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第45章「大陸横断トレインで爆死!? 夢の鉄路が崩落する日」

 「馬車や船でやり取りしてたら時間もコストもかかるだろ? それなら、大陸を横断する“鉄道”を作って、一気に物流を革命すればいいんだよ!」


 黒峰銭丸は、広げた大陸地図の上を指でなぞりながら、いつもの自信満々な口調で語った。これまで大規模なインフラ事業で何度も爆死してきたのに、今度は“鉄道”に狙いを定めたらしい。彼の隣で水無瀬ひかりは書類を抱え、やや冷ややかな視線を向けている。


「大陸横断トレインって……よほどの技術と資金が必要じゃないんですか? 線路を敷くにも山を越え、渓谷を渡らないといけませんよ」


「そこを解決するからこそ大儲けできる。各国の商人や貴族は“鉄道”で大量の荷を速く運びたいんだ。国々を結べば観光客だってドッと来るさ!」



 銭丸は複数の王国や商人ギルドから出資を集め、**「大陸横断トレイン計画」**を打ち立てる。工学ギルドや魔導ギルドと共同で、レール敷設や機関車の開発を行うという壮大な事業だ。バルドが安全管理を担当し、メルティナは魔導エンジンや補助設備の調整をサポート。ひかりは例によって契約・財務管理を引き受けている。


「でも線路を一本引くだけでも大変ですよ。山岳地帯を貫通させるトンネルや橋は……」


「ちゃんと専門家を雇ってる。最先端の技術でトンネルを掘り、巨大な鉄橋を架けるんだ。爆死なんかしないように慎重を期すぞ!」


「毎回そんなこと言っても結末は……まあ、見守ります」



 やがて工事が始まり、各国を結ぶルートに合わせて線路を敷設する大規模プロジェクトが動き出す。山岳地帯ではトンネルを掘り、渓谷には頑丈な鉄橋を建設。村や町が通過点に指定され、そこには駅や停留所が計画され、現地の人々も「鉄道が通れば栄えるかも」と期待感を見せる。

 銭丸は資金集めと広報に奔走し、各国の出資者に「完成すれば大陸を丸ごと繋いでビジネスが広がる」と夢を売る。バルドや工事隊が危険な山道で作業しては小さなトラブルを処理し、メルティナが魔導エンジンの試験運転を管理。ひかりは工費超過がないか常にチェックしている。


「今のところ、大事故は起きてないですね。順調だといいんですが」


「でしょ? やればできるんだよ、もう爆死なんか御免だからな!」



 数年規模の工事を想定していたが、出資と人員が大量に集まり、思ったより早いペースで完成が近づき始める。各所でレールが繋がりだし、山岳トンネルも貫通した。最後の難所は大きな峡谷に架ける「巨大鉄橋」の工区だ。ここが繋がれば、大陸を縦断する線路が完成するというわけで、各国の期待が最高潮に高まる。


「橋さえできれば、ついに大陸横断トレインが開通だ! こりゃ祝賀式を大々的にやらないと」


「ちょっと待ってください。トンネルはともかく、この橋だけはテストをしっかりしないと危ないですよ」


「大丈夫、工学ギルドが“最高の橋”と太鼓判を押してる。強度に問題はないさ」



 そしてついに巨大鉄橋が完成し、全線開通が決まる。銭丸は祝賀式を盛大に行い、初の“大陸横断トレイン”に出資者や貴族、要人を乗せて試運転するという壮大なイベントを企画。各駅で歓迎ムードが盛り上がり、人々は「これこそ新時代だ」と喝采を送る。

