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第27章「ペット&魔獣ホテルで爆死!? 癒しビジネスの大混乱」

 「人間だけが宿に泊まる時代は終わりだろ? 今やペットや魔獣を大事にする客が増えてる。だったら“ペット&魔獣専用ホテル”を作って一儲けしようじゃないか!」


 黒峰銭丸は、郊外の広い敷地を見渡しながら、力強い声音で提案した。いつもと同じく無謀に見えるが、ここ最近の失敗続きで多少は慎重になったのか、周到な準備をしている素振りがある。彼の隣では、水無瀬ひかりが手厚い契約書類をチェックしている。


「ペットと魔獣って……普通に犬や猫のレベルを超えて、大型生物まで含むんですよね? 本当に管理できるんですか?」


「そこをやるのが、今回の肝だ。人々はかわいい動物だけでなく、魔獣や異種ペットを飼いたがるが、飼いにくい。そこを専門ホテルがしっかり面倒を見る。大ヒット間違いなしさ!」



 銭丸は地元の貴族や商人に出資を募り、「ペット&魔獣ホテル」のコンセプトを説明する。留守中に預けるだけでなく、食事・健康管理・トレーニングなどのサービスを提供し、高価格帯で利潤を得る目論見だ。

 バルドは警備面を担当し、メルティナは動物や魔獣の生態を研究していた知識を生かして飼育環境を整える。ひかりは経理や宿泊管理システムを準備して、運営計画をしっかり固めていく。


「結構いい線いくかも。大人しいペットだけでなく、やや危険な魔獣まで対応すれば需要は広いですからね」


「そうだろ? しかも貴族や大商人なら、ペットに金を惜しまない。しっかりサービスを揃えれば儲かる!」



 建設が始まると、広い敷地に“普通の小型動物用ホテル”と“魔獣専用区画”が分けられて整備される。小型犬猫用の部屋は可愛い装飾が施され、魔獣用区画は頑丈な壁や魔導バリアを備えて大きめのケージを用意。

 銭丸は「逃げ出しやすい猛獣には専用の鍵付き扉とセキュリティ魔法陣を設置しよう」と熱心に指示し、バルドが「念入りに檻の強度も確かめろ」と職人たちを監督する。


「過去に猛獣が逃げ出して大惨事ってパターンがあったんじゃ……」


「バルドの目があるから、今回は大丈夫だ。念入りにやるよ」


 ひかりはため息をつきながらも、実際に工事の計画書や安全マニュアルがしっかりしているのを確認し、「意外とちゃんと対策してるのね」と少しだけ安心する。



 ペット&魔獣ホテルは完成に近づき、宿泊予約の受付を始めると、すぐに多くの客が興味を示した。小動物を飼う家庭や、旅先に連れまわすには危険な魔獣を持つ貴族など、預け先を求める客層は思った以上に多かったのだ。

 銭丸は「見ろ、期待通りだ」と上機嫌でスタッフを増強し、ひかりはシステム導入の最終チェックを行う。メルティナは動物の健康管理や餌の配合などに専念し、バルドが施設警備を強化する。


「これでトラブルが起きなければ、今度こそ成功するかもしれませんね」


「そうとも! 念入りにやってるから、もう爆死なんかあり得ないだろ」



 いよいよグランドオープンが迫り、最初の宿泊客(ペット&魔獣)が一気に集まってくる。小型犬や猫から、大型獣、さらには珍しい鳥類や爬虫類、魔力で強化された魔狼やワイバーンの子どもまで、多種多様だ。スタッフたちが慌ただしく迎え入れ、チェックイン手続きを進める。


「数日だけお願いします」「我が家のペットは少し神経質なので注意してほしい」といった要望が飛び交い、バルドやメルティナは必死に区画分けを調整。施設内は賑やかで、微笑ましい光景にも見えた。


「ほら、あの魔狼はすごくおとなしいですね。トレーナー付きなら問題なさそう」


「この子猫めちゃくちゃ可愛い……お客さんは喜びそうだ」


 スタッフもペットたちにほっこりしながら仕事に励み、銭丸は「癒しビジネス大成功!」と舞い上がっている。



 しかし、日が経つにつれ、施設の裏で小さなトラブルが起き始める。餌の保管場所から嫌な臭いがする、猛獣用の柵がどこかで傷んでいるかもしれない、などの報告が相次ぐ。

 銭丸はすぐにチームを送って対処し、「こういう細かい問題は早めに潰さないと爆死に繋がるからな」といつになく入念に対応を続けた。実際、倉庫の食材管理を改善し、柵の修繕を行うことで大きな事故は防げたように見えた。


