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第28章「街灯革命で爆死!? 夜を飾る幻想の末路」

 「夜道が暗くて危ないなんて、時代遅れだろ? ならば、どこもかしこも魔導照明でライトアップして、夜を美しく変えてしまおうじゃないか!」


 黒峰銭丸は王都の一角で、薄暗い街灯を見上げながら勢いよく言い放つ。いつも通り、その言葉はどこか無謀さを孕んでいるが、これまでの失敗を踏まえたのか資料や契約書類をしっかり揃えているようだ。彼の隣では、水無瀬ひかりが大判の照明設計図をめくっていた。


「街灯を変えるだけじゃなく、夜景全体を魔導イルミネーションで飾るんですよね。キレイになりそうですが、費用も相当かかるし、安全面は大丈夫なんですか?」


「そこは任せろ。魔導ギルドと組んで、火や爆発のリスクを極力抑えた照明システムを導入するんだ。これで町中が夜でも明るくなるし、観光客が増えて商店街も潤う!」



 銭丸は市役所や商業ギルド、貴族たちにプレゼンし、魔導照明プロジェクトへの出資を取り付けた。要点は「夜道の安全確保」と「観光誘致」。華やかに光る街ならイベントも増やせるし、商店街が夜まで賑わうという狙いで説得。今回も複数のスポンサーが興味を示し、資金は順調に集まった。


「前回の下水道改革といい、インフラ系は需要が大きいですもんね。トラブルさえなければ大儲けですよ」


「なにしろ夜景は人を引き寄せる魔力がある。絶対当たるさ」


 ひかりは「爆死しなければいいですが……」と小声で漏らしつつも、しっかり書類を整え、投資家への進捗報告を怠らない。



 街灯革命は三つの柱から成る。まず一つは既存街灯のリフォーム。老朽化したガス灯や油灯を撤去し、代わりに魔導石を使ったライトを設置する。続いて広場やメインストリートのイルミネーションを大規模に構築。最後は裏路地などの暗いエリアにも安全な照明を入れて、犯罪を抑止する――というものだった。


 バルドが工事の進行を監督し、メルティナは魔導石の選定や火力調整のマニュアルを作成。ひかりは経理と契約管理を担当し、銭丸は資金と交渉を一手に引き受ける。


「これだけチームで分担すれば、ミスなんか起こらない。完璧だろ?」


「本当に……今回はそうであってほしいですね」



 現場では街灯の取り換え作業が進み、各所に魔導照明用の配線が張り巡らされる。商店街の店主たちは「明るくなるのは嬉しい」と期待し、夜のイベントを計画し始めた。銭丸は「これで観光客が増えれば宿や飲食も繁盛する」と意気軒昂だ。


「華やかなイルミネーションを観に、人がわざわざ王都にやってくる。商店街も活気づくだろうな」


「でもあまり詰め込みすぎると配線の負荷が大きそうなので、そこは注意してくださいね」


「メルティナが調整してるから問題なし。よーし、どんどん設置進めてくれ!」



 街灯や飾りランプが増えるにつれ、夜の王都は徐々に光に包まれていく。試験点灯されたメインストリートでは、色とりどりの魔導イルミが点滅し、人々は感嘆の声を上げる。バルドが警備を見回る中、行き交う若者や観光客が増え、まるで祭りのような賑わいを見せ始めた。


「すげえな、夜道がまるで昼みたいに明るい」


「これなら事件や事故も減るだろうし、商売も夜遅くまでできる」


 ひかりは「ここまでは順調ね」と胸を撫でおろす。銭丸は売店や屋台が夜まで営業しているのを見て「もうけるなら今のうちだ」とさらに出資拡大を検討し始める。



 だが、イルミネーションの調整が本格化するにつれ、小さなトラブルが散見される。複数の街灯が異常に熱くなる、夜になると回路が不安定でチラつきがひどい、飾りランプの魔導石が時々破裂音を立てる――などの報告が入ってくる。

