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第29章「グルメフェスで爆死!? 食の祭典が燃え上がる結末」

 「飯がうまい町には人が集まる。だったら、一大“グルメフェス”を立ち上げて、全国の名物料理を集めれば、とんでもない儲けになるだろ!」


 黒峰銭丸は、王都の広場を見渡しながら自信満々に言い放つ。今回は、食をテーマにした大規模イベントを企画し、市民や旅行者だけでなく貴族や外国人観光客まで呼び込もうという目論見だ。彼の隣では、水無瀬ひかりが新設のフェス運営事務局でガイドラインを確認している。


「食の祭典って、屋台や飲食ブースが大量に並ぶわけですよね。火器を使う店が多いし、衛生管理も難しいですよ」


「心配ご無用! 消火設備やゴミ処理、食品衛生の仕組みをちゃんと作ればいい。今回は抜かりなくやるんだよ」



 フェス開催のため、銭丸は市街地の大きな広場を借り切り、周辺道路も歩行者天国にして屋台をびっしりと配置。出店希望が殺到しており、各地の名物料理やスイーツ、珍しい魔獣肉まで盛りだくさんだ。観光客も「ここに来れば世界中の味が楽しめる」と期待に胸を膨らませている。


「これなら絶対当たる。食のフェスはみんな大好きだからな!」


「とにかく安全対策を念入りに。火の取り扱いもそうだし、食中毒が出たら大問題ですよ」


「メルティナに衛生検査を頼んであるし、バルドも警備を固めてる。大丈夫さ!」



 工事や準備が進み、グルメフェスの初日。まだ朝早い時間にも関わらず、すでに広場には行列ができ始める。屋台が所狭しと並び、芳ばしい煙やスパイスの香りが漂ってきて客の食欲をくすぐる。銭丸はステージ上で「いよいよ食の祭典のスタートだ!」と開会宣言を行い、拍手喝采で幕が上がる。


「すげえな、最初からこんな人出とは……!」


「出店者も張り切ってるみたいですね。ちゃんとオペレーションが回ればいいんですけど」


 ひかりが人の流れを見守りながら、ポイントごとに誘導スタッフを配置して混雑を防ごうとする。バルドは警備員を動かして不審物のチェックを徹底し、メルティナは食品衛生の検査を巡回しながら行っていた。



 数日間の開催期間のうち、初日から中日までは大盛況。料理の香りと人々の笑い声が広場を包み、ステージで行われるクッキングショーや食レポ企画も大好評だ。銭丸は売上速報を見て「もう大成功と言っていいだろ!」と声を弾ませ、出資者もニコニコとうなずく。


「いや、今回こそ爆死せずに終わるかもな。客の満足度が高いし、店も問題なく回ってる」


「念のため、残り数日もしっかり注意してくださいね」


 ひかりは気を緩めず、屋台が増えすぎてゴミが溜まらないか、火器の扱いがずさんになっていないかなど監視を続ける。ここまでは問題らしい問題は起きていない。



 最終日。朝から特に人出が多く、絶品料理コンテストや限定メニューが用意され、客の熱気はすさまじい。そんな中、ある屋台で「肉が変な匂いがする」という客の訴えがあり、メルティナが駆けつけたところ、腐りかけの魔獣肉を冷蔵管理していなかった事実が発覚。すぐに撤去して大事には至らず、何とか危機回避したかに思えた。


「危なかったですね。食中毒が出てたら大問題でした」


「でも、すぐ処分したからセーフだろ? ほら、爆死フラグは消えたさ!」


 銭丸は軽く笑い飛ばすが、やや嫌な空気が広場を包む。どうやらトラブルは一つだけではなかったようだ。



 さらに、別の屋台で使用している燃料タンクにヒビが入っていると報告が入る。そこでは高温で炒める料理が大人気で、長時間の連続使用によりタンクが熱を帯び、漏れの危険があるらしい。スタッフが緊急で修理班を呼ぶが、フェス最終日のピークタイムで多忙を極め、対応が後回しになってしまう。


「やばいな、ヒビから燃料がこぼれたら火が移るかも」


「すぐに止めれば売上が落ちる! オーナーが嫌がって応じてくれません……!」


 こんなやり取りが交わされる中、銭丸も「一旦営業を止めろ」と強く言うが、客の列がすでに長く、オーナーはどうしても最後の売り上げを捨てがたい。結果的に強行営業し続ける形となった。



 火力をフルに使う料理は噴き上がる炎が見せ場のような演出で人気を博していたが、ヒビからにじむ燃料がとうとう耐えきれなくなったらしく、ついにボンという音とともにタンク底が破裂。屋台の周囲に炎が走り、客たちが悲鳴をあげて後退する。


「ぎゃあっ! 火事だ!」


「消火器具を持ってこい!」


 スタッフが消火に走るが、タンクから噴き出す燃料で一気に火勢が増し、隣接する屋台にも広がってしまう。加えて他の屋台で保管していた油やアルコールにも火が飛び、次々に爆発を誘発する流れになってしまった。



 あっという間に火柱が上がり、人々がパニックで押し合いへし合いになる。炎がステージ装飾に燃え移り、魔導スピーカーがショートして火花を散らす。連鎖的に屋根やテントに引火し、会場全体が真っ赤な火に包まれていく。

 銭丸は客を避難させようとするが、激しい爆風に巻き込まれて転倒。視界の端ではテント骨組みが崩れ落ち、燃え盛る肉鍋が宙を舞って落下している。


「カ、カネは……裏切らない……女は……たまに……裏切る……。グルメフェスは……爆死ッ……!!」


 断末魔と同時に大きなタンクが誘爆し、会場の中央部が吹き飛ばされる。激しい衝撃波と炎が渦を巻くなか、銭丸の姿は爆煙に飲みこまれて見えなくなった。



 翌日、盛り上がりを見せていた広場と屋台群は無残な焼け跡となって残っていた。天を衝くようだった活気は一夜にして灰へと変わり、出店者と投資家、何より来場客も大損害を被る結果に。

 大勢の負傷者や焼失した店舗を前に、街の人々はため息と嘆きしか漏らせない。肝心の銭丸の姿はもちろんどこにもなく、「あれでは助かるわけがない」と皆が思う一方で、「あの男なら、またどこかで生きてるんじゃないか」とも囁かれている。

 こうして、食の祭典として大々的に宣伝されたグルメフェスは、一瞬の栄華を見せた直後に炎と爆発で幕を下ろした。うまい料理を楽しむはずが地獄絵図となり、結局またしても銭丸の大火傷(?)に終わるのが運命なのだろうか。勝利を確信した矢先の大爆死は、誰もが慣れっこになりつつあるとはいえ、やはり衝撃的な結末だった。

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