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第33章「王宮大競技大会で爆死!? 華やかな舞台の奈落」

 「よくある闘技大会なんて、所詮は賞金目当ての選手しか来ないだろ? それより、王宮が主催する“華やかな競技大会”を仕掛けて、貴族も平民も盛り上げるのがいいんじゃないか!」


 黒峰銭丸は、王都にある広大な王宮の正門を見上げながら、いつものように胸を張った。彼の隣では水無瀬ひかりが一連の企画書を抱えつつ小さくため息をついている。毎度爆死を繰り返す銭丸が、またもや壮大なイベントを立ち上げようとしているのだから当然かもしれない。


「王宮の敷地で開催するって……そんなに簡単に許可が出るんですか?」


「出させたんだよ! 王子や改革派、それに貴族の一部が“国の威厳を示すイベントをやりたい”と言っててな。そこに俺が目をつけて大規模な競技大会を提案したのさ!」



 銭丸の計画は、王宮の広大な庭園や中庭、そして特設スタジアムを使って、さまざまな競技を一堂に集めるというもの。武術トーナメント、アクロバット演舞、馬上競技、魔導芸まで、多岐にわたる種目を一週間かけて行う。貴族や王族も観戦し、優勝者には“王宮褒章”が与えられる予定だ。

 バルドは選手の安全対策と警備を、メルティナは魔導芸や舞台裏の設備管理を担当。ひかりは資金や事務局との連携を仕切り、銭丸が全体プロデューサーとして動く形になった。


「話を聞くだけなら華やかで盛り上がりそうですね」


「だろ? 貴族だけの高尚な行事ではなく、庶民や外の観光客も入場できる形だ。これは大成功間違いなし!」



 主催者サイドが王宮の中庭に特設ステージや観客席を組み、各競技ごとに専用のエリアを準備し始める。貴族関係者は「国威を示す」と鼻高々で、外部からは強豪選手や珍しい魔導パフォーマーが集まる。

 銭丸は例によってスポンサーを募り、飲食やグッズ販売などを通じて莫大な収益を狙う。何度も爆死している男とはいえ、直近の企画書はしっかりしているように見え、周囲からも協力を得られていた。


「武術大会だけでもかなりの客が呼べる。それに加えて馬術やマジックショーまであるんですから」


「だろ? 華麗な競技が王宮の名を使ってアピールできれば、観光客もドッと来るぞ」



 やがて大会の告知が始まると、王都から近隣諸国まで多くの選手と観光客が集まり、期待は最高潮に高まる。銭丸が「これで経済が一気に潤う」と得意げに笑い、ひかりは「うまくいってくれればいいけど」と冷ややかに見守る。

 開幕当日、王宮の中庭には華やかな装飾が施され、貴族や王族、商人、庶民まで多彩な客が詰めかける。演奏隊がファンファーレを鳴らすと、選手たちが入場して拍手喝采。銭丸はステージの一角で満面の笑みを浮かべていた。


「見ろよひかり! あの賑わい。もう勝ったも同然だろ?」


「トラブルが起きなければ、ですけどね……」



 最初に行われた騎馬競技では、選手たちの華麗な馬さばきに観客が沸き、馬上での射撃や魔法演出もあって盛り上がる。続いて武術トーナメントでは各地の名だたる剣士や拳闘士が激突し、勝ち上がった者たちへの拍手と歓声が凄まじい。

 王宮上層部も「これは国威発揚にぴったりだ」と喜び、銭丸の評判がうなぎ登り。バルドは警備を念入りに行い、メルティナが魔導装置の点検を怠らず、今のところ事故らしい事故は起こっていない。


「ここまで完璧にいくと、本当に成功するかもしれませんね」


「うん。もう爆死なんか起きるはずがないさ。これだけ対策してるんだから!」



 ところが大会中盤、馬術競技の後に行われる予定だった“魔導芸パフォーマンス”に登場するはずの演者が、直前になって飛び入りメンバーを増やしていることが発覚。銭丸は「そんな変更は聞いてない」と問い合わせるが、演者側は「王族から直接依頼を受けた」と言い張る。

 どうやら貴族の誰かが勝手に追加演者を呼んだらしい。メルティナが怪しんで魔導装置を調整しようとするが、時間が足りずに演者たちがステージに上がってしまう。


「予定外の演出をやるつもりか……? 何かトラブルの予感が」


 ひかりが嫌な汗をかきながらモニターを見つめる一方、銭丸は「平気だ、そんな簡単に爆死はしない」と豪語する。



 新入り演者は怪しげな魔導ショーを披露し、巨大な火柱や光の帯を出す大技を連発。観客は目を輝かせて歓声を上げ、王族席も「面白いではないか」と好意的だ。だが、メルティナが裏で計器を確認すると、想定外の魔力消費が起きており、炉にかかる負荷が急激に増大していた。


「大変、これは設備が限界を超えそう。すぐ止めないと……」


「ステージで止めたら失礼だって……でも放っておくと危ないし!」


 バルドが制止に入ろうと舞台袖へ走り出すが、すでに演出がクライマックスに入っていて、火と光が制御を失い始める。次の瞬間、派手な火球が舞台上から飛び出し、ステージ装飾や楽器に引火してしまう。



 観客がどよめき、熱気と爆発音が周囲を襲う。王族席が慌てて後ずさるが、火球が跳ね回って別の照明装置や音響設備へも燃え移り、ステージがあっという間に火の海になっていく。

 銭丸は慌てて放送魔導具を使い、「退避を!」と叫ぶが、時すでに遅し。演者たちがパニックを起こし、観客席の貴族も雪崩を打って逃げる形となる。警備隊も混乱に巻き込まれ、火薬や花火が保管されていたところから誘爆が起こり始める。


「うわああっ……! なんでこうなるんだよ!」


 舞台袖で炎と爆風に煽られながら、銭丸は絶叫。王宮の庭園が一部燃え出し、支柱が崩壊している箇所も見られる。人々は右往左往して出口へ殺到する。



 「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。王宮大競技大会は……爆死ッ……!!」


 銭丸は吹き飛ばされた照明装置の下敷きになりながら、断末魔の如き言葉を発した後、王宮の庭が轟音を立てて炎上する中にかき消える。最後の大爆発でステージが盛大に崩壊し、激しい焔と土煙があたりを覆い尽くす。

 せっかく華やかに盛り上がった競技大会は、ほんの一夜にして焼け焦げた廃墟と化し、大勢の観衆は無我夢中で逃げ去るしかなかった。



 翌日、王宮近辺には煤と瓦礫が散乱しており、せっかくのイベントは完全に破綻。貴族は激怒し、選手や観衆は落胆し、血眼になって責任の所在を探そうとしているが、いつものごとく銭丸の姿は見当たらない。

 人々は口々に「あれだけ盛り上がったのに最終的に大爆発かよ……」「見事なまでの結末だ」と呆れ返り、救護隊が懸命に捜索する。だが、あの規模の炎を目にすれば生き残れないだろう――少なくとも常識的にはそう思われた。


「どうしていつもこうなるんだ……祭りと呼べば聞こえはいいが、まるで災厄だな」


「銭丸がやると、毎回結末が燃え上がって終わるんだよな。ある意味、伝説になるかも」


 そんな自嘲混じりの声があちこちで聞かれる。王宮が誇るはずだった華麗なる競技大会は、一瞬の輝きとともに火柱に呑まれ、まさしく爆死というおなじみの結末を迎える。

 いつ復活するとも知れない銭丸の行方は闇の中。だが、人々の記憶にはまた一つ、「壮大な失敗」の歴史が刻まれることになった。

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