表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セ・パ・タ・!  作者: 日並うたたね
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/22

第19話 月曜日のメガネ君

週末の余韻が残る、月曜日の昼休み。

教室の自分の席で、寺田はため息をつきながら弁当をつついていた。


寺田「……どう考えても、今週の土曜日は無茶だろ」


染谷「そうか? 俺の実力を測るには、これ以上ない舞台だと思うが」


向かいの席で、染谷は涼しい顔をしている。


寺田「お前だって、この間の坂下さんの反応見たろ」


染谷「・・・」


**********


__百山びゃくざんだ』


先週の金曜日、夕闇の部室で宮下から告げられたその名前に、坂下は絶句した。


坂下「な、なぜ百山なんですか……!?」


宮下「俺の大学時代の友人が、あそこで顧問をやっててな。そいつも昔セパタクローをやってたんだよ。で、日本での普及のためにも、新しい連中が入ってくるのは大歓迎だって言ってくれてな」


坂下「普及って……そんな、いくらなんでも......」


宮下「まあ、細かい詳細はまた来週話すわ。じゃあな」


面倒くさそうに頭を掻きながら、宮下はさっさと部室から姿を消してしまった。


寺田「おい大地……なんで坂下さん、あんなに顔色変えてるんだよ?」


染谷「……俺がこの前作ったセパタクローの動画……確かあそこに映っていた。その中でも........一番上手かったやつらだ」


寺田が恐る恐る振り返ると、そこには今までに見たことがないほど真剣な__まるで盤面を見つめる棋士のような、険しい目をした坂下が立っていた。


坂下「……今日は、もう遅いから帰りましょう」


それだけを言い残し、彼女は足早に帰っていった。


**********


寺田「それから今日まで、坂下さんずっとあんな顔してるだろ? 話しかけづらくてしょうがねえよ……」


染谷「思考の海に深く潜っているのだろう。常人には立ち入れない領域だ」


二人がそんな会話をしていると、教室の空気が少しだけざわついた。


(なあ……染谷君と坂下さん、なんか新しい部活作ったんだって?)

(なんか屋上で変な儀式してたらしいけど)

(話しかけたい........でも、尊過ぎて無理だ)


成績優秀、おまけに(黙っていれば)容姿端麗な染谷と坂下。さらに「屋上での謎行動や、不可思議な部活を作った」という噂も広まり、クラスメイトたちからは『高嶺の花』以上の存在として、遠巻きに見られている状態だった。


「やあ。ちょっと、いいかな?」


そんな見えない結界を、一切の躊躇なく踏み越えてきた声があった。


寺田「え? お、おう……」


クラスメイトたちが(おい嘘だろ!?)と心の中でツッコミを入れる中、丸眼鏡をかけた気の弱そうな男子生徒__安代やしろが、ニコニコと笑いながら前の席に座った。


安代「立ち聞きするつもりはなかったんだけど、聞こえちゃって。君たちが作ったのって、セパタクロー部だよね?」


染谷「……ほう。知っているのか」


安代「うん、まあね。珍しい競技だけど、最近は日本でも少しずつ競技人口が増えてるみたいだね。……ちなみに、3人は経験者なの?」


寺田「いや、俺と大地(染谷)は完全な素人。坂下さんは……よくわかんねーけど、とにかく急造のド素人チームなんだよ。それなのに、今度の土曜日にいきなり強豪校と練習試合組まされちゃってさ。マジでムリゲーだろ……」


安代「へえ、土曜日に練習試合……。相手はどこなの?」


寺田「百山びゃくざん高校ってとこ」


その名前が出た瞬間、安代の眼鏡の奥の目が、ほんのわずかに見開かれた。


安代「……百山かー。もちろん知ってるよ。あそこはバレーの超強豪校だしね」


寺田「バレーの?」


安代「うん。実は僕、中学時代はバレー部のマネージャーをやってたんだけど……昔、あそこのデータを取るために、こっそり体育館に侵入したことが__」


寺田「……え? 今、なんて?」


寺田が素っ頓狂な声を上げると、安代はパッと爽やかな笑顔に戻った。


安代「あ、いや! でも、それは大変だね!」


寺田「お、おう……?(なんか今、とんでもないこと言ってなかったか?)」


安代「急造チームで百山か……。うん、怪我だけはしないようにね。それじゃあ、また」


安代はひらひらと手を振って、自分の席へと戻っていった。


(土曜日に、百山高校……か)


彼は誰にも気づかれないように、小さく微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