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神秘学メンズラブシリーズ"nihil"  作者:
第四巻『血を流し死で洗い 命枯らすまで 荊棘たれ。』(CoSH Exc.2)

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Example 3-14

 瓦解への序幕か、それともバスカヴィルの躍進の始まりか。新聞や雑誌はその二極化が激しくなった。ゴシップ誌はやれROZENが潰れるだの、遂に地方自治軍の時代だ、だの書き立てているが、ROZEN寄りのメディアはバスカヴィルの声明文を高く評価した。


「しかしこれは面白い記事だな。」


 と、バスカヴィルが取り上げたのはアッカーソン社のゴシップ誌『サンライズ』である。今までのROZENの瓦解、そして新しいROZENの誕生、二つの要素を均等に取り上げている。アッカーソン社のゴシップ誌のダメなところはこういう斬新性のある記事だった。どちらかに極限的に寄った記事を書いていれさえすれば売れるというのに、この会社は売れない方向への斬新性をどうしても求める。


「これは五大筆頭家と皇帝の戦いではなく、最早私と五大筆頭家の争い、だそうだ。」


「よくROZENの内実を見られていますね、この記事は。体罰の温床化が始まったのはほぼほぼヴィステンバッハが始まってからでしたから。」


 それまでも体罰は勿論行われていて、適宜必要な措置を取っていたわけだが、ヴィステンバッハの時代では殆ど何もされていなかった。それこそ体罰の助長というものである。


「五大筆頭家とヴィルの戦い……か。それはもう奴らの呼び方は反皇帝派じゃなくていいな。」


 一緒に記事をあらかた読んでいたクラヴェーリは。机に腰を落ち着けてにやりと笑った。


「反元帥派。奴らを呼ぶにはこれで十分だろ。な?」


「クラヴェーリ君。まさか軍の中で内戦を始める気か。」


 と、言いつつもパーシヴァルはその呼び方に不足はないと思ってしまっていた。


「いや、もう起きているよ。私が就任したあの日から。」


 バスカヴィルは演説を持って宣戦布告をし、五大筆頭家は当日の挨拶でもって宣戦布告を返した。彼らを反元帥派と呼ぶ以外に、一体なにがあるというのだろうか。


 * * *


 バスカヴィルの最初の攻撃の素早さに度肝を抜かれた五大筆頭家は、カミルとギャブリエルを除いて鬱々しい表情だった。第二塔の最上階に位置するウルリヒの執務室で集まったこの錚々たる顔ぶれは、今回の声明について書かれた紙一枚を睨んでいた。


「何です? この重苦しい雰囲気。」


 ナルキッソスのごとき美しい金の巻き毛を指に絡めながら、ギャブリエルはそんな間抜け面を下げる彼らについに苦言を呈した。


「重苦しくもなりましょう。これでバスカヴィルは第二塔の実権を握ったようなものですから。」


「ふふ、それはその通りですわね。でもまあ、こちらの生粋の軍人さん達が、あんな顔の綺麗な男にそうほいほいとついていくと思われます?」


 それは確かにな、と呟くウルリヒに対して、しかしギャブリエルの考え方は真反対だった。彼の息子もそれはそれは銃の腕前は上の上に入るほどの手練れだった。毎日狩りに連れて行き父の自分よりも多く獲物を取って帰ってくるような青年であったが、それを呆気なく殺したのはバスカヴィルだ。


(いくら顔が綺麗で舐められているとはいえ、結局武芸に秀でているのであれば第二塔を支配領域に入れるのは時間の問題。)


「まずは様子を見ましょう将軍閣下。下手に手を打って自爆するのもまた問題だ。」


「確かにな、向こうの手の内も分からんとなれば……。」


 カミルの言葉には一理あった。まだ彼らはバスカヴィルがどういう戦い方をするのか、その一例しか見えていない。しかし、とカミルとギャブリエルも視線を合わせた。やはりお互い同じ事を思っている事を感じ取って、先にギャブリエルが口を開いた。


「かと言って、後手に後手にと回るのも問題ですわ。こちらからもさりげなく仕掛けていかなければ。」


「それはその通り。……こちらから手を打ちましょう。雑誌類や部下を使って閣下のある噂を流布するのでいかがか。」


 ほう、とウルリヒは目を細めた。情報収拾に事かかないカミルの事だ、相当良からぬ噂に違いない。


「良いな。ではまずはカミルのその手法で。次の懇談にはファラレーエフも呼べ。今日はこれで解散とする。」


 は、と二人は頭を下げると、ウルリヒの執務室を後にした。


 * * *

毎日夜0時に次話更新です。

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