戦っても良いですが、やる気がそがれました。これなら、最初から魔物の大群と他の幹部や配下を引き連れてくれば良かった」

「それでどうするんだ?この人数相手に逃げ切れると思ってんのか?」

「不本意ですがね。まあ、魔王様完全復活の日は近い、とだけ伝えておきましょうか」


アリーナにいる大会参加者が一斉にマイフへと進軍する。


しかし、彼らの足を止めるように、大きな黒い壁が出現し、マイフの姿が見えなくなる。


「さようなら皆さん。来たる時を、震えて待っていてください」

「おい待て!」


俺は『縮地』で全力疾走し、大人数の参加者の間を次々避けて、黒い壁に向かって剣を突き立てて破壊する。


パリン、とガラスのように壁が割れたのだが、もうそこにマイフの姿はなかった。


しかし、大会参加者たち的にはそれが喜ばしい事だったようで、「うおおおおおおお!!!」と全員が大声を出して、喜びを分かち合い始めた。


いや、至近距離でうるせー!


・・・まーあれだな、魔王軍の幹部を追い払ったことがさぞかし嬉しいんだろうね。


ともあれ、魔王軍幹部が去り、大会に終わりが告げられた。


多少不安が残った結果ではあるけど、終わったから良しとしようか。



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