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第34章「リゾート開発で爆死!? 王都近郊の夢と散る温泉街」

 「せっかく王都の周辺に良質な温泉資源や景勝地があるのに、全然活かされてないじゃないか。だったら俺がリゾート開発をして、一気に観光客を呼び込もうってわけさ!」


 黒峰銭丸は王都外れの山間を見上げながら、懲りない様子で新企画をぶち上げていた。近くには水無瀬ひかりとバルド、そしてメルティナが揃っている。これまでも爆死を繰り返してきたものの、今回もまた壮大な構想を実行しようと意気込んでいるようだ。


「リゾート開発って、温泉街を再整備したり、高級宿や遊興施設を作ったりするんですよね。お金もかかるし、地元との交渉も複雑では?」


「全部ちゃんと準備してるんだよ。温泉組合や地元村の長老とも話をつけてある。もちろん、ギルドからの出資も確保した。ここに大規模リゾートを立ち上げれば、王都からの客がどっと押し寄せるに決まってる!」



 今回の計画は、王都近郊にある温泉地を拡張し、“リゾートホテルや遊戯施設、自然散策ルート”を合わせた複合観光地を作り上げるというもの。ちょっとした別荘感覚から日帰り観光まで幅広く対応しようと、銭丸がかなり力を入れて設計している。

 バルドが建設工事や警備面を指揮し、ひかりは地元温泉組合や村役場との調整、メルティナは魔導装置や温泉管理システムの整備を受け持つ。それぞれが手際よく準備に取りかかり、すぐに工事が始まった。


「今回は本当に協力体制が整ってる感じですね。大事故が起きなければ……」


「大事故なんか起きるはずがない! もう爆死は十分だよ、ひかり」



 やがて山間には大きなリゾートホテルが姿を現し、周辺に温泉街風の歩道や食事処、土産物屋が整備される。さらに銭丸は“自然と触れ合うアクティビティ”として、山道に遊歩道を作り、魔導ランプを点々と灯して夜でも幻想的に散策できるように工夫を凝らす。

 温泉宿は地元の味を活かした料理を売りにし、王都からのアクセスを良くするために馬車路や交通案内を拡張。宣伝効果もあって、すぐに観光客や貴族が興味を示し出した。


「すごい……なんだか順調ですね。温泉を楽しみに来るお客さんが増えそう」


「だろ? 完成すれば王都のリゾート地として大人気になるはず。俺はハイシーズンの宿泊料で大稼ぎだ!」



 リゾート施設が完成間近になると、銭丸は大々的な“グランドオープンイベント”を企画する。温泉まつりや夜間のライトアップ、音楽ライブなどで初日から話題をさらって、王都からドッと客を呼び込む算段だ。

 ひかりは「イベント中に人が集中しすぎてパンクしないように」と懸念するが、銭丸は「スタッフを増員してるし、万全だ」と言い切る。バルドも建物の耐火・耐震性を再チェックし、メルティナが温泉源や魔導ポンプの調整を続けるなど、なかなか慎重に準備を重ねている。


「これまでの失敗からかなり学んだんですね」


「当たり前さ! もう爆死なんかで終わりたくないんだよ」



 そしてグランドオープン当日、現地には朝から多くの客が押し寄せる。温泉街の入り口には華やかな門が立ち、誘導スタッフが親切に案内している。宿にチェックインする貴族家族から、日帰り入浴を楽しむ庶民まで、幅広い層が訪れていた。

 銭丸はホテルのロビーで満面の笑みを浮かべ、ロビーの一角に設けた受付カウンターで対応するひかりに声をかける。


「見ろよ、客がどんどん押し寄せてる! やはり成功の予感しかしない」


「すごい人ですよね……ちゃんと温泉も湯量が足りてますし、客室も埋まりそう」



 初日は大きなトラブルもなく、夜になって美しいライトアップが点灯すると、宿泊客が館内や散策路をそぞろ歩いて歓声を上げる。温泉にも絶賛の声が相次ぎ、食事処も繁盛している。銭丸が「ここまでは最高だ」とテンション高くうろついている一方で、バルドは夜間警備を抜かりなく実施。

 しかし、深夜になってから少しずつ異変が起き始める。あちこちの温泉が「加熱が強すぎる」「湯温が急上昇している」という報告を受け、メルティナが調べた結果、魔導ポンプの制御がおかしくなっていることがわかる。


「まずい、湯量を引き上げすぎて圧力が高まり、水脈とのバランスが狂ってるみたい」


「じゃあポンプの出力を下げるか止めるしか……」


「宿泊客が多いから、お湯が足りなくなるぞ……」


 スタッフが板挟みになり、結局ギリギリまでポンプを回す形で対応することに。温泉が冷めてクレームが出るのを怖れた宿主たちが文句を言ったためだ。



 結局、圧力限界ギリギリのまま翌朝を迎え、朝の入浴時間に客が集中する。さらに続々と日帰り客が訪れ、ポンプはフル稼働状態。メルティナが慌てて「いいかげん出力を下げないと危ない」と訴えるが、銭丸は「いや、もう少しだけ回してくれ。今日のピークが終われば休ませる」と言い張る。

 その裏では、地下の源泉部分で熱水と魔力の反応が高まり、気泡やガスを発生し始めていた。


「嫌な予感しかしない……。温泉噴き出しとか起きないんですよね?」


「ちょっと調べてみる。下手すると源泉が暴走して……」


 メルティナが言葉を途中で切り、地下へ急ぎ足で向かう。



 ほどなくして湯船に入っていた客が「熱い!」「温度が急に上がった!」と悲鳴を上げ、いくつかの浴場で沸騰寸前の湯が泡立っている状況になった。スタッフが慌てて排水して温度を下げようとするが、今度は排水が追いつかず湯量が減らない。

 さらに、館内放送で「湯脈に異常あり! ポンプ停止を!」と緊急アナウンスが入るが、操作室ではバルブが固着して動かず、制御パネルがエラーを起こしている。想定外の混雑でフル稼働させ続けたせいで、システムが壊れた可能性が高い。


「終わった……これ、もう止められないかもしれない」


「避難を呼びかけて! 客を外へ出すんだ!」


 ひかりが青ざめながら大声で案内を始め、バルドたちが階段や廊下で人々を外へ誘導する。しかし、温泉街のエリアには既に多くの利用客が詰めかけていて、混雑がひどい。



 そんな中、ついに地下の源泉が限界を超え、圧力が噴出する形で**“間欠泉”**のように激しく湯とガスを噴き上げ始めた。通路の床が震え、壁から湯と蒸気が漏れ出す。銭丸が走り回って「出力を止めろ!」と叫ぶが、誰も装置を停止できない状態だ。


ドオォン……!!


 爆音が響いた瞬間、温泉施設の中心にあたる大浴場の床が割れ、大量の熱湯とガスが吹き上がる。天井までの高さを超える水柱に加え、魔導エネルギーが混ざって火柱じみた現象が起こり、浴場の構造があっという間に崩壊していく。


「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。リゾート開発は……爆死ッ……!!」


 銭丸の絶叫は熱水と蒸気にかき消され、崩落する天井の下敷きになりながら薄れゆく意識の中で断末魔を上げる。さらに爆発的な蒸気圧が周囲の建物にも波及し、火山の噴火にも似た轟音が温泉街を飲み込む。



 翌日、華やかなリゾートホテルや温泉街だった一帯は、まるで天変地異が起きたかのように崩壊し、熱水が沸き立つ巨大なクレーターが形成されていた。廃墟と化した建物、折れた柱、砕けた魔導パイプ……すべてが泥と湯けむりにまみれ、惨憺たる光景が広がっている。


「せっかく完成したばかりの温泉リゾートが……」


「大量のお湯が噴き出して、そのまま地盤が崩れたらしい。まさに最悪だ」


 人々は肩を落として呆然とする。投資家や商人、地元の村人も大損害を受け、せっかくの“観光立国”の夢が一瞬で消え去った形だ。もちろん、毎度のごとく銭丸の姿はなく、「あの噴き上がる湯の中で無事なわけない」と言われる一方で、「あいつだからなあ……」と複雑な顔をする者も。


 こうして王都近郊の温泉リゾート計画は、大きな期待と華やかな幕開けをした矢先に、湯と蒸気の大爆発で壊滅。癒しを提供するはずが地獄絵図に転じ、最後はやはり“爆死”の二文字がすべてを覆う結末となった。どれだけ綿密に準備しても、結局、銭丸の悪運(?)はそう簡単には変わらないのだろう。

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