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第98章「幻影劇場で爆死!? 夢舞台の奥に潜む悲劇」

 「魔王との契約がダメだった? まあ、そりゃひどい爆死だったようだが、懲りるわけにゃいかねえだろ。今度はもっと“華やか”に攻めてみるつもりだ……そう、劇場だよ、劇場! だがただの舞台じゃありゃしない。『幻影劇場』という、とびきりの新ビジネスを作り上げりゃ、客が大挙して押し寄せて大儲けできるに違いない。爆死のループ? そろそろ卒業したいもんだな!」



 焦げ跡だらけの王都外周。八十回を超える大爆死を重ねても、なぜか生き残り続ける黒峰銭丸が、いつもの仲間——水無瀬ひかり、バルド、メルティナ——を相手に新たな無謀を提案していた。誰もが「いい加減にしろ」と思いながらも、彼を止めるカードを持たないのが毎度のこと。今度は劇場ビジネスらしいが、果たしてどうなるか。


 「幻影劇場って……聞いただけじゃ、なんだか怪しい響きですけど。どうせただの演劇じゃなく、魔導とかホログラムを混ぜて盛り上げるつもりなんでしょう?」

 ひかりが書類を睨みつつ問いかけると、銭丸は得意満面にうなずく。


 「さすがに俺も“普通の劇場”で満足なんてしねえ。ここまで何度爆死したと思う? 逆にそのノウハウを全部ぶち込むんだよ。電脳の残骸、魔法陣の演出、愛の結晶のイリュージョン、過去の何もかもを取り込んで、観客に現実と見まがうような夢のステージを提供する。そりゃあ客は金を出すだろうし、俺は稼ぐ。爆死なんて、もうこりごりさ!」


 バルドは苦々しい顔のまま「毎度それを言って最後に爆死するのにな……」と漏らし、メルティナは「演出用に魔導具を大量に使うなら、大暴走のリスクが高いです」と止めようとするが、銭丸は「まあ細かいこと気にすんな!」の一点張り。



 こうして始動したのが「幻影劇場プロジェクト」。王都の廃墟めいた場所に大規模な劇場を建設し、その内部にはホログラムと魔導仕掛け、さらには銭丸が過去に使いこなせず爆死を呼んだ数々の装置を再利用して、観客に超現実的な体験をさせようという。

 舞台では、竜のブレスや精霊の花火、神の玉座めいたセットを繰り出して観衆を驚かせ、最後には“銭丸の主演”で壮大な芝居を見せる算段らしい。ひかりは「あなたが主演って……大丈夫なんですか?」と気が遠くなりそうな顔。バルドは「観客を巻き込むのがオチだろう……」と呟く。


 建設工事が始まると、例によって闇金からの資金やギルドの人員を引っ張り、豪華な円形ステージを形成。観客席には魔導リフトや噴水が設置され、舞台下には電脳サーバー(廃棄品)や魔王封印の破片、輪廻皇帝の祭壇など謎の残骸を詰め込む。メルティナは「どう考えても危険物が多すぎる。ロクに絶縁もされてない」と嘆くが、銭丸は「それが演出に生きるのさ!」と喜々として答える。



 いよいよオープンの日、銭丸は派手なチラシと看板で王都を煽り、「未曾有の迫力と感動を味わえる劇場!」と高らかに宣伝。興味を持った貴族や冒険者、観光客が大勢詰めかける形となった。劇場の外観はやたらとキラキラし、入り口でバルドが「どうかお気をつけて……」と不安そうに声をかけ、ひかりとメルティナは制御室でスタンバイする。

 なんと銭丸が“自ら主演・監督”を務める舞台を用意しており、タイトルは「輪廻を超えて爆死しない男」。誰がどう見ても“自分の話”そのままじゃないかと思うが、銭丸は「今までの失敗を劇にして笑い飛ばし、新しい結末を迎えるんだ」と説明する。


