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追放された元宮廷魔導士、魔法を再定義して最強国家を築く  作者: 一月三日 五郎


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外伝:神の不在と、無能たちの晩餐

外伝のお届けです。

本編ではアレスの視点でしたが、こちらは『アレスに捨てられた側』の末路を描いた、濃密なざまぁエピソードとなっております。

本編の裏側で何が起きていたのか、ご覧ください。

 その日、エルディア王宮の食堂には、場違いなほど豪華な食卓が整えられていた。

 

「……これで、よし。アレスさえいなくなれば、宮廷の予算は我々の思いのままだ」


 贅肉を震わせながらワインを煽るのは、財務副大臣のデニスだ。彼はアレスが「研究費の横領」という罪を着せられた際、最も熱心に偽造書類を作成した男だった。

 

 テーブルを囲むのは、アレスの追放を主導した貴族たち。

 彼らはアレスが去ってから三ヶ月、自分たちが「魔法の恩恵」を独占できるようになったことを祝していた。


「全く、あのアレスという男は生意気でした。魔法を効率だの数式だのと言い換えて……。魔法とは我ら選ばれし貴族の権威を示す装飾であらねばならんというのに」


「左様。彼が残した結界の術式も、我ら宮廷魔導士の手にかかれば、より華やかで威厳のあるものに書き換えられます」


 新しく魔導士団長に収まった男が、得意げに胸を叩く。

 だが、その時。

 食卓の中央に置かれた「魔導式の調温器」が、不気味な火花を散らした。


「……? なんだ、故障か?」


 パキィィィィィン――!


 乾いた音と共に、王宮の窓ガラスがすべて一斉に割れた。

 同時に、常に心地よい温度に保たれていた王宮内の空気が、凍てつくような寒気に一変する。


「な、なんだ!? 何が起きた!」


 デニスが叫んだ瞬間、床に描かれていた金色の魔法陣がドス黒く変色し、激しい異臭を放ち始めた。


「報告します! 王都の浄化システムが逆流! 飲料水が下水に汚染されました!」

「結界維持班より伝令! 術式に未知のエラーが発生! 制御不能です!」


 次々と飛び込む悲報。

 アレスが去り、彼が構築した「自己修復アルゴリズム」に、無能な魔導士たちが「祈り」というノイズを注ぎ込み続けた結果だった。


「アレス……アレスを呼べ! 奴に直させればいい!」


「陛下、アレスはもうザルツへ追放されました! そもそも、彼を反逆者にしたのは我々ではありませんか!」


 パニックに陥る食堂。

 だが、真の絶望はそこからだった。


 ――ズズズ、ズズズ……。


 王宮の壁を突き破り、どす黒い霧が流れ込んでくる。

 それは結界が消失したことで、王都の魔力密度に惹きつけられた魔獣たちの「先触れ」だった。


「ひ、ひぃぃぃっ! 近衛兵! 私を守れ!」


 デニスは逃げようと扉に駆け寄ったが、その足が止まった。

 扉の先にいたのは、魔獣ではなかった。

 

 アレスが改良した「自動扉」が、不完全な魔力供給によって暴走し、凄まじい速度で開閉を繰り返す「処刑機械」へと変貌していたのだ。


「そんな……あいつが作った道具が、なぜ俺たちを襲うんだ……!」


 当然だ。アレスが維持していたからこそ、それは便利な道具だった。

 保守管理メンテナンスを怠り、原理も理解せず、ただ甘い汁を吸おうとした彼らにとって、高度な魔導技術はただの「牙を剥くバグ」でしかない。


「アレス……アレス様……! お願いだ、戻ってきてくれ! 何でもする、爵位も金もやるから……!」


 デニスの絶叫に、答える者は誰もいない。

 

 ふと、割れた窓の向こう、遥か彼方の空を見れば。

 そこには、アレスがたった一人で作り上げた、ザルツの「光」が小さく、しかし傲然と輝いていた。


 エルディアの貴族たちが、自分たちの積み上げた強欲と無能の瓦礫に押し潰されていく中。

 

 アレスが去り際に残した「どうか健やかにお過ごしください」という言葉が、呪いよりも深く、彼らの耳底に響き渡った。

いかがでしたでしょうか。

メンテナンスを怠ったシステムの暴走ほど怖いものはありませんね……。

この外伝をもちまして、一旦すべての更新を終了いたします。

ブックマークはそのままでお待ちいただけると、今後もし番外編や新連載のお知らせがある際、いち早くお届けできます!

それでは、また別の物語でお会いしましょう!

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