第三章:奪う者たち
薬草は売れた。
金を生んだ。
そして――
「……来たな」
フランは城壁もない領地の外を見た。
土煙。
旗。
鎧の光。
■ 宣戦ではなく“通告”
騎馬が一騎、前に出る。
「この地は、我が主の保護下に入る」
使者は高圧的に言い放った。
「薬草の採取・販売は、すべて我が領が管理する」
つまり――
「奪うってことか」
「保護だ」
フランは笑った。
「同じ意味だな」
■ 敵の正体
老人が震えた声で言う。
「……隣領のバルディア伯です」
兵はおよそ五十。
そしてこちらは――
「戦えるのは、十人」
■ 村の現実
十人。
それがこの領地の“全戦力”。
元傭兵が二人。
狩人が三人。
あとは、鍬を握っていた農民。
装備もバラバラ。
訓練もない。
普通なら――終わりだ。
■ だがフランは違う
「十分だ」
フランは言い切った。
「正面からは戦わない」
「これは戦争だが、“戦場”は選べる」
■ 役割分担
フランは十人を見渡す。
「お前らは“兵士”じゃない」
「“仕掛ける側”だ」
・狩人 → 索敵・誘導
・元傭兵 → 要所の防衛・指示
・農民 → 罠の設置・地形操作
「戦うな。崩せ」
■ 地形を使う
「山を使う」
細い道。
急な斜面。
見通しの悪い森。
「ここは“攻める場所”じゃない。“迷う場所”だ」
■ 第一の罠
夜。
十人で水路を一部崩す。
ぬかるみを作る。
見えない足場。
馬は滑り、人は転ぶ。
「正面の力を“無効化”する」
■ 第二の罠
薬草を加工する。
「煙だ」
狩人が頷く。
「風向きは任せろ」
燃やすと、強い刺激臭。
目が開かない。
呼吸が乱れる。
「十人でも、“範囲”は作れる」
■ 第三の罠
「情報だ」
フランは言った。
「俺たちは“見えている側”だ」
狩人が動く。
偽の道を教える。
崩れた橋へ誘導する。
敵を分断する。
■ 開戦
バルディア伯の兵が侵入する。
「進め!」
だが――
「なんだこの道は!?」
ぬかるみ。
転倒。
隊列が乱れる。
■ 十人の戦い
「今だ」
フランの合図。
煙が焚かれる。
「煙だ!!」
白い煙が森に広がる。
「ぐっ……目が……!」
「息が……でき……!」
■ 見えない攻撃
石が飛ぶ。
狩人の投石。
上から。
横から。
元傭兵が短く指示を飛ばす。
「固まるな、散れ」
十人が、影のように動く。
■ 分断
「隊長がいない!?」
敵はバラバラになる。
十人に対して五十。
だが――
“戦場”が違う。
■ 心が折れる
「撤退だ!!」
誰かが叫ぶ。
それは一人から、全体へ伝染する。
兵は逃げ始めた。
■ 追撃しない
「追うな」
フランは止めた。
「ここで終わらせる」
元傭兵が頷く。
「……十分だな」
■ 戦後
十人が戻る。
無傷ではない。
だが――立っている。
「……勝ったのか?」
農民の一人が呟く。
フランは答える。
「ああ」
「十人でな」
■ 意味
「数じゃない」
フランは静かに言う。
「“どこで戦うか”だ」
■ だが終わらない
「報復が来ます」
「ああ、来るな」
「次はもっと多い」
十人が黙る。
■ フランの決断
フランは地図を見る。
「じゃあ増やすか」
「……兵を?」
「違う」
■ 宣言
「“戦えない人間”を、戦力にする」
村人が息を呑む。
「この領地、全員が兵になる」
女も、老人も、子供も。
運ぶ者。
作る者。
隠す者。
騙す者。
すべてが戦力になる。




