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第66章「世界樹伐採で爆死!? 緑の秘境が呼ぶ破滅」

 「空や海も散々やり尽くしたし、深海にだって沈んだけど、まだ“陸上の秘境”が残ってるよな? 特にあの《世界樹》と呼ばれる巨大樹が生い茂る森なら、観光名所としても商業資源としても最高のはずだ。そこを開拓すれば大当たり間違いなしだろ!」



 黒峰銭丸は、王都の地図室でまるで宝物でも発見したかのように指さし、持ち前の大声でそう言い放った。周囲にはいつものメンバー——水無瀬ひかり、バルド、メルティナ——がいるが、誰もが嫌な胸騒ぎを覚えている。なにせ彼らは海底や月面ですら爆死オチを迎えた男の無謀な企画を、何度も見せつけられてきた。そんな銭丸が今回は“世界樹”に目をつけたとなれば、また一波乱どころか大災害が起きかねない。


 「世界樹って言ったら、伝承では“大地の精霊が宿る”とか“伐れば大地の力が乱れる”とか、よくわからない神秘性を持ってるでしょう? 勝手に大規模に切り開いていいんですか?」

 ひかりが冷静に尋ねると、銭丸は「そこを魔導研究所が確認してくれた。大きな樹だからって全部が神聖じゃないらしいし、樹木が豊富な土地を切り開いて工業や観光を発展させれば、大儲けできるさ」と言って笑う。彼の目には“伝説の大樹”が放つ神秘よりも、そこに埋もれた潜在的な観光・木材ビジネスの方が魅力的に映っているようだ。



 こうして「世界樹開拓プロジェクト」が始動する。場所は王都から馬車で数日行った先の深い森、その中心にそびえる“世界樹”を含む密林地帯だ。驚くほど巨木が生い茂り、木漏れ日ですら幻想的だと言われているが、同時に瘴気めいた空気や精霊の威嚇があるとも噂される。

 バルドが伐採隊や警備隊をまとめ、メルティナが環境調査を行い、ひかりは資金や交渉などの事務を一手に引き受ける。ちなみに地元の住民は「世界樹は切れば祟りが起きるからやめろ」と口をそろえて忠告するが、銭丸は「そんなオカルトを信じてたら爆死から抜け出せん」と一蹴する。


 まず、伐採の拠点となるキャンプを森の外縁に設置し、重機や魔導ゴーレムを投入して木を切り開く作業がスタート。巨大な木々が次々倒され、広場のような空間ができると、そこへ工事資材やテントが運び込まれる。村人や自然派ギルドが抗議の声を上げても、銭丸は「経済を回すためだ」と強引に作業を継続。バルドの隊も地元の反対勢力を安全に排除する形で警備を固める。

 メルティナが森の奥を調査すると、大小の精霊が住みついている痕跡や、結界じみた自然魔法が感じられる箇所があって「やはりこの森は普通じゃない」と報告した。だが銭丸は「すごいな。観光資源になるじゃないか」と、それを逆手にとってさらにモチベーションを燃やす。ひかりは頭を抱えるしかない。



 やがて森のかなり深いところまで道が切り開かれ、巨大なクレーンやゴーレムが大木を運搬して外へ持ち出すようになる。材木の質は超高級で、床材や家具材としても最高、さらには世界樹系の枝葉は特殊な魔導力があると重宝される。あっという間に商人の注文が殺到し、銭丸は「ほら、やっぱり当たったろ?」と喜びまくり。

 メルティナは光と闇が混ざったような瘴気レベルを観測し、森の奥には“本体の世界樹”が屹立していると推測するが、そこを切り倒せば莫大な木材と伝説級の魔導素材が手に入ると銭丸は信じてやまない。「祟りなんかあるもんか。爆死なんかもう沢山だ」と強気一本だ。


 バルドたちが警戒を続ける中、森の奥から不気味な鳴き声が聞こえたり、作業員が眠り病のように倒れたりと怪現象が少しずつ報告される。ひかりが「こんなにアラートがあるのに大丈夫なんですか?」と尋ねても、銭丸は「ちょっと自然が荒れているだけさ。その分、観光客がワクワクする材料になる」と一向に気にかけない。



 そしてついに、“本体の世界樹”があると言われる森の中心へ向かう大伐採が始まる。現場には熱意を持ったギルド員やゴーレムが集まり、チェーンソーや魔導のこぎりで大量の木をなぎ倒して進む。しかし、作業が進むほど瘴気が濃くなり、メルティナが「これ以上は深部が危険すぎる」と制止しようとしても、銭丸は聞く耳を持たず、「世界樹の主幹にこそ大きな金が眠ってる」と笑う。


