第48章「多次元ゲートの商用化で爆死!? 空間事故が世界を歪める」
「空を飛ぶだの、海を越えるだの、まだまだ甘いよ。いまの時代は“多次元ゲート”で、一瞬で遠くの国や別世界に移動できるんだ。これを商用化すれば、超高速の交通革命が起きるだろ!」
黒峰銭丸は、王都にある魔導研究所の前で胸を張って言い放った。彼のそばには水無瀬ひかりが、今回も何やら不安を抱いた表情で立っている。どれだけ爆死しても立ち上がる銭丸が、今回はさらに危険な領域に手を伸ばそうというのだ。
「多次元ゲートって、聞いただけで不安しかないんですけど。空間を歪める魔導技術でしょ? 失敗すると空間崩壊が起きるとか……」
「そこを安全に使えるように研究所が長年実験してきたんだ。そろそろ実用化の時期だって言うから、俺が商売にしてやろうってわけさ!」
◇
今回の構想は、**「多次元ゲートを設置し、都市間や国間を瞬時に繋ぐ商用サービス」**を立ち上げること。魔導研究所の協力を得て、既存の実験ゲートを拡張し、一般人でも料金を払えば簡単に遠くの国へ移動できるようにする狙いだ。
出資者は盛んに「もし安全なら大革命だ」と期待し、バルドとメルティナが“ゲート管理の安全面”を支える形で参加。ひかりは相変わらず事務と資金繰り、そして銭丸が広告と営業を担当する。
「よくまぁそんな危険そうな計画に出資が集まりますね」
「研究所の魔導士が『もうすぐ安定可』って太鼓判を押してる。平気さ、今回は爆死なんてあり得ないさ!」
◇
まずは王都に1基、他の主要都市にそれぞれ1基ずつゲート装置を設置し、相互接続するという計画が進む。多額の魔石と魔導陣が必要になるが、大勢の投資家が“成功すれば輸送も交流も激変する”と見込んで資金を注ぎ込む。銭丸はそれを使って魔導研究所と魔導ギルドに開発を急がせる。
バルドが警護を兼ねたゲートの物理設置を指揮し、メルティナが魔導回路の調整を進める中、ひかりが「中途半端なテストでいきなり商用化は早すぎる」と忠告するが、銭丸は「先行者利益がすべてなんだよ」と聞かない。
「常に突っ走りますよね……嫌な予感しかしません」
「おいおい、そんなに悲観するなって!」
◇
やがて主要都市にゲートが整備され、接続試験が行われる。一定の距離なら問題なく通行できるようで、研究所の魔導士が「簡単な荷物や動物の転移に成功した」と報告。銭丸はこれを好機と見て大々的に宣伝を始める。「多次元ゲートで、一瞬にしてあの街へ!」と謳い、開通式を大々的に開催しようというわけだ。
ひかりは「トラブル起きないかしら……」と漏らし、バルドとメルティナも徹夜で調整を続ける。銭丸は「やればできる!」と上機嫌で準備を進めるばかり。
「これまでの大失敗を教訓に、安全策も入念に……ってやってますか?」
「もちろんさ。魔導陣を二重三重にして、暴走を防ぐんだ。もう爆死はないよ」
◇
そして迎えた開通式。王都のゲートを中心に要人や市民が集まり、銭丸が壇上で「皆さん、これで世界が繋がります!」と豪語する。開通後は特別に無料体験も行われ、物や人がゲートを通って別の都市へ瞬時に転移するデモンストレーションが披露される。最初のうちは無事に荷物が転移され、拍手と歓声が沸いた。
人間の通行も試しに数人がゲートをくぐって別の都市へ行き、すぐに戻ってくると会場は大盛り上がり。「これなら革命だ」「時代が変わった」と興奮が広がり、出資者も喜ぶ。銭丸は「やっぱり俺は天才だろ」とひかりにドヤ顔を見せる。
「今のところ順調ですね……嘘みたいに」
「ほら見ろ。もう爆死の心配なんか忘れろって!」
◇
ところが、次のタイミングでゲート装置が微妙に不安定な揺れを始め、魔導士が「急に負荷が上がってる」と青ざめる。直後、別の都市側のゲートでトラブルが発生し、転移した人が行方不明になるという報告が来た。まだ何が起きているかわからないが、銭丸は慌ててゲートの稼働を止めようとするが、制御陣が反応しない。
「やばい……停止コマンドが効かない!」
「どうして!? 緊急遮断の術式が反応しないなんて!」
メルティナや研究員がアタフタするが、ゲートはむしろ出力が増して勝手に暴走し始める。
◇
ゲートの周辺が歪み始め、空気が裂けるような音がして、そこにいた観衆が悲鳴を上げて逃げようとする。一部の人がゲートに吸い込まれかけたり、別の人が異空間のような場所に転移してしまい、戻ってこないという混乱が起きる。さらにゲートから得体の知れない光や影があふれ出し、まるで別の世界が衝突しているような光景だ。
「こんなの聞いてないぞ……! どうなってるんだ、メルティナ!」
「空間が不安定化してる! 制御を失ったら、周囲の世界まで巻き込むかもしれない……」
◇
バルドが人々を避難させようとするが、広場には混雑で身動きが取れないほど人がいて、あちこちで泣き声や叫び声が飛び交う。ゲート装置がさらに暴走して巨大化し、歪んだ光が周囲を包み込み出す。
そこに何らかの衝撃波が走り、石造りの台座や機械が破壊され始める。銭丸がいくら叫んでも混乱は拡大するばかり。次の瞬間、ゲート中央部から爆発的な光が放出され、空間が割れるような音が響きわたる。
「うわああっ……! このままじゃ町ごと消し飛ぶかもしれない!」
「なんとか止めてくれ……! くそ、間に合わないか……」
◇
ゲートの魔力がピークに達し、周辺の建造物や通行人が吸い込まれたり弾き飛ばされたり、まさに異世界と繋がりかけた大混沌の様相。銭丸は衝撃波に吹き飛ばされながらも、いつもの台詞を叫ぶ。
「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。多次元ゲートは……爆死ッ……!!」
最後の声が光と轟音に消えた瞬間、装置が完全に崩壊し、空間の歪みが巨大な竜巻のようなエネルギーとなって広場を蹂躙。ビルや地面がズタズタに砕け、火花が断続的に炸裂しながら衝撃波が膨張していく。
◇
翌日、王都の中心部には巨大なクレーターができ、ゲート装置は跡形もなく消失していた。建物や道も半壊ないし全壊状態で、多くの人が行方不明となり、異世界へ飛ばされた可能性すらあるという。
通貨の混乱どころではない大災厄に、人々は「こんな恐ろしい事件は初めて」と嘆き、出資者も「空間ごと吹っ飛ぶなんて……」と責任の所在を探すばかり。そこにいつものように銭丸の姿はなく、「さすがにこれだけ派手なら死んだろ」と皆が言うが、過去を知る者は「死んだかなんてわかったもんじゃない」と苦い顔をする。
こうして、多次元ゲート商用化という夢物語は、次元の歪みが世界を飲み込むかのような大爆発で崩壊。銭丸がいくら安全策を語っていても結果は同じ“爆死”に終わる――もはやお約束の結末だと、町の人々は呆れまじりにささやき合うしかなかった。




