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第43章「エルフ&ドワーフ連合政府で爆死!? 種族対立の火柱」

 「人間だけじゃなく、エルフとドワーフの自治領だって大きな市場だろ? でも両者が仲がいいとは言えない状況らしい。だったら、俺が連合政府を作ってまとめてしまえば、一気にビジネスが拡大するに違いない!」


 黒峰銭丸は、王都の外れにある雑貨カフェの一席で、地図を広げて熱弁を振るっていた。彼の隣では水無瀬ひかりがいつものように書類を点検しながら、嫌な汗をかいている。


「エルフとドワーフは種族の違いで文化も考え方も正反対と言っていいほどですよ。互いに歴史的対立もあるし、そんな簡単に連合を作れるんでしょうか?」


「そこをまとめるのが俺の役目だろ。少なくとも、商売の面ではメリットが大きいはずだ。森林資源や鍛冶技術……両方を合わせりゃ最高の産業連合ができる!」



 銭丸はすでにエルフ領の一部有力者と、ドワーフの工匠ギルドの一部に接触しており、双方が「共存できれば利点が多い」とある程度合意し始めている。たしかにエルフは森の恵みや魔法的な工芸品、ドワーフは採掘や鍛冶技術に長けており、補完関係は取りやすい。

 バルドとメルティナはそれぞれの種族とのパイプ役を兼ね、ひかりは契約や財務面を管理する。銭丸は双方の利権を調整し、連合政府として“合同議会”を作ろうと提案中だった。


「本当にうまくいくのかな……。エルフとドワーフが同じ議会で協力してくれるなんて信じられないけど」


「やってみれば案外上手くいくさ。爆死する前に大儲けだ!」



 いつもの大言壮語を信じ半分、懐疑半分で準備が進む。エルフ領へ出向き、森の長老や高位のエルフ魔術師たちと話し合い、「森と伝統を壊さないなら共同してもいい」と条件を得る。ドワーフ領にはバルドを送り、工匠ギルドに「木材や魔法素材が安定供給されれば鍛冶が捗るだろう?」と説得させる。

 結果的に、両陣営の穏健派が同意し、試しに“連合政府”の核としての合同議会を発足させる運びとなった。そこに銭丸が管理役として食い込み、大規模インフラや市場拡大に関与する計画を立てる。


「案外スムーズですね。対立が激しかったって聞いてたんですが」


「実はどっちも不安定な要素を抱えてるから、共存のメリットに目を向ければ意外と賛成派が多いんだよ」



 ただし、当然ながら反対勢力や強硬派もある。エルフ領には「ドワーフの鍛冶が森を破壊する」と危惧する環境派がいて、ドワーフ領には「エルフの魔法に頼るなんて誇りがない」と吠える保守派がいる。銭丸は「そこをうまく宥和させるのが俺の腕の見せどころ」と自信を持つが、ひかりは「まさかまた爆死フラグじゃ」と心配を拭えない。


「大丈夫、バルドとメルティナが種族の橋渡しをしてる。もう失敗なんてないって!」


「フラグにしか聞こえないんですけど……」



 やがて合同議会がエルフ・ドワーフ双方の代表を集めて発足式を迎えることになり、銭丸たちは森と山の境界にある“中立地帯”で大きな式典を準備する。そこで「歴史的な連合政府の宣言」を行い、以後は一つの政体として協力していく――というシナリオだ。

 当日はエルフの長老や魔法歌い手、ドワーフの工匠長や武器職人たち、さらには王都や他国からの傍観者まで呼ばれて盛大な催しになる。


「いやあ、これこそ平和と繁栄の象徴じゃないか。世界が一歩進む瞬間だよ」


「トラブルが起きないように、警戒だけは怠らないでくださいね」



 式典が始まり、エルフの長老が森林の祝歌を奏で、ドワーフの代表が鍛冶の儀式を披露する形で和やかにスタート。大勢の見物客が拍手や歓声を送る。銭丸も壇上で「本日、エルフとドワーフが手を携える記念すべき一日」と宣言し、ひかりが裏方で書類を整える。

 このまま上手くいけば新時代の幕開け――そう思われたが、次第に空気が怪しくなる。途中でエルフ環境派が「森の伐採は絶対に許さぬ」と声を上げ、ドワーフ保守派が「鍛冶に口出しするな」と応酬し、壇上で小競り合いが始まる。


「まあまあ、落ち着いて……ここで争うのは本末転倒じゃないか」


 銭丸が笑顔でなだめるものの、譲らない両陣営は激昂していく。



 さらに、式典後半に調停を試みたエルフの長老が「持続可能な伐採なら森を大きく傷めない」と述べると、急進的なエルフが「森に斧を入れるなど言語道断!」と叫び、ドワーフの工匠が「武器を作るには鉱石と木炭が必要だろ!」と対立を煽る。

 周囲が騒然とする中、どうやら誰かが火種を仕掛けていたのか、**「実際に木を切り出した材木」**が会場に持ち込まれているのをエルフの急進派が目撃し、怒り狂って「これは森から盗伐したものだ!」と訴え、ドワーフ保守派が否定するも聞かない。


「そんなわけないだろ! 正当な取引で手に入れた材木だ!」


「うそだ、勝手に森を荒らして……!」



 言い争いがヒートアップし、ドワーフの工匠が持っていた斧でエルフが倒してあった材木を叩き割り、火種をさらに煽る。エルフ側の魔法使いが怒りに任せて風魔法を放ち、舞台装飾が吹き飛ぶ。悲鳴が上がり、バルドが慌てて止めに入るがすでに混乱は止まらない。

 そこで奇妙なことに、どこからともなく火矢のような魔導矢が打ち込まれ、木材に引火。周囲に積まれていた関連資材にも火が燃え移り、あっという間に火柱が上がる。


「うわっ! 炎だ! 誰が矢を放ったんだ……?」


「逃げろ! 魔法で鎮火できないのか?」



 エルフとドワーフの保守・急進双方が大混乱に陥り、誰が敵かもわからないまま互いを疑い合う。メルティナが消火魔法を試みるが、気が立った急進派のエルフが「裏切り者!」などと叫び、巻き込まれてしまう。ドワーフが火器を構え、エルフが風や氷魔法を放ち、式典会場はもはや戦場と化していく。

 銭丸は壇上で「やめろ!」と叫ぶが、飛び交う火矢や魔法が凄まじく、彼の足元にも火が燃え広がる。逃げ道を探しても、崩れかけた舞台が邪魔をする。


「くそ……ここまで頑張ったのに、また……」


 次の瞬間、ドワーフの火炎放射魔導具が誤作動で噴き出し、隣のブースの爆薬に引火。狂ったように連鎖爆発が始まり、壇上を大きく吹き飛ばす。


ドオォン……!!


 銭丸は爆風と炎にまみれながら、いつものように最後の台詞を口にする。


「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。エルフ&ドワーフ連合は……爆死ッ……!!」


 轟音が最高潮に達し、ステージが瓦礫と破片の塊へと崩落。炎の渦が勢いを増し、両陣営が混沌としたまま互いを責め合い、会場を蹂躙していく。銭丸は火の海に巻き込まれ、視界も消えていった。



 翌朝、森と山の中間地帯にできたはずの“連合議会”会場は廃墟となり、あちこちで残る炎がくすぶっていた。エルフの魔術師やドワーフの職人らも疲労困憊で撤退し、再び両種族の関係は最悪の状態に逆戻り。

 せっかくまとめようとした連合政府はもちろん破談。焼け焦げた地面と崩れた舞台だけが残り、出資者や王国側の傍観者は「大惨事だ」と頭を抱える。いつものように銭丸は行方不明で、「あれだけ燃えてりゃ死んだだろ」と言われるが、「まあ、生きてても驚かんが」と苦笑する者も多い。

 こうしてエルフ&ドワーフ連合の成立は夢のまま崩れ去り、文化融合による大ビジネス計画も泡と散った。人々はまたしても呆れまじりに、銭丸の爆死(?)を噂しながら、焼け跡を遠巻きに眺めるしかなかった――彼が何度破滅しても立ち上がる姿は、まるで悪夢のように続くのだから。

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