第四十四話
あれから数日後。
国王とバージル王子の公開処刑当日。
処刑が行われる王都の広場には、大勢の民が押し寄せていた。
そして今俺は処刑場の最前列に居る。不備がないか確認するためだ。
国王とバージル王子は、首と手を一枚の板で固定する枷で拘束され、うつ伏せに寝かせられている。猿轡もされ、声を出せないようにされてるようだ。
そして処刑方法はギロチン処刑。
...かなり野蛮な方法だな。
だけど、こちらの世界ではメジャーらしい。やっぱりこの世界は命が軽い。
処刑場は鉄でできた柵で覆われているけど、人は無理だが小さいものは通り抜けできる。なので民は、国王と王子に石を投げて鬱憤を晴らしているようだった。
そして俺はそれを止めはしない。彼らにとって国王達は、自分達を苦しめた元凶なのだ。家族を帝国兵に殺された人もいるだろう。
それを辞めさせるのは酷だ。
そして遂にその時がやってくる。
ギロチンに繋がっている縄を切って、処刑を完了するときが。
この時ばかりは民も石を投げることや、罵声を浴びせることを止め、固唾を飲んで見守っている。
マリーちゃん達貴族も、少し高い位置にある貴族用の豪華な物見櫓でその様子をみていた。
そして縄を切る前に、処刑執行人が国王と王子の猿轡を外す。
「何か最後に言いたいことはあるか?」
処刑人が問う。
「ぶはっ!ち、違う!俺は...俺は国王なんかじゃない!」
「お、俺もだ!俺も王子とは別人だ!」
「黙れ売国奴め!この期に及んで命乞いをするか!お前らに妾と同じ血が流れていると思うとゾッとする!
...もういい、処刑しろ!」
猿轡を外された国王と王子が必死に言い訳をするが、マリーちゃんが一喝し、処刑はなされた。
2人の首が飛び、広場に転がる。
そして国民の歓声が上がった。
不備は見つからなかったな。
新しい王女の誕生を祝う言葉を叫ぶ人もいるが、アレは王国側が用意したサクラだろう。おー怖い怖い。もう自分の支持率を上げようとしてらっしゃる。マリーちゃん結構強かだなぁ。
もう気づいていると思うが、あれは本物の国王と王子ではない。俺が人化の魔法で国王と王子に変身させた帝国兵だ。
バブーという名を教えた後、俺がマリーちゃんから受けた相談は、俺が自分に使ってる人化の魔法を他人に使えないかどうかを聞くものだった。
普通の人化の魔法は、ほんのちょっと外見が変わるだけの魔法なのだが、魔人である俺が、これでもかと魔力を注ぎ込んで発動すると、なんと完全に別人に変化させる事ができた。
俺が処刑場の最前列にいた理由も、万が一処刑最中に魔法が解けてしまった場合に備えての為だ。
国王とバージル王子の変わり身には、ルアー帝国への牽制として捕虜にしていた帝国兵が選ばれた。牢屋に沢山いるし、敵国兵の癖に、捕虜としての待遇が悪いとか五月蝿い。1人2人いなくなっても大した問題ではないだろう。
王城を攻撃する前に人質で脅してきた奴らなので、なんの良心も痛まなかった。
...俺もこの世界の考えに染まってきたのかな?
国王と王子は、最初は生き恥を晒したくない。早く殺してくれ、と言っていたが、マリーちゃんの「今は妾がお父様より1番偉いの。女王の言うことが聞けないの?」の一言で強引に黙らせていた。とんでもない職権乱用だ。
もしかしたら、国王に女王になると宣言した時、ここまで考えていたのかも知れない。
国王とバージル王子が生きていることを知っているのは、俺を含めてほんの一握り。情報が漏れることはないだろう。
国王、王子共に人目につかないよう、ひっそりと暮らし、時々マリーちゃんに政策のアドバイスをする相談役になるそうだ。
良かった良かった。
やっぱりマリーちゃんには元気な姿を見せてほしかったから、身内を殺さずにできてホッとしている。
こうして無事に処刑は終わり、褒章の授与式へと移った。
ーーー
俺は玉座のある、大きく荘厳な一室に通された。
ここで授与式が行われるっぽいな。
マリーちゃんの命で仕立ててもらった豪華な服に袖を通した俺は、まだ授与式の準備をしているのをいいことに辺りをキョロキョロと見回す。
王国貴族が勢揃いしている。玉座につながる赤い絨毯を挟んで、所狭しと並んでいた。げぇ、授与式本番はこの前を歩くのか。緊張しそうだな...。
お、トゥーメト公爵だ。
1番玉座に近い所にいるから、偉い人ほど王様に近い位置にいるんだな。
お、カズラ氏がいる。
後から聞いたが、カズラ氏は護衛騎士じゃなくてマリーちゃんの近衛騎士らしい。爵位は騎士爵。
騎士爵は王国では爵位が1番低い。だからだろうか、結構ここから近い所にいる。
...ちょっと緊張を和らげる為に話相手になってもらおう。
まだ授与式まで時間があるはず。
カズラ氏が立っている貴族席まで近寄る。
「こんにちはカズラさん。」
「おお、これは魔人様。どうしましたか?」
「いえ、少し聞きたいことがありまして。」
「何でしょうか?...ああ、護衛契約の報酬なら大丈夫ですよ。この授与式で正式に賜れるはずです。」
「ありがとうございます。ですが聞きたいことはそのことではなく...あの玉座の横にいる方は誰でしょうか?」
まだマリーちゃんが現れていないため空席の玉座。
その横に見知らぬ老人が背筋を伸ばして立っている。
「ああ、あれはガーデン王国の宰相。パンジー宰相です。
前王様と一緒に地下牢に囚われていたので、見覚えがないのは当然です。」
「あの方が...」
あー。宰相。宰相か。
確か宰相って職業は王様の次ぐらいに偉いんだっけ。
玉座の横にいるのも納得だ。
「パンジー宰相殿は今回の褒章の選定を女王様に任されていたはずです。」
「へぇ。褒章まで宰相殿が決められるんですね。」
凄い激務そうだな宰相って。
ぜってーやりたくないわ。ブラックなのは前世だけで十分だ。
「む、そろそろ始まるみたいですぞ。魔人様も貴賓席へもどられては?」
「もうそんな時間ですか。話に付き合ってくださり、ありがとうございました。」
「いえいえ。私ならいつでもお相手いたします。
何たって今回の戦の1番の功労者様ですからな!はっはっは!」
「ははは...」
もう、カズラきゅんたら!最後にヨイショしてくるだなんてトキメイちゃうわ!
...まあ冗談はほどほどにしてさっさと自分の席に着席しよう。
席に座ってしばらくすると、玉座の後ろにある大きな扉がゆっくりと開き、マリーちゃんが登場した。
15話にマリーちゃんのイメージ絵を追加しました。




