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第三十五話


アタシの名前はイオ。

なんでかぁ、ルアー帝国で勇者なんかをやってる。


帝国で10歳になると、魔力測定を行うことが義務付けられ、そこで魔力値が50以上あった人は帝国魔法学園に入学することができる。

人間の魔力平均値が1だから、学園にいる人間は通常の50倍もの魔力量がある、エリート中のエリート。

帝国魔法学園って言うのは、卒業できれば将来の就職先が、帝国の息がかかった要職へ就くことができるため、非常に人気がある学校なの。

まあワタシは行ってないけどぉ?


ワタシはその魔力測定で、帝国建国以来最高の数値、12000を叩き出した。チョーヤバくね?

人間の魔力平均値が1。魔法学園の最低入学ラインが50。

ワタシは12000。

ちょっと化け物くさくね〜?


測定後、ワタシはすぐに帝国の軍に入れられ、戦いに関する知識と、貴族社会のマナーを教えられた。

本当はやりたくなかったんだけどぉ、ウチ貧乏だったし、お金がいっぱい家族に支払われると言われて、しょうがなく何とか頑張った感じ?

モンスターを殺すのは嫌いじゃなかったけど、貴族マナーはマジ面倒かった。


それが8年前。

ワタシは18歳になり、帝国が指定する魔人やモンスターを狩っていたら、いつのまにか《魔人嬲りの勇者》と呼ばれるようになった。この二つ名、可愛くなくなくね〜?


その頃からワタシは自分の強さを自覚し出して、「あれ?これもう帝国の言うこと聞かなくても、冒険者ギルドの依頼でお金稼げるんじゃね?」と思ったんだけどぉ、思いついた時には手遅れで...家族を人質に取られてた。

家族の場所がどこにいるか分からないから、面倒だけど帝国の言うことを聞くしかない。


家族を探し出すのが先か、ワタシより強いモンスターと戦って死ぬのが先か...正直分かんない。先が見えない。


そんなことを考えてた矢先、ガーデン王国のバージル第三王子を脅して、無理矢理王国を内乱状態にしたらしい。

その隙に大量の帝国兵を王国領に進軍させ、バージル王子軍を吸収。王都を制圧した。

更に宰相が、大金をはたいて雇った100人の魔物使いで、強引に力技でテイムした、アースドラゴンまで投入した。

まあそのアースドラゴンをテイムしやすいようにボコったのワタシなんですけどぉ。


アースドラゴンまで投入し、

更にワタシが勝ち、帝国の命令で生かして戦力にしていた《雷電の魔人、カムルチー》まで王都に派遣した。

...正直過剰戦力な気がしないでもなけどぉ。


だが結果は予想から大きく外れたものだった。


バージル第三王子派を抱き込んでいる帝国は、まず邪魔になる王国保守派閥のマリー王女派を排除しようと、兵糧であるジョアンナ伯爵領とメークイン男爵領を攻めた。

この二つの領地は国境近くで防衛力、軍事力が高らしい。

虎の子のアースドラゴンを使って一瞬で決着をつけようとした、んだけどぉ...。


アースドラゴンの魔力契約が、誰かに全て消されたらしい。

その後、アースドラゴンがどうなったかは分からない。

契約解除した奴に殺されたんじゃね?知らんけど。


しっかし、魔物使い100人分の魔力契約を解除するってどんだけ〜。

とりあえず人間じゃないのは確かだよね〜。

魔物使いは恐れて一瞬で帝国に逃げ帰ったみたい。

逃げ足早すぎてウケるんですけど。


焦った帝国はすぐさま《雷電の魔人》を送り込んだ。

アースドラゴンを蹴散らす存在にビビって、ドラゴンより強い魔人を、ニオン砦付近の森へ潜ませた。

ドラゴンより強くても、魔人の不意打ち攻撃なら倒せるだろうと。

カムルチーの魔力値は10000。魔力量だけでいったらアースドラゴンの倍はある。


流石にワタシもこれなら大丈夫だと思ったんだけど...。



ワタシとカムルチーの魔力契約が切れた。

...これが意味することは、相手の魔力値は10000以上。


......。

............。


もしかしたら家族に会うより早く、ワタシの死ぬ時が来たのかも知れない。


「あっれぇ?...カムルチーとの魔力契約が切れたんですけどぉ。」

「...大丈夫なのかそれは?」

「んー、どういうことだろ。

もしかしてぇ、アタシより強いヤツに負けたとかぁ?」

「それはあり得ないだろう。お前より強い生き物などこの世に存在しない。《魔人嬲りの勇者、イオ》。」

「...。」


現在ワタシ達は王都のガーデン城を占領して、そこから各地を攻撃する指示を出している。高い魔力量と剣術を持つワタシに、王城の兵士はなすすべなく倒れた。


ワタシの問いに教育係にあたる男が答える。

ワタシの魔力量は、8年前の魔力測定の時より成長して14000。

確かにとんでもない数値だけど、最強って訳じゃない。

帝国はこの14000って数値を過信し過ぎてる気がする。


バタバタと誰かが慌てて走る音が聞こえる。

そして扉が開いた。このタイミングは...


「イオ。出撃命令だ。直ぐに出ろ。」

「...はぁい。」


やっぱりね。




なんとなーく、ワタシはこの戦いに負ける気がする。


......最後に家族に会いたかったなぁ。




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