 ある日の朝、伐採隊が世界樹の巨大な幹の一部を見つけ、そこへ切り込みを入れようと試みた瞬間、大地が震え、大木の根本から強力な精霊の咆哮のような音が響き渡った。周囲の木々が一斉にざわざわと揺れ、空が暗転するかのような雰囲気に。

 バルドが「やめろ、何か嫌な予感がするぞ!」と止めても、銭丸が「ここまで来て引き返せるか!」と伐採ゴーレムを操作し、チェーンソーを幹に当てる。すると黒い瘴気が吹き出し、ゴーレムが硬直し、制御が効かなくなるという不気味な現象に陥った。



 同時に周囲の地面が大きく振動し、まるで巨大な根が怒り狂うかのように、地割れが発生して作業員やゴーレムが呑み込まれる。メルティナが魔法を張ろうとするが、自然の精霊力が強すぎて反発を受け、ただの火花を散らすばかり。

 ここで銭丸はようやく危機感を覚え、「全員引き上げだ!」と命じるが、すでに森の奥で道が崩れて戻れない箇所が増えている。さらに横合いから謎の魔物——木の精霊獣のような存在か——が襲撃し、伐採隊が次々と吹き飛ばされる事態に。


 この時、世界樹の幹がまるで人間の声のような唸りを発し、ガクンと大きく揺れたのを多くの作業員が目撃したという。「大樹が自ら動いた」とか、「森全体が怒ってる」と口にする者が続出。バルドは混乱する人々を必死に守ろうとするが、幹周辺が瘴気と揺れで危険すぎ、隊をまとめて脱出が困難だった。



 深部から響く低い振動音がさらに増幅していったとき、大地が崩落し、世界樹の根本が一気に沈み込むように形を変え始めた。土砂や倒木が滝のように流れ込み、中心部に巨大なクレーターが形成される。その中で黒い腐食ガスが噴出し、周囲の木を溶かすように蝕んでいく。メルティナが「こんなの想定外……」と顔を青くし、バルドが必死に救援を呼ぼうにも連絡が途絶している。

 銭丸は「しまった、どうすれば……」と動揺しながらも、とにかく作業員を避難させようとするが、道という道が崩れて水たまりや泥沼化し、瘴気の霧が視界をほぼゼロにしている。挙句の果てには大枝が独りでに動いて襲いくるかのような怪奇が起き、あちこちで悲鳴が連鎖する。


 最終的に巨大な陥没が起こり、世界樹の全体がまるで穴の底へ落ちるかのように沈んでいく。根に引きずられる形で作業員やゴーレム、そして銭丸も足をとられて崩壊の中心へ引き寄せられる。バルドがロープを投げるが間に合わない。メルティナが強引に魔法を放つが、瘴気に阻まれて力を発揮できないまま。

 銭丸は崩れ落ちる土と枯れ枝の中でもがき、結局いつものように叫ぶしかない。


 「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。世界樹伐採は……爆死ッ……!!」



 凄まじい音とともに大地がズドンと沈み、広範囲で土砂が飛び散って森を飲み込む。世界樹は深い亀裂の底へ消え去り、そこから吹き上がる黒いガスと腐敗の霧が森を半分壊滅させるほど猛威を振るう。外周にいた人々が逃げ遅れ、森を出られない者も多数。

 翌日、応援部隊が周辺を巡っても、中央一帯は大きなクレーターができ、地盤が崩落し、真っ黒い瘴気が漂って近づくことすらままならない。大木はほとんど倒れ、かつての豊かな森が無残な死の大地になってしまった光景が広がっていた。もちろん銭丸の姿はどこにも見当たらず、作業員やゴーレムも大半が行方不明だ。


 「世界樹なんて神聖なものを切ろうとするから……」

 「結局また爆死オチか。もう何度目だろうな」

 人々は口々にそう呆れるばかりで、地元の住民が嘆きながら「あれほど言ったのに」と肩を落とす。バルドとメルティナ、そしてひかりもかろうじて森の外に脱出したものの、多くの犠牲と巨額の負債、破壊の跡だけが残る形となった。

 爆死伝説を塗り替えるような大破滅を引き起こした森は、もはや回復が難しいほど荒れ果て、その名前すら後々「呪われた地」と呼ばれるようになる。こうして“世界樹を伐採し、観光や資源で大儲けする”という銭丸の野望は、土砂と瘴気の底へ沈んで泡と消えたわけだ。

 結局、どれほど壮大な計画を掲げても、神聖なものや未知の魔力に挑めば、最後は災厄級の惨事を呼び寄せるらしいと、王都の人々はまたしても思い知る。無謀な男が“爆死”を迎えるのが常だと知っていても、彼が今度こそ本当に死んだのかどうかはわからない。いずれにせよ、世界樹とともに埋まった森の中心地が、今後は近づくだけで瘴気にやられる危険区域になったのは疑いようもない悲劇だった。

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