第四十話
殺意を乗せた魔力を解放したら、勇者が泣いた。
な、なぜ?
勇者ってこういう荒時に慣れてるんじゃないのか。ちょっと魔力に当てられたぐらいでガタガタ震えて泣くのか?
...命乞い?それとも油断を誘ってからの奇襲か?
うーむ、分からん。とりあえず警戒怠ってはだめ...
あれ?
さっきまで後ろの方で、味方と敵が争うことで聞こえていた、武器を打ち鳴らす音が止んでる。
油断せずに、泣きじゃくる勇者を視界に入れながら振り向くと、敵味方問わず、全員気絶していた。
あるぇ〜?
今回の威嚇は勇者に向かって打ってたし、殺意を込めた魔力は自分の周囲で止まる様にコントロールしてたんだけどな。
余波がちょっと周りに行ってしまったか。
あれ、これもしかして余波で怖がってギャル勇者泣いてる?
はは、そんなまさか...。
「...ワタシの負けだし。こんな化け物みたいな魔力量の奴に勝てるわけない...正直、カムルチーが帰ってこなかった時点でなんとなく、こんな予感はしてたし...」
震える声で、勇者が声を絞り出す。
やっぱ俺の魔力が原因じゃん。でもまだ余裕あるぞ、東の魔人の魔力。コイツの魔力量どんだけ多いんだ。
さて、このギャル勇者どうしようか?
覚悟はしたけど、泣かれたあげく、戦意も無いとなると殺す気失せるな。
かと言って生かしておくとな〜。どうせまた敵になるしな。アースドラゴンとは違って魔力契約ができないから、まずそれは間違いないだろう。
やっぱり可哀想だけど殺すしかないな。
マリーちゃん派の為でもある。許せ。
俺の殺意を感じ取ったのか、勇者は目を閉じ、俺の攻撃を受け入れる体勢になった。
「パパ、ママ...最後に会いたかった...」
............。
殺せるかあ!!
そんなこと最後に言われて殺せるわけねーだろ!!
あーーくそ、自分の甘さが憎い。
...とりあえず生かす方向でいくかあ。
なんかあったら全部俺が謝って責任取ろう。
はぁ、絶対この選択後悔するよなぁ...。
なーんで俺がこんな気持ちにならないといけないんだよ!
...俺の甘さが原因だよ!チキショー!!
「勇者、イオ...さんでしたっけ?」
「...?そうだけど...」
とりあえず話しかけるか。
ギャル勇者は、何故俺が殺意を向けているのに殺されてないのか、不思議に思っているようだ。
「ちょっと質問していいですか?」
「...軍事機密は答えられないけどぉ?」
「あーそこを何とかお願いします。あなたにとっても重要なことなので。」
「...なんなのぉ?」
「帝国の戦力って、勇者であるあなたより強い人はいますか?」
「...それは...」
「答えによっては、あなたは帝国へ帰れるかもしれません。」
「本当ぉ?」
強制的にだけどな。
...なんかすげえ嘘の希望を与える、悪役みたいな台詞言ってるな俺。
俺は今からトップシークレットの作戦を、敵国の要人にバラそうとしている。トゥーメト公爵に許可をもらった、あの作戦だ。
まあ正直今更バレても作戦に支障は出ないから、っていうのもある。でも裏切りって1番やっちゃいけない行為だよなぁ。
この質問により、勇者より強い存在が帝国に居るかいないかが分かれば、俺の今更言っても価値のない作戦の情報と、帝国の保有戦力の情報を交換することになる。そしたら味方のゴミ情報で相手の重要度が高い情報を引き出せましたってことにならんかな。
なればいいなあ。まあ今味方全員気絶してるし大丈夫だろ。
「いない...と思う。少なくともワタシが知ってる範囲だと。」
「なるほど...。じゃああなたは今すぐに引き返した方がいいと思いますよ?」
「...?ガーデン王城にぃ?」
「いいえ。帝国にです。」
「............それはどうして?」
「帝国は今、アースドラゴンとカムルチーに攻め込まれていますからね。」
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