第44章「新大陸探検で爆死!? 開拓投資と先住民の怒り」
「王都の周辺だけじゃ、もう稼ぐにも限界がある。だったら、未踏の大陸を探検し、そこで新たな資源や土地を開拓すれば、大儲け間違いなしだろ?」
黒峰銭丸は、港町の埠頭で広げた海図を指し示しながら、いつものように鼻息を荒くして語った。彼の隣には水無瀬ひかりが立ち、半ばあきらめ気味に書類をめくっている。何度爆死しても立ち直る銭丸だが、今回は「新大陸」を狙った大規模な冒険事業らしい。
「未踏の大陸って、そもそも危険が多いから誰も手を付けてないんですよ。海を越えるには船や航路も整備が要るし、先住民がいるならどう対応するんですか?」
「そこを俺がリードして、友好関係を築きながら資源を開発するのさ。海運ギルドに協力してもらって、開拓投資を募れば大規模な探検隊を組める。そこにこそ金の匂いがするんだよ!」
◇
銭丸は、複数の貴族や商人から投資を集め、**「新大陸探検隊」**を結成する。大陸へ向かう大型船を用意し、冒険者や学者、工事担当者、護衛の兵士まで幅広い人員を確保。バルドが警備隊を率い、メルティナは未知の土地での薬物や動植物研究を担い、ひかりが会計や契約書を管理する。
航路は長期間かかるが、海運ギルドが持つ航海技術を使って外洋を渡れる見込みとのこと。貴族も「もし新大陸で珍しい鉱石や作物が見つかれば巨利を得られる」と期待し、大金を出資していた。
「みんな金の匂いに敏感ですからね……あなたに任せて本当に大丈夫なんでしょうか」
「安心しろって、もう爆死は勘弁だからな。今度こそ安全にやるんだよ!」
◇
やがて準備が整い、数隻の大型船が新大陸へ出航。冒険心に満ちた学者や軍事ギルドの護衛、商業ギルドからの観察員などが乗り込み、銭丸は先頭で「壮大な宝をつかみに行くぞ!」と豪語する。ひかりやバルドは呆れつつも、それを抑える役目として同船する形だ。
海を越えて長い航海を続け、多少の嵐や海賊との小競り合いを乗り越えた末、探検隊は新大陸の海岸に上陸を果たす。眼前に広がるのは見たことのない密林や高い山々、独特の気候と動植物。人々は興味と不安が入り混じった表情で大地を踏む。
「すごい……本当に未知の大陸だわ。何があるんだろう」
「ここで資源を見つけ、拠点を築ければ大成功だ。船を拠点に、まずは内陸を偵察しよう!」
◇
銭丸は隊を編成し、バルドが護衛を率いて内陸調査を実行。メルティナや学者陣が動植物や地形の調査を行い、ひかりが物資管理と記録を担当する。海岸近くに仮拠点を作り、そこへ船から物資を運び込みながら進める形だ。
しばらくすると、実際に珍しい鉱石が見つかったり、独特な果実や薬草が採取できたりして、隊の士気は高まる。銭丸は「やっぱり俺の読み通りだ」と大喜びし、出資者への報告をどう送ろうかと気を張り詰める。
「これ、かなりの価値がある鉱石かも……魔導具に使えそう!」
「でしょ? そいつを山ほど持ち帰れば、一攫千金だぞ!」
◇
ただ、新大陸には先住民の存在が噂されていた。探検隊が奥地を進むと、目立った人影はないものの、木々に隠された仕掛けや古代風の建造物が見受けられ、誰かが生活している痕跡が感じられる。
銭丸は「もし先住民がいるなら、交渉して共存しよう」と意気込むが、バルドは「警戒はしておけ。彼らにとって、俺たちは侵略者かもしれない」と警鐘を鳴らす。
メルティナが不安を口にする一方で、ひかりも「有力出資者は“土地を奪え”みたいな発想をしてる人もいるから、摩擦が起きないといいけど……」と心配する。
「交渉次第だよ。どちらも得をする形で協力できれば爆死はないさ!」
◇
