第三十三話
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「冗談ですよ...ね?」
「冗談じゃない。まだ戦える。」
今の俺の状態。
両腕ないし、腰から下もない。
魔人だからなんとか生きてるけど、とても戦えるような状態じゃない。できればキャロットちゃんに助けてもらいたいんだけどなー?
...魔人の常識だと両手両足を失ってからが戦いの本番、って感じなのか?
いやいやいや、そんなバカな。
「...バブー、覚えてる?私が北の魔人の手足を切って元の縄張りへ放り投げた時のこと。」
「は、はい。しっかりと。」
あんな強烈な体験を忘れるわけがない。
キャロットちゃんが北の魔人、レオを圧倒した時だ。
確か頭を鷲掴みにしてぶん投げた後、弱ったレオが他の魔人に殺されることを心配してーー
...あ!もしかして。
「もしかして、《方角魔人は両手両足がない状態でも他の魔人より強い。》って台詞のことを言いたかったんですか?」
「そう。方角魔人がそこらの魔人に倒されることはあり得ない。」
いやぁでも現に負けてるし...。しかもカムルチーって二つ名持ちだよ?そこらの魔人ってわけじゃない気がするけど。
「それともう一つ。バブーは魔力コントロールのこと忘れてる。」
......。
...うわああああああああ!!!やっべえええ!!
人里に降りるために、朝に魔力を封じ込めていたままだった!解除するの忘れてたあああ!!
つまり今の俺はどういう状態かと言うと、車のレースに参加して、俺だけガソリン入れずに順位争いをしていたような感じだ。
勝てるわけねぇ!!車動かんわ!アホか!アホです!
よし、敗因がわかったところで、今すぐに魔力を解放しよう。性悪猫娘にオシオキじゃ!
「北の魔人の手足を切った?にゃはは、ここにも法螺吹きがいたんだにゃあ。
それに...まるでお前らが方角魔人みたいな口ぶりだったにゃん?
プププっ、お前らの方角魔人ごっこに、笑いを堪えるのに必死で攻撃できなかったにゃ。大した作戦にゃあ。」
「...。」
黙って俺たちの会話を聞いていたカムルチーが、口を開く。
だが俺はカムルチーの言葉を無視して、魔力コントロールに集中しないといけなかった。
結構念入りに魔力押さえ込んでしまったからか、全然魔力が体に行き渡らない。
...ちょっと気合い入れてやるか。
フンッ!!
「笑わせてくれたお礼に、丸一日痛ぶって殺してあげるにゃ。
まずはそこの牛乳魔人からにゃあ!!.........にゃ、にゃあん?」
「...バブー、やりすぎ。」
最初に、雲ひとつない快晴の空が、魔人の森の空のような、赤黒い色の空に変わった。
カムルチーがキャロットちゃんに放った落雷は、空で赤黒い魔力の濁流に巻き込まれ、消えた。
次に、体に纏わりつくような粘つく重い空気が周囲に広がる。俺を中心に、黒いモヤのような魔力渦が周囲を広範囲に覆った。
そして更に、体から漏れ出る魔力が大きくなると、地面に亀裂が入り、周囲の木々が魔力の圧力に耐えきれなくなり折れる。
最後に、一瞬で体の欠損部位が回復した。
どうやら魔人の治癒能力は魔力依存のようだ。
「バブー、もっと抑えて。」
「あっ、はい。」
実はまだまだ余裕あったんだけど周囲の景色が酷い。原型がないレベルで地形が変わりそうだったので、キャロットちゃんに言われて慌てて魔力の放出を絞る。
すると直ぐに空の色が元に戻って、辺りの重苦しい空気がなくなった。
「ほらまだ戦えた。」
「本当ですね。疑ってしまいました。すみません。」
「気にしてない。」
キャロットちゃんには迷惑かけて謝ってばっかりだ。申し訳ねえ...あとで結婚して詫びよう。
あれ、いつのまにかカムルチーが地面にしゃがんでうずくまってる...。
!!!
カムルチーのスカートからパンツが!!!
うおおおお!縞パン!!!!!
「......。」
あっ、キャロットちゃんから白けた目で見られてる!
ち、違います!これは決して浮気じゃないんです!偶然スカートの中身が目に入ってしまっただけなんですぅ!
仕方ない。話題を変えよう。
「さあ《雷電の魔人、カムルチー》!再戦といきましょう!」
「......。」
キャロットちゃんの非難するような視線に気づかないフリをして無理矢理流れを変える。
そして、うずくまっていたカムルチーが顔を上げ、口を開いた。
「ま、負けにゃ。」
「え?」
「私の負けにゃ。...降参するにゃあ。」
「ええ!?ど、どうしてですか?」
「お前達...いや、ご、ご主人様達が本物の方角魔人様って分かったからにゃあ。あんな大きな魔力、それ以外有り得ないにゃ。
逆立ちしてても勝てっこないにゃん...。」
キャロットちゃんに、やりすぎって言われるぐらいだし、結構魔力が出ていたのだろう。北の魔人の戦いで分かってはいたが、方角魔人は魔力が桁違いみたいだ。
「わ、私を殺さないでくれないかにゃ?今まで生意気な態度をとっていたのは謝るにゃあ。」
ああ〜ん?この性悪猫め。虫が良すぎるぞ。
俺の手足消し飛ばして、さらにキャロットちゃんまで痛ぶろうとしやがった。いかに美人でおっぱいがデカくて、ご主人様呼びにちょっとテンション上がってても、このバブー、容赦せん!
「...いいえ。お断りしま「お願いにゃあ!ほ、ほら、パンツも見せてやるからにゃあ!
方角魔人様もさっき見てたにゃ?興味はあるはずにゃあ!」
カムルチーがスカートをたくし上げる!!
うおおおお縞パーーーン!!!!!
クッ!色仕掛けとは卑怯な!!
「きゃ、キャロットさんはどう