 メルティナは「これは設置数が多すぎるせいかも」と指摘するが、銭丸は「いや、予定通りの規模だし、配線をもう少し強化すれば済むだろ」と言い張り、追加工事を発注。現場スタッフが徹夜で補修してギリギリ持ちこたえる形だ。


「なんだか、対応が後手後手になってません?」


「大丈夫。開業パーティまであと少しだし、そこを乗り切ればメンテ時間も取れるさ」



 そんな折、正式なお披露目イベントが近づき、銭丸は「夜のイルミフェス」を盛大に開催しようと提案する。メインストリートから広場まで一斉に光を灯し、音楽やパフォーマンスで人を集める作戦だ。商店街や投資家も乗り気で、宣伝に力を入れる。

 当日夜になると、たくさんの客が訪れ、煌びやかなランプの海に歓声が起こった。予想以上の集客に銭丸は大喜びし、ひかりも「これは本当に成功かも」と安心しかける。


「ここまで大成功なら、あとは慎重に運営を続ければ……」


「まったく、その通りだ。もう爆死なんて起きんさ!」


 しかし、すでに街の裏通りで異変が起き始めていた。



 裏通りのランプが激しく点滅し、発火寸前の高温を発していると連絡を受け、バルドが駆けつける。どうやら過剰に配置されたランプの回路に集中負荷がかかり、魔力の流れが限界を超えたらしい。

 スタッフが制御盤を落とそうとするが、回路がショートして動かない。次の瞬間、火花が飛び散り、ランプに使われていた魔導石が連鎖的に弾け始めた。


「まずい、そこ離れろ! 魔導石が破裂するぞ!」


 周囲の人が悲鳴を上げて逃げようとするが、ちょうどその一帯には参加者が多く集まっていた。ランプから噴き出した高温の光が布装飾や看板に燃え移り、火の手が一瞬にして広がる。


ドオォン……!


 過剰な熱を帯びた回路が爆発的に破裂し、天井の飾りやランプ同士が誘爆。銭丸が駆けつける頃には、狭い通りが火柱に包まれ、魔導石の破片が飛び交い、悲鳴が響き渡っていた。



 大混乱のまま炎は広場へも迫り、魔導制御盤がバタバタとショート。何百ものランプが一斉に暴走し、電飾や布飾りがあちこちで火を噴く。まるで炎のドミノが一帯をなぎ倒すような勢いだ。客たちは逃げ惑い、収拾がつかない。


「落ち着け! 消火器具を持ってこい! ああっ、そっちも火が……」


 メルティナやバルドが必死に消火に当たるが、次々と飾りランプが高温破裂を起こす。街路の屋台で保管されていた油やガスにも引火し、連鎖爆発が起きるのも時間の問題だった。

 銭丸は爆発の衝撃で転倒しながらもうめき声をあげる。


「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。街灯革命は……爆死ッ……!!」


 その瞬間、巨大な飾り看板が崩れ落ち、銭丸ごと地面に叩きつけるように炎が襲いかかる。きらびやかな光が地獄の火柱へと変わり、人々の悲鳴の中で街のメインストリートは破壊されていく。



 翌朝、華やかなイルミネーションで飾られるはずだった通りは、黒焦げの瓦礫が散乱する惨状を呈していた。商店街も被害を受け、建物は焼け落ち、魔導石の破片が地面に転がっている。想像を絶する災害に、出資者や市民は愕然と立ち尽くすばかりだ。


「夜を明るくするどころか、昼でも真っ黒じゃないか……」


「せっかく新しい観光名所になるはずだったのに、こんな……」


 人々が失意の声を漏らす中、例によって黒峰銭丸の姿はどこにもない。あれだけの炎と爆発に巻き込まれれば、生き延びるはずなどない――だが、誰もが「いや、あの男だし」と妙な期待を拭えずにいる。


 結局、夜を飾るはずの街灯革命は大爆死へと終わりを告げ、大破壊をもたらしただけだった。街には焦げた看板や壊れた魔導回路が無残に残る。カネを求めた大規模プロジェクトがまた一つ、炎の中で散ってしまったのだ。

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