「すごい、今回はしっかりメンテナンスしてますね」


「だろ? これだけ注意すれば何も問題ないさ。あとはお客さんに快適な滞在を提供するだけだ」



 ところが、ある夜に宿泊していた大型魔獣が急に体調を崩し、暴れ出す事件が起こる。メルティナが駆けつけ、鎮静薬を試すが、思うように効かない。どうやらこの魔獣には特殊な毒性の餌が与えられた可能性があり、体内で異常反応を起こしているらしい。


「誰かが変な餌を与えた? そんなバカな……」


「本獣の飼い主が持ち込んだ特別な補助餌かもしれないけど、成分が合わなかったのかも」


 バルドが「一度隔離しよう」と言うが、暴れ回る魔獣が柵を揺さぶり、大声で咆哮を上げる。隣のゲージのペットたちが怯えて悲鳴を上げ、パニックが広がる。



 悲鳴や吠え声が施設中に響き、他の動物たちも興奮状態に陥る。猫や犬が逃げ出そうとし、猛獣エリアでは複数の檻が暴れの連鎖で揺れ始める。スタッフが必死に止めに入るが、あちこちで脱走未遂が発生。


「まずい、こんなことになったら大騒ぎだ!」


「早く鎮めろ! 犬や猫は外に出さないように……猛獣はもう少し強固な檻に移そう!」


 銭丸はアナウンスで非常警報を流し、バルドやメルティナが誘導に当たる。ひかりは客の来館を一時停止し、落ち着くまで見学も中止した。しかし、あまりに多くの動物が同時に興奮し始め、収拾がつかなくなっていく。



 吠え声と咆哮が絡み合う中、ホテル内部の仕切りが崩され、餌や薬品の倉庫に魔獣が突っ込んでしまう。そこに保管されていた清掃用の火薬や魔導薬が散乱し、激しい衝突や引火の可能性が高まった。


「くそっ、こんなところに薬品を置くなと言ったのに……!」


「すぐに撤去するはずだったんですけど、タイミングが合わなくて……!」


 スタッフが口論しながら駆け寄った瞬間、巨大な魔狼が暗がりで飛びかかり、清掃用の火薬を踏み割る。そこから小さな爆発が起き、閃光に驚いた他の動物がパニック状態となる。



 凄まじい混乱が続き、ペットたちが右往左往して脱走や同士討ちが拡大。猛獣エリアの一部が火の手で崩れ、屋根材が落下して内部を塞ぐ形になる。

 銭丸も現場に急行し、火薬を拾い上げて外へ運び出そうとするが、またしても別の魔獣が突進し、銭丸を吹き飛ばす。天井からは火の粉が落ち、乾燥した壁材に燃え移る。


「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。ペット&魔獣ホテルは……爆死ッ……!!」


 そんな断末魔が聞こえたかと思うと、一気に爆炎が走り、火と獣の叫びが施設全域を覆いつくす。脱走した動物たちが火の中を逃げ惑い、大混乱のままホテルは激しい炎に呑み込まれていく。



 翌日、広い敷地に立ち上る黒い煙と瓦礫の山が、ペット&魔獣ホテルのなれの果てを物語っていた。小動物は逃げ散って見つからず、猛獣の一部はどこかへ消えてしまい、建物そのものも焼け落ちて跡形もない。飼い主たちは怒りと呆れで頭を抱え、投資家は途方に暮れる。

 そんな中、黒峰銭丸の姿は見当たらず、「さすがに今回は駄目か」と誰もが口を揃える。あまりに強烈な爆発と火災に巻き込まれては、生きているわけがない――だが、これまでもそう言われて蘇ってきたのが銭丸なので、誰一人安心できないのが現実だ。


「こんなビジネス、今までで一番カオスかも……動物は無事なのか?」


「さあ……たぶんあちこちに散ってるんじゃないか。捕獲しないと街が危ない」


 憔悴したスタッフたちが廃墟を眺め、失った計画と資金を嘆く。ペットと魔獣のための“癒し”ビジネスは、恐怖と爆炎の惨劇によって瞬く間に崩壊し、いつものように銭丸は生死不明――まるで悲喜劇の幕が下りるように、また一つの大事業が爆死で幕を閉じたのだった。

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