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第35章「農地統合で爆死!? 貴族派と衝突の修羅場」

 「王都付近だけじゃなく、この国にはまだまだ農地が点在しているよな? それを大規模にまとめて効率化すれば、農作物の生産力が一気にアップするってわけさ!」


 黒峰銭丸は、地図をテーブルに広げながら得意げに語った。これまで農業関連のビジネスで何度も失敗してきたが、やはり“食”の分野にこだわり続けているようだ。彼の隣にいる水無瀬ひかりは、最近の大事故を思い出しながらも、淡々と彼の話を聞いている。


「農地を統合して効率化するのはいいですが、貴族が所有している領地をまとめるとなると、反発が大きくなりませんか?」


「そりゃ覚悟してる。でも、その抵抗を凌いで成功すれば、農家も貴族も儲かる可能性があるだろ? もっとも、一部の貴族が固執する古い仕組みを崩さないと難しいけどな」



 銭丸はすでに、農業ギルドの一部や王都の改革派官僚と話をつけており、地域ごとに点在する農地をまとめて“農地統合区画”を作り、より大きな区画で機械化や魔導化を進める構想を練っていた。公用の書類も取り付け、バルドは土木整備の下準備に、メルティナは肥料や魔導灌漑のシステムを点検する形で参加する。


「ここまで計画が進んでいるなら、あとは貴族たちの了承だけ、ってところですね」


「そうだ。まあ、一部は賛成してくれてるし、残りをどう説得するかが勝負さ。爆死なんてごめんだし、今回は丁寧に交渉していくぞ!」



 だが、実際に交渉を始めると、一筋縄ではいかない。昔から大土地を握る貴族派の中には、「統合で農民が自立したら損をする」「大きな機械化は伝統を壊す」などと反対意見を強硬に主張する者が少なくなかった。

 銭丸は出資者を連れて説得し、「統合すれば収益が拡大し、地代や税収も増える」と説明するが、相手はあまり聞く耳を持たない。


「余計な改革だ。おまえの狙いは何だ?」


「俺の狙いは金儲けだが、そちらも儲かるはずだろ? ちゃんとやり方を見ればわかる」


「ふん、貴様に領地の在り方を指図されるいわれはない!」


 感情論に発展し、膠着状態が続く。



 地元農家は「広い区画で一気に作業できるなら負担が減る」と賛成する人が多かったが、地主である貴族の許可なくは動きづらい。官僚の一部は「強制収用には抵抗が大きすぎる」と言い、結局、話し合いでどうにか合意を得るしか方法がなかった。

 銭丸はあれこれ根回しをして、穏健派の貴族を中心に同意を取り付けていくが、強硬派がまだ残っているため、計画の実施は先延ばしになりつつあった。


「こいつら、なにか裏で妨害工作してる気がするな……」


「また内乱のようなことが起きなければいいのですが」


 ひかりがため息をつき、銭丸は「何があっても成功させるんだ!」と気を吐く。



 そんな中、農地の一部で試験的に統合を始めた区画があり、そこでは順調に作業が進んでいた。広い畑に魔導灌漑システムを導入し、大型の農機(馬車改造+魔導エンジン)で耕作や収穫を効率化している。農家からは「こんなに楽に作業が進むとは」と感嘆の声が上がり、銭丸は「ほら見ろ」と鼻を高くする。


「この成功例を見せれば、残る貴族も渋々合意してくれるはずだ!」


「確かに良い実績ですね。今のところ事故も起きてないし、悪くないかも」



 だが、ある夜、その試験区画の機械庫で謎の放火未遂が起こる。何者かが油を撒き、火を点けようとした形跡があり、警備員が気づいて食い止めたため大事には至らなかった。バルドは「これは嫌がらせだ」と断言し、地元の村人も「貴族派の誰かがやったんじゃ」と噂する。

 銭丸は一気に警戒を強め、「ここまで邪魔するなんて、よほど統合が都合悪いのか」と怒りを露わにする。ひかりが「トラブルの種がまた……」と青い顔をして言うが、彼は「面倒でも正面突破する!」と熱くなる。