ある日、内陸調査隊が先住民らしき人影を目撃し、バルドが言葉を試すが通じない。相手は弓や槍を構え、こちらを警戒している。なんとか銭丸が身振り手振りで「友好」を示そうとするが、先住民は無言のまま森に消えていく。
それからというもの、探検隊は何度か先住民と遭遇するが、いずれも警戒されている様子。銭丸は「とりあえず攻撃してこないし、様子を見るしかないな」と苦笑する。
「無理に進軍しなければ、彼らも手を出さないはずですよね?」
「ああ、拠点周辺で静かに開拓しよう。それで彼らとも関係を作れればベストだ」
◇
やがて仮拠点が小さな町のように拡張され、銭丸は「事実上の開拓都市だ」と張り切っている。学者や職人が独自の畑や鉱山を開き始め、船で行き来するたびにレア鉱石や珍しい産物を持ち帰る。出資者からの評価も上々で、「このまま定住すれば大成功では?」と一部が盛り上がる。
だが、バルドは不安げな顔をして「先住民が遠巻きにこちらを見張ってる」と報告。メルティナは動植物の生態を調べる中、先住民の神聖領域と思われる森に入ってしまい、奇妙な呪符や罠を見かけたと話す。
「これ、彼らが神聖視する土地を荒らすと大変かもしれない……」
「どうしよう。すでに鉱山をあちこち掘ってるし、森林伐採も進んでる。対立にならなきゃいいけど」
◇
ある夜、大量の先住民が仮拠点周辺に接近しているとの通報が入り、銭丸たちが慌てて外を見ると、火矢やトーチを持った集団が森の闇から姿を現す。どうやら彼らは「外から来た侵略者」と認識し、一斉攻撃を仕掛ける構えだ。
バルドが急ぎ護衛を集めて防衛線を敷くが、先住民は森を拠点に奇襲をかけるのが得意らしく、次々と火矢を打ち込んで拠点の木造バリケードを燃やしにかかる。メルティナや学者たちが怯え、ひかりが「やめろ!」と叫ぶが、言葉が通じない。数人の冒険者が応戦するも火が広がるのを止められない。
「くそ……ここまで進めてきたのに!」
「なぜこんな急に激昂したんでしょう! やっぱり聖域を犯したせいかも……」
銭丸は頭を抱えるが、もう事態は止まらない。
◇
総攻撃を仕掛ける先住民は、大木や岩を転がす罠まで用意していたようで、開拓地の通路が塞がれ、逃げ道が少なくなっていく。さらに矢の先に燃え盛る油を付けて連射し、建造物が次々と炎上。拠点に積み上げていた燃料や火薬の倉庫にも火が飛び、あっという間に大爆発が起きる。
銭丸は吹き飛ばされながら必死に耐えるが、濃い煙と炎が視界を奪い、耳をつんざくような破裂音が響く。
「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。新大陸探検は……爆死ッ……!!」
そう叫んだ瞬間、さらなる誘爆が拠点全体を揺るがし、炎と瓦礫が銭丸を包み込む。周囲から悲鳴と怒号が混ざり合い、火の手は森をも巻き込んで大混乱に陥る。
◇
翌日、かろうじて海岸へ逃げ戻った生存者たちが船に乗り込み、燃え上がる開拓地を呆然と見つめる。せっかく築いた拠点は廃墟となり、先住民の攻撃で多くの人が負傷し、建物や物資は灰と化した。
それでも一行はこの地を放棄して撤収せざるを得ず、出資者が期待したレア鉱石や広大な土地などは夢のまま消える形に。肝心の銭丸は行方不明、あの炎に巻き込まれたのだから助かるはずがない――しかし、過去を考えれば安易に信じてもいられない。
「新大陸を開拓だなんて甘かったよ……先住民を怒らせちゃ、もうどうにもならない」
「結局、爆死オチか。やっぱりな」
乗船した人々は互いにため息や罵声を漏らしながら、また長い航海で王都へ戻るしかない。こうして未知の大陸を開拓して大儲けするはずの壮大な計画も、一夜のうちに火と爆風で崩れ去り、銭丸の破滅といういつもの結末だけが残される――彼の伝説は新たな地でもやはり止まらないらしい。




