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30 パーティ名

30


あれだけ、散々、方々に相談をしておいて、俺がパーティメンバー拡充に関して決めたことと言えば「急がない」ということだった。


なるほどメンバーは人に限ったものでなくともよい、とアンナの発言からブレークスルーには至ったものの。


とはいえ、えにしてきにグレイスとアンナと出会った俺にとって、じゃあどこにいけば人外と出会えるのか、と問われれば首を傾げるしかなく。


結果“保留”という都合の良い決済で今は棚に上げておくことにするしかなかった。


「ガルドさん、どこかに俺に好意的で有能で便利な能力を抱えた協力的な人外は転がってませんかねぇ?」


「お前がそんなに無茶苦茶なボケを言うのも珍しいよな。普段ツッコミだろ、たろー」


なんて。

この世界にもボケとツッコミの概念があるのは先人の稀人のおかげか、なんて関係の無いことを思った。


「まぁ冗談です。それでなんですか、俺に話しとは」


ガルドさんに呼び出されて、ギルドに来ていた。

雪がそろそろ本格的に積もり始めている。

蒸気を動力とするこの魔装都市だから雪が積もりインフラが止まることはほとんどない。

が、それでも多少積雪で行動しにくいのは正直な所ではある。


「まずはこれだ」


とカウンターの引き出しから一枚のカードを取り出したガルドさん。

お、やっとか。


「お前の新たな冒険者カードだな。おめでとうたろー。ブロンズランク昇格だ」


受け取ると、上の縁の部分に銅色の編みかけ。

鈍く光るランクの証しが。


「ありがとうございます。おかげさまです」


「そろそろよぉ、パーティ名も考えといてくれや。お前ずっと稀人とか変態メイド付きとか呼ばれてんぞ」


くわっと周りを睨むと、幾人かがサッと眼を逸らした。

事実だ。事実だが!

今眼を逸らした奴、顔覚えたからな。


「パーティ名ですか」


「ギルドとしても呼び名があれば管理しやすい面もある。共闘を呼びかける際にも、たろーの事を紹介するより名前で一発でわかるぐらいになれば、箔もつくってもんだ」


なるほど、要は会社名、みたいなものか。

個人名よりはよっぽどイメージ訴求がスムーズなのは確かだな。


「わかりました。考えておきます」


頼むぜ、なんて短い言葉は、ガルドさんらしくない。

他にも何かあるって事だな。


「流石察しがよくて助かるぜ」と前置きを置きつつ、奥の個室を指差した。

人がいる手前で話せる話はおしまい、ということかな。



「で、なんです?大っぴらに話せないこととは」


「悪ぃ悪ぃ。たろーは話が早くて楽でいいわ。ダンジョンのことだ。『魔鉱』の方な」


少し、ピリつく。

アンナも後ろで背筋を伸ばし直した気配があった。


『魔鉱』現在ギルドにて封鎖されている、魔装都市ヘイルニルの二大ダンジョンの一つだ。

俺が魔王城まで堕ちた原因、ダンジョン崩落の調査と安全性の確認の為に上位冒険者が探索中、とのことだったが。


「探索が済んだ。じきに解禁される」


約半年、になるのか。

それほどまでダンジョンが閉じられるのも異例だったそうな。


「そこで、だ。解禁の前に各冒険者ランクの主だったものに探索を依頼し、現在のダンジョン内の細かな意見を募る事になっている」


なるほど、つまりテストプレイとデバック作業が残っている、と。


「で、ブロンズ成り立て、でしかもダンジョンの造形深いアンナが従魔のお前にお鉢が回ってきたってこった」


「俺が?潜っていいんですか?」


ガルドは力強く頷いてみせる。

豪快に笑うのも加えて、俺の肩をバンバンと叩く始末。


「状況分析力や評価の整合性も含めて俺が推薦した。グレイスの索敵能力も捨てがたい。かなり適任だろ」


ありがたいことだ。


「それにお前最近パーティメンバー拡充で難航してるだろ?そういう時はな、動くのがいいんだよ。へーこら考えていても上手くいかないときはある」


これ以上ない経験者の言だ。

重みが違うな。

正に俺もそう考えていた所だったのもある。


これは、渡りに船かな。


「だが気をつけてもくれ。俺としてはもっと時間をかけて調査した方がいいと思ってるんだがな。『魔鉱』が閉じたことで都市内で流通する魔石の価格も上がっているし、国への不満も蓄積しているんだわ」


魔石は、いわばガソリン代みたいなイメージかな。それとも電気代、みたいな。

魔導具は魔石の魔素を使って稼働するものだから、それの供給源のストップは即ちインフラ価格の高騰に繋がるわけだ。


ギルドも割と社会に少なくない影響力があるのも頷けるというものだな。


「わかりました。時期はいつごろでしょう」


「詳しいことは使いをやるさ。たろーハウスには疾風の奴らも詰めてるんだろ?あいつらも対象だから都合がいいわ」


「……やっぱりその名前で呼ぶのやめませんか?」



帰り道すがら、アンナとの話題はやっぱりパーティネームの話になった。


「なにか良い案あるか?」

「とっておきの提案がありますわ」

「(期待してないけど)聞かせて貰おうか」

「ご主人様万歳チーム!ですわ」

「聞いた俺が馬鹿だったわ(ははっ、良い名前だな)」

「本音と建前が逆転していますわ!!」


なんて、冗談はさておき。

ネーム、パーティネームねぇ。

俺はネーミングセンスはからっきしなんだよなぁ。


暗黒世代ダークマタージェネレーション』とか、『黒の魔術師ブラックマジシャン』とかもええかな。

……あっかん厨二病すぎる。

言ってて自分で恥ずかしくなってきた……


これは誰かに意見もらうか。

そうしよ。

俺とアンナは絶望的過ぎる。


短絡的に、疾風の皆様に丸投げしよう。

と俺は歩くスピードを上げた。



◇◇◇


「ということで、お集まり頂きました皆様には我々のパーティネームの案を募りたいと思います」


拠点に戻ると都合よく疾風の皆様もリビングで寛いでいた。

この人たち最早いつもいるよな……


なんて疑問は傍に置いといて、早速本題である。

俺とアンナが絶望域なのは事前に説明しておいたが、はてさて。


ラルスさんが一歩前に踏み出した。

お、なにやら自信ありげとみた。

しかしこの人は『たろーハウス』の前科があるからなぁ。


「私に任せてもらおう。その名も!『押忍!魁!たろー塾!』」


「……レンさん、この人黙らせてください」


わかったよ、と渋々ラルスさんの首根っこを掴み引き下げるレンさん。

うん。

多少責任を感じてもらわないと。


「ふっふっふ。ラルスはダメだったようだな。しかし彼奴は疾風において最弱!俺の案を聞いてもその態度崩さずにいられるかな!?」


お、今度はゴードンさんか。

なんかグレイスを膝の上に置き、撫でながら凄んでらぁ。

この人キャラ安定しないなぁ。


「聞け!俺が考えた案を!その名も『モッフモフは可愛いな!』だ!」


「……レンさん、お願いします」


わかってるよぉ、と渋々ゴードンさんの首根っこを掴んで引きずるレンさん。

貴方だけが頼りです。


「なんかすごい期待値が上がってる気がするんだけど……」


レンさんの冷や汗がすごい。

ゴールドランク冒険者をここまで焦らせるのも、ある種すごいこと、なのか?

内情はただの大喜利大会だけど。


「ひとまず冷静に考えない?僕そういう一発狙ってボケるのしんどくて……」


いいんです!レンさん!

貴方はこちらツッコミでいて下さい!


「そうですね。普通に考えるならパーティメンバーの特徴とか、全員が目指す夢、とかが無難でしょうか?」


「そうだね。僕らだってラルスの二つ名『疾風』をそのまま使っているから。シンプルなのがいいと思うよ」


疾風ってラルスさんの二つ名だったんだな。

『押忍!魁!たろー塾!』のラルスさんが疾風……?

……やばい、ギルドの人達には黙って置こう。

黒歴史になりかねん。


ラルスさんも立ち直り真剣に意見してくれる。

この人最初の印象とだいぶ変わったよなぁ。

「単に稀人や従魔という特徴を絡めるだけでもいいな」


名前だからな。アイコン的な物がいいか。

イメージ訴求ねぇ。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


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