 ひかりは警戒心を示しており、「一気にフル乗車して橋を渡るのはリスクが高い」と制止するが、銭丸は「大丈夫、祝賀式は派手にやるほど宣伝になる」と押し切ってしまう。


「本当に無茶しないで……何か不安なんですよ、やっぱり」


「線路や橋は完璧だ。何の心配もいらないって!」



 祝賀式当日、真新しい駅には貴族や商人、観衆が集まってテープカットの様子を見守る。銭丸がメガホンで「みなさん、大陸横断トレインの記念すべき初運行が始まります!」と宣言し、拍手と歓声が沸き起こる。列車の先頭車両には王家や資本家の代表が乗り込み、銭丸やバルド、ひかりも一緒に揺られて出発する。

 最初の区間は平坦で、車内はお祭り騒ぎ。車窓から美しい景色が広がり、まるで成功を約束されたような空気が漂う。メルティナも列車後方に乗り込み、魔導エンジンの調子をモニターしている。


「順調ですね。スピードも安定してるし、これなら本当に大丈夫かも」


「ふふん、言っただろ? もう爆死なんかしないんだよ」



 やがて列車は山岳地帯に差しかかり、問題の巨大鉄橋へ近づく。車内アナウンスでは「この先に注目ください」と言われ、乗客たちが窓に顔を寄せて渓谷の絶景を楽しもうと身を乗り出す。橋に差しかかる瞬間、みんなが息を呑む壮大な光景が広がる。

 しかし、直前になって車両後方で何やら衝撃音が響き、メルティナが「エンジンに異常過負荷がかかってる!」と叫ぶ。運転席が慌ててブレーキをかけようとするが、反応が遅く、すでに列車は橋の中程に乗り上げてしまっていた。


「なんだ……何が起きてる?」


「過負荷? 制御が効かないのか? スピードが落ちない……!」



 列車は減速できないまま橋を走り続け、車体が大きく揺れ始める。速度オーバーで橋に負担がかかり、橋桁のどこかが悲鳴を上げるように軋む音が車内に響く。バルドが車両を見回り「乗客は座れ!」と怒鳴るが、次の瞬間、メルティナが狼狽した声を上げる。


「この揺れは……まずい、レールがたわんでる!」


「冗談だろ……うわああっ!」


 そこに轟音が走り、橋の支柱がぐらりと傾いたのが外から見える。金属が歪む嫌な音が続き、レール自体が歪み始める。



 列車の前方車両が脱線しかかり、銭丸を含む乗客が悲鳴を上げる。運転士が非常ブレーキをかけても止まらず、橋の上で車両が斜めにズレていく。橋桁の高い場所から車体が外側へ傾き、海のように広がる渓谷へ落下寸前の姿勢だ。

 ついに支えきれなくなった橋が大きく崩れ、鉄骨や石材が崩落。列車の前部が空中に放り出され、そのまま多数の車両を巻き込んで谷底へ滑っていく。


「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。大陸横断トレインは……爆死ッ……!!」


 銭丸が断末魔の声を上げた瞬間、列車と橋が一斉に崩落し、谷底に向かってドォンという大破壊音を響かせる。車両から炎と煙が上がり、橋の残骸が激しい衝撃をもって谷へ落ちていく。



 翌日、レスキュー隊や兵士が谷底を探すが、崩れた橋と列車の残骸が広範囲に散らばり、助かった乗客も重傷を負っている。死傷者が甚大で、出資者や貴族、乗っていた要人も大混乱。完成間近だった大陸横断トレインは、一夜にして廃墟の塊になってしまった。

 「あれだけの高さから落ちりゃ誰だって死ぬ」と言われながら、銭丸の遺体は見当たらない。過去の例からして「もしかして生きてるんじゃ」と苦々しい顔をする者もいる。

 こうして念願の大陸横断鉄道も、祝賀式の最中に崩落という最悪の結末を迎え、大勢の負傷者と損失だけを残した。大勢の夢を乗せたトレインが一瞬にして火柱と瓦礫に沈む姿は、まさしく“爆死”以外の何物でもなかった。それでも“あの男”がまたどこかで立ち上がるのか、人々は恐れと呆れを胸に囁き合うしかないのだった。

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