 最初の幕が上がると、観客は魔導ホログラムと光の演出に驚嘆する。竜の亡霊が舞台を旋回し、電脳のデータが空中に浮かんで文字列を描き、愛の結晶めいた幻影がパッと華やぐ。舞台中央に現れた銭丸の姿を見て、皆が拍手や歓声を上げ、「意外に面白そう」と沸き立つ。ひかりが裏で「今回こそ上手くいくかも……」と、つい期待を口にした瞬間、バルドとメルティナが顔を曇らせる。「フラグが立ったかもな」と。



 第二幕が進むころ、舞台では銭丸がかつての海底リゾートや空中列車の爆死を寸劇にして再現し、ギャグ調に描く。客は大笑いして「よくここまで自虐できるなあ」と感心するが、やがて装置が負荷を抱え始める。過去の残骸をそのまま使っているせいで、あちこちで火花や異音が走り、メルティナが緊急停止を試みようにも観客席の盛り上がりを見た銭丸が「続行だ!」とゴーサインを出す。

 冒険者たちが「このステージ、いつ爆発してもおかしくないんじゃ……」と小声で噂し、ひかりはビクビクしながら制御端末を眺め、バルドが舞台裏を駆け回って事故対応を続ける。


 最終幕、銭丸はついに“輪廻卒業の劇中劇”を演じる場面を迎え、そこに凝縮した魔導エネルギーをぶち込んでド派手な演出に挑む。竜の咆哮や花火、電脳のビジョン、神の玉座のようなセットが一挙に動き始め、舞台は千紫万紅の狂騒へ。客が「うおお……すごい!」と喝采を送るが、内部の装置は一斉に悲鳴を上げ始める。

 案の定、魔導炉がオーバーロードし、電脳サーバーがショートを起こし、竜のホログラムが暴走して炎を噴き……といういつもの兆しが満載。メルティナが「もう限界!」と叫ぶが、人が多すぎてすぐには避難できない。



 決定的瞬間は、銭丸が舞台の頂点で「ここで俺は爆死から脱却する!」と高らかに宣言した時。装置が一気にピークへ達し、一瞬にして火花と雷光が舞台全体を包む。観客が悲鳴をあげる中、足元がドーンと割れ、スモークや炎が吹き上がる。

 バルドが駆け出し、「銭丸、やめろ!」と制止しようとするが届かず、銭丸はすでに“いつもの”ラストシーンに向かうところだった。彼が台詞を発する――


 「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。幻影劇場は……爆死ッ……!!」


 すると、猛爆音が館内に響き、魔導炉が爆発を連鎖させ、ホログラムが暴走し、竜や花火の幻影まで実体化したように周囲を吹き飛ばす。天井がぶち破れ、舞台裏が火柱に包まれ、数百人の客とスタッフが雪崩を打って外へ逃げる惨状に。銭丸はステージ中央で炎に巻き込まれ、まるで高く舞い上がるように吹き飛んで消える。



 翌朝、劇場は新装オープン初日で閉幕——というより廃墟と化している。燃えカスと焦げた観客席が転がり、その下には大量の機材の破片が散乱。銭丸の姿はやっぱり無く、「あの大火と爆発じゃさすがに……」とみなが囁くが、彼の爆死に対するエピソードを聞けば「いや、あの男なら」と苦笑する。

 結局、“幻影劇場で華々しく再出発する”という壮大な演目も、見事に大爆死の一夜にして終わる。観客たちも巻き込まれ、被害者は多いが、もう王都の連中すら驚かず、「いつもの銭丸だ」「何度目だろう……」と語り合うのみ。出資者は泡を吹き、出演予定だった俳優も呆然。

 こうして「劇場」という華やかな場所でさえ、銭丸の手にかかれば爆死で締めくくられる運命。もはや輪廻の尽きる先を探す術もなく、また新たな廃墟だけが王都に増えた形だ。二度とこの劇が上演されることはないだろうが、銭丸本人の生死に関しては、いつも通り誰も確信が持てないというのがオチ——今後もループが続くか否かを、また人々は苦い顔で見守るばかりだ。

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