第65章「深海神殿で爆死!? 海底リゾートの崩壊」
「海も空も開発したけど、まだ“海底”そのものを観光化した大規模事業はやってないだろ? ならば、海底にリゾートを築いて“深海観光”を売り出せば、大当たりするに決まってるんじゃないか!」
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黒峰銭丸は、王都近くの海洋研究ギルドに張り付いた地図を眺めながら、自信満々にそう言い放った。かつて彼は、海面上にメガフロート都市を作って爆死し、月へ行って爆死し、さらには人工頭脳でさえ爆死に導いた数えきれないほどの大失敗を重ねている。にもかかわらず、相変わらず飽きもせず大規模な観光や開発案を考えては、周囲を巻き込んで大騒ぎを起こしていた。
隣には水無瀬ひかり、バルド、メルティナといったいつもの仲間がそろっているが、もはや彼らも「またか……」と半ばあきらめている様子だ。ひかりは「水深が深いほど設備が高騰するし、圧力対策に莫大なコストがかかる」と冷静に指摘するが、銭丸は「大丈夫、魔導研究所の連中が“海底ドーム”の技術を完成させたらしい」と言い張る。
「海底ドームって、本当に安全なんでしょうか。魔力のかけられたガラスかもしれませんが、万が一亀裂でも入ったら水圧ですぐに押し潰されるのでは……」
「そこを俺が工夫するんだよ。ドーム構造で海底神殿の遺跡を観光地にしつつ、周りにホテルやカジノまで作れる。深海の景色は幻想的だし、古代遺跡なんかが転がってたらスリル満点じゃないか。絶対に客が殺到するぜ!」
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こうして「海底リゾート」構想が勢いづいて始動する。銭丸は海洋ギルドと魔導研究所を巻き込み、沿岸から少し離れた深い海域に“海底ドーム型観光都市”を築く計画を打ち出した。周辺には古い伝説が残る「深海神殿」と呼ばれる遺跡があるという噂があり、それを取り込めば観光の目玉となると踏んでいる。
バルドは海底建設の警備と作業員の指揮を任され、メルティナは圧力耐性や防水魔法、そしてドーム内の空気循環システムを設計。ひかりは資金のやりくりと安全対策の書類を山のように抱え、「本当に事故が起きたらどうするの?」と警鐘を鳴らすが、銭丸は「爆死なんてもう卒業だ!」と笑い飛ばすだけだった。
最初に設置されるのは巨大な“海底基盤”だ。そこに魔導と特殊ガラスで作ったドームをはめこみ、空気を入れて内部を居住空間に変える。深度は相当あり、波や天候の影響を受けにくいという利点があるものの、水圧や海底地形の不安定さが大きな課題だ。メルティナが何度も測量と実験を繰り返し、ギリギリの数値で“ドームを維持できる”と判断。銭丸は「なら行ける」と即断で工事を強行した。
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こうして工事が進むにつれ、大きなガラスドームが海底に姿を現し、少しずつ空気が充填され始める。バルドの隊が沈降設備や排水ルートを整備し、定期的に地上から物資を送り込む。密閉空間内にホテルやレストラン、カジノ施設などを整備していくと、まるで海底都市がそこに生まれるような光景が広がってきた。
実際に完成が近づいた段階で、ドーム外の風景を見ると、魚群や海底植物、青い海の光が広がる荘厳な眺めがひとつの売りになりそうだった。さらに少し離れた場所に“深海神殿”らしき遺跡の入口があり、観光客が安全に行き来できるよう水中トンネルも用意しようという計画まである。銭丸は「これはもう最強のリゾートだ」と舞い上がりはじめる。
ひかりが恐る恐る「でも深海神殿って本当にただの遺跡なんですか? 海魔や怪物が住むという噂もあって……」と言っても、銭丸は「そんなの適当に封印して観光のスパイスにすりゃいい」と軽口を叩く。メルティナが「水圧だけでも大変なのに、万が一モンスターがドームを破壊したら危ない」と苦言を呈しても、銭丸は「ありえんだろ? 海の中だぞ?」と軽く笑う。
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いよいよ海底リゾートが完成し、「深海神殿観光ツアー」としてグランドオープンの日を迎える。地上から船で来た観光客がエレベータのような装置で海中へ潜り、ドームのゲートをくぐる形で入場する。ドーム内には空気が充満し、散歩できる道やショップ、宿泊棟が並んでおり、外は透明なガラスを通して神秘的な海の景色が見渡せるというわけだ。
到着した客たちが「すごい……本当に海底に街があるんだ!」と目を輝かせ、レストランでは魚料理や深海モチーフのメニュー、カジノには海洋テーマのスロットマシンなどがずらり。銭丸は展望デッキから満足そうに客の流れを眺め、「これで爆死なんて遠い過去さ」とうなずいている。
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ところが、ある夜、ドームの外にある“深海神殿”を一部の好奇心旺盛な客が単独で探検しに行ったという話が入る。バルドがトンネルを封鎖していなかったのが失態だったが、どうやら客が勝手に鍵を破って深海神殿へ進入。そこで何かを触ってしまったらしく、翌朝ドーム内の水圧計に異常が出始める。
メルティナが調べると、神殿付近で海底が激しく揺れていて、まるで噴気孔のような温水やガスが噴き出しているという報告がある。さらにバルドの部下が確認しに行ったところ、神殿の壁に仕込まれた“封印らしき魔刻”が破壊され、そこから深海魔物が漏れ出している形跡があったと伝える。ひかりが蒼ざめて「これ以上トンネルを開ければ危険だ」と訴えるも、銭丸は「客が冒険したいと言うなら止められん」と楽観を崩さない。
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案の定、異常は一気に深刻化する。ドーム外の水圧が上がり始め、外壁の一部に小さな亀裂が走る。内部の計器が警報を鳴らし、水漏れが起きそうだという警告が上がるが、そこを修理しようにも既に大きな圧力差と、噴き出したガスのせいで視界が悪く、作業が危険な状態。研究者が「封印が解けて深海魔力が乱れてる可能性がある」と呟く。
さらに追い打ちをかけるように、ドームと神殿を繋ぐ水中トンネルを通って“深海魔物”が侵入を試みているという報告が入る。いきなりごつい甲殻の生物がトンネルを破壊し、ドームにじわじわと迫っているというのだ。バルドが急いで防衛ラインを敷くが、分厚い外殻と水圧の加勢でなかなか止められない。
銭丸は「どうにかしろ!」と怒鳴るが、メルティナが「深海神殿の封印をちゃんと研究せずに観光にしてしまったのが失敗だ」と詰め寄る。ひかりは大パニックの客を誘導し、地上へ戻すためのエレベータが足りず、大勢が出口に群がって混乱する。
「もう、ここも爆死フラグ……いや、そんなこと言ってる場合じゃない」とひかりは頭を抱えるが、事態はさらに悪化する。神殿から排出された“瘴気ガス”がドーム外壁に触れて化学反応を起こし、ガラスや魔導パネルを浸食し始めるらしい。施設中央の圧力計が赤を振り切り、水がじわじわと染み出す箇所が増えている。
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その瞬間、ドーム内のどこかで“パリン”という大きな破砕音が響き、一部の壁が崩れ落ちると同時に海水が噴き出した。軽微な破損かと思いきや、高圧の水流が勢いを増し、周辺施設を水浸しにして逃げ遅れた客たちが流される。バルドが必死に防御壁を魔法で張ろうとするが、もう圧力差があまりに大きく、次々に亀裂が広がっていく。
それを見た銭丸が焦りまくり、「早く全員避難させろ!」と叫ぶが、エレベータや緊急脱出通路は数に限りがあり、乗客が殺到して大混雑。さらに甲殻の魔物が進入してきたとの知らせが流れ、「ドーム中央付近に巨大な脚を持つ生物がいる」という悲鳴が飛び交う。もう混乱の絶頂だ。
メルティナはバルドとともに魔物を止めようとするが、怪物がばかでかい爪や触角で通路を破壊し、水がさらに流れ込む道を増やしてしまう。銭丸は「仕方ない……最後の手段だ」とか言って“緊急隔壁”を下ろそうとするが、機械が反応しない。どのシステムも既に水没し、魔導回路がショートして機能を果たさない状態だ。
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遂に大規模な破壊音が響く。ドーム天井に大きな亀裂が走り、そこから奔流が一気に落ち、まるで滝のようにドームを蹂躙し始めた。構造が耐えられる余地はもはやなく、海水が猛烈な勢いで内部に渦を巻いて流れ込む。客たちは絶叫しながら水に呑まれ、バルドたちも流される形でなすすべがない。
銭丸は中央広場あたりで転倒しながら断末魔の声を上げる。
「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。海底リゾートは……爆死ッ……!!」
その瞬間、天井が全面的に崩壊し、大量の海水が滝のように落下。衝撃波と水圧が下から押し寄せる形で全域を埋め尽くし、ホテルやカジノを含めた建物が崩れ、一瞬で真っ暗な海に溺れていく。破片や家具が漂い、大勢の客やスタッフも巻き込まれて見えなくなった。
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数日後、地上から潜水チームが現場の海底を捜索したものの、ドームだった場所はほぼ埋もれており、中に残留した設備は崩壊で瓦礫と化した。全体が泥と砂、そして海魔との跡が混ざってどうにも近づけない状態だ。もちろん銭丸の姿はなく、かつてのメガフロートみたいに浮かぶ残骸さえ少ないから、生き残る余地は皆無だろうというのが大方の見方だ。
しかし、これまで幾度となく同じように“爆死”してもなぜか復活してきた銭丸の記憶を持つ者は、「あれだけの深海崩壊でも帰ってくるか?」とあきれた笑いを浮かべる。メルティナやバルド、ひかりもどうにか脱出したが、また多額の損害と混乱を負って重い溜息をつくばかりである。
こうして、「深海神殿を取り込んだ海底リゾート」という壮大な観光ビジネスは、わずか数日程度の華やぎを経て水の底へ沈み去った。海底に潜む封印やモンスター、そして水圧や不注意の連鎖が一瞬でドームを押し潰し、最後にはいつもの銭丸の断末魔とともに破滅。
どれだけ舞台を変えても、どれだけ壮大な夢を掲げても、必ず爆死に終わる運命にあるかのようなこの繰り返し。人々は「あいつは海底でも爆死したか」「まあ、また帰ってくるんだろ」と苦笑まじりに噂をするものの、誰も確かな結末を知ることはできない。後に残るのは、海底に大きく開いたクレーターと、すべてを呑み込んだ海の青い闇だけである。