 数日後、強硬派の貴族が会合を開き、「農地を勝手にいじるな」と声を荒らげる。銭丸が堂々と乗り込み、「成功例を見ろ」と反論するが、相手は聞く耳を持たない。口論がヒートアップし、危うく剣を抜きそうになる貴族もいるほど殺伐とする。

 結局、話し合いが決裂し、相手側が「これ以上進めるなら実力で止める」と脅しをかける。騎士団の一部が動く雰囲気も漂い始め、ひかりは「また内乱みたいになるのでは」と不安でいっぱいだ。



 事態はさらに悪化し、ある朝、試験区画に向かう農家が「悪党に襲われた」と訴える。馬車が壊され、収穫物を踏み荒らされたというのだ。バルドが調査に出るが、証拠を掴む前に犯人は逃走。地元は騒然とする。

 銭丸は「これ以上、ほっとけない」と決意し、まさに力尽くで農地を守る方向へ進みそうになるが、改革派官僚が「落ち着け。ここで衝突すれば大規模な争いになる」と止めに入る。


「くそ……でも黙ってたら相手がつけあがるんだ」


「どうにか円満に解決できませんか? 話し合いで……」


「奴らは話を聞く気がないだろう!」



 そうこうしているうちに、強硬派が動員した私兵が農地の入り口を封鎖し、「二度とこの土地に手を出すな!」と睨みを利かせる状態に。農家は畑に近づけず、収穫もできない。銭丸が交渉に行くと、罵声を浴びせられ、押し返される。

 なんとか裏から回り込んで収穫しようとする農家もいたが、捕らえられてしまい、荒っぽい扱いを受けたとの話が飛び込んでくる。まさに戦火寸前の空気が漂い、バルドが「これじゃあ、マジで衝突するぞ」と危惧する。



 ついに小さな火花が散ったのは、夕刻に農家の一部が我慢できず私兵と揉め、乱闘に発展したときだった。銭丸は仲裁しようと現地へ駆け込むが、既に貴族派の騎士や私兵と農家&改革派が殴り合い、周囲の倉庫や機械庫にも火を放つ者が出る騒乱へと拡大する。


「ちょっと待て! こんなのやってたらダメージが大きすぎる!」


「どっちがやめる気ないんだから仕方ねえ! 引けるかよ!」


 炎が倉庫の魔導燃料に引火し、小規模な爆発が起きる。踏み荒らされた畑は根こそぎ破壊され、逃げ惑う人々が叫び声を上げる。



 銭丸はバルドと一緒に消火活動に当たろうとするが、私兵が「こいつが元凶だ!」と突っ込んできて剣を振り下ろす。銭丸が避けようとするが、転倒してしまい、そこへ炎が迫る。さらに倉庫から二度目の連鎖爆発が響き、衝撃波が周囲を吹き飛ばす。


「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。農地統合は……爆死ッ……!!」


 最後の力で叫んだ途端、瓦礫と炎に巻き込まれ、銭丸は土塊の中へ姿を消す。燃え上がる機械庫や魔導灌漑パイプが破裂し、修羅場と化した農地は夜の闇に大火柱を上げた。



 翌朝、農地は黒焦げの廃墟と化し、いくつかの建物や機械庫も跡形もない。私兵と農家の乱闘は収まったが、多数が負傷し、出資者やギルドは途方に暮れている。肝心の銭丸はいつも通り行方不明で、「あれだけの炎に巻き込まれたら生きてるはずがない」と誰もが思う一方、「あいつなら」と苦い顔をする者も少なくない。


「統合で楽になるどころか、農地がめちゃくちゃじゃないか」


「また爆死オチかよ……ほんとに懲りない男だな」


 こうして“効率化で農家も貴族もウハウハ”というはずだった農地統合事業も、貴族派との衝突から内乱寸前の大炎上へ発展して幕を下ろした。土地は無残に荒らされ、重機は焼け落ち、最後はいつものように銭丸の爆死が疑われる形での悲惨な結末――どこまでもしぶといビジネスを挑む男の道は、今回も“爆死”で終わったのだった。

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