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第四十二話

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敵の首領と思われた、第三王子バージルが、敵兵に捕まっていた。


国王と王妃と同じく、かなりやつれている。

俺たちを罠に嵌めるために、捕虜のフリをしているのかと思ったが、衰弱が酷い。騙すための演技ではなさそうだ。


「お父様やお母様ならまだしも、何故バージルお兄様を盾にするのかしら?あなた達の味方ではなくて?」


マリーちゃんが皆んなの疑問を口にする。


「マリー!バージルは味方だ!帝国に脅されていたのだ!」


マリーちゃんの問いに答えたのは、帝国兵ではなく、やつれた国王様だった。猿轡とかしてないから情報いい放題じゃねーか。いいのか?


「余計なことを言うな!」

「うっ...!」

「お父様!」

「国王様!」


やっぱり怒られた。帝国兵に国王様が殴られた。

口を封じてない帝国軍も悪いだろこれ。


「チッ、...まあいい。コイツらがどれだけ情報を漏らそうが、俺達が優位なことは変わりない。

さあ、国王達が殺されたくなくば、今すぐに軍を引け!」

「く、くそ...卑劣な...」


カズラ氏が、悔しそうに口から声を絞り出す。

すると、うなだれていたバージル王子が顔を上げ、叫んだ。


「マリー!私はミスを犯した!自分の命惜しさに、帝国に魂を売ってしまった!今回の件、王国側の非は全て私にある!」


あー裏切りたくて裏切った訳じゃあないのね。

...でも兄弟皆殺しはやり過ぎだと思うぞ。


今回帝国兵は、国王の時と違って、バージル王子が喋るのを止めないな。...やっぱり王子は帝国と内通してて、裏切るための演技?いや、人質が命乞いをしてくれた方が、都合がいいからか。


「...だから!人質の父上、母上、そしてこの私を見捨てて、王城、王都を取り戻してくれ!」

「なっ...」

「お前!なんてことを言うんだ!!」


バージル王子が漢気を見せた。

命乞いするかと思われた王子が、国王と王妃、自分を見捨てて帝国を討てと言っている。流石に帝国兵も焦ってバージル王子の口を塞ぐ。


そこまでカッコいい所を見せられちゃ仕方ない。

俺もマリーちゃんにカッコいいところ見せてやるか!


ギャル勇者、イオ戦で使ったように、魔力を足に集中!

一度経験して慣れたからか、スムーズに魔力が流れる!

よし!行くぞ!

俺以外の全てが遅くなり、俺だけが普段の速さで移動できる!名付けてバブー・ザ・ワールド!!

...ダサいっすか?残念ながら俺にネーミングセンスはないんだ。


人質3人を拘束している帝国兵に一瞬で近寄った。

改めて見ると、国王、王妃、王子は手枷と、手枷に付いている鎖で帝国兵から逃げることができないようだ。

じゃあ鎖を手刀で切って...と。

お、やっぱできた。流石魔人、生身の体で鉄を切断できる。

魔力込めたら力こそパワー状態になれるな。


では、3人の身柄をいただいて...と。

衰弱してるようだし、トゥーメト公爵に預けよう。

直ぐに医療班呼んでくれるでしょ。

3人を担いだまま公爵の前に移動し、そばに降ろした。そしてまた帝国兵の前に戻る。足に集中させた魔力はもういいだろう。解除しよう。


一連の動作を一瞬で行ったため、俺が通った道は地面が抉れ、風が吹き荒れた。


よーしこれで帝国軍を叩き潰せるな。

公爵に指示を仰ごう。


「公爵!人質は取り返しました!突撃の命令を!」

「おお!?...よくやった!全軍突撃ぃ!!」


目の前に、急に国王達が現れて驚いてる。

だが直ぐに状況を把握してGoサインをくれた。

大した戦力のない帝国軍などに負けはしないだろう。

うおお行くぞ!人質なんぞをあてにした、卑怯な野郎共を殺せ!


そして。

数時間で王城内にいた帝国兵を殲滅することができた。




ようやく俺たちは、ルアー帝国との戦いに勝利した。



ーーー


一夜明け、色々な処理を行ったあとに、

王城の豪華な一室で、俺たちマリーちゃん派の主要メンバーと、国王、王妃、王子が集まった。アースドラゴンとカムルチーも既に帝国から帰還しているのでこの場に居る。アースドラゴンはデカいので外だが。


話すことは主に、戦後処理などや、今後についての話し合いだ。

マリーちゃんの護衛契約が完了した俺は、今後どうしようか。一切ノープランだ。それもこの話し合いで決めようかな。

いつごろに報酬で家がもらえるかも聞いておきたいし。

考えたくはないが、キャロットちゃんに家をプレゼントして告白して、それが失敗してしまった場合の後のことも、ここで決めてしまおう。

...マリーちゃん、専属護衛として雇ってくれないかな。


因みに俺が魔人であることは王族の方々に伝えてある。どうせ帝国兵から解放した戦いで異常なのバレてるしね。

かなり驚かれたが、納得もしていた。魔人無しで王城奪還は不可能だったろうし。


「まず最初に。今回の一件は、全て私の裏切りから始まったことだ。各方面に多大な迷惑をお掛けしてしまった。本当に申し訳ない。」


バージル王子が頭を下げて謝る。

まあ正直この人のせいで、かなり血が流れた。


「私は秘密裏に王国へ侵入した《雷電の魔人、カムルチー》に、自分の命及びに、王族全員の命を人質に取られてしまった。殺されることを恐れた私は、帝国の条件を長年飲まされ続けてしまったのだ。

その条件が、王国に帝国軍を誘致することと、王配の殺害だった。」


帝国兵は急に王国に現れたんじゃなくて、水面下で少しずつ各地に潜ませていたのか。第三王子が主導でやったら王国側にもバレにくかっただろう。

そしてさらに、王族を根絶やしにすれば王国は大ダメージだもんな。

ん?...カムルチーがバージル王子を直接脅したの!?


驚いた顔で、同室にいたカムルチーを見ると、頷いたあとに口を開く。


「そうにゃ。帝国の命令で、大人しそうな王族を脅せって言われたから脅したにゃん。別に私が好きで脅した訳じゃにゃいぞ、ご主人様。」


カムルチーも、命令に逆らったら勇者に殺されただろうから仕方ないだろう。

バージル王子も、まさか自分の目の前に凶悪な魔人が脅しにくるとは思ってなかった筈だ。凄まじい恐怖を味わったことだろう。並大抵の人間では、この脅しに従わざるを得なかったと思う。


「私はこの責任を取らなければならない。

...公開処刑されようと考えている。」

「兄様それは!」

「マリーも分かっているだろう?私が国賊として死ななければ民は納得しない。このまま生きていたら、王家の信頼がなくなってしまう。」

「私も共に逝こう。バージル。

私が国軍を魔人の森に送らなければ、今回のことは起きなかったはず。未然に防げたはずだ。」

「そんな!お父様まで!」


マリーちゃんが泣きながら叫ぶ。

マリーちゃんが悲しがる所は見たくないが、

かと言ってバージル王子と国王が死ななければ国民は納得ぜず、いずれ不信感が募り国が荒れてしまう。

何かいい手はないものか...。


そして最後に、気持ちの整理がまだできていないマリーちゃんに、国王がとんでもないことを言った。




「私とバージルが処刑された後は...






マリー。お前が王と成り、民を導くのだ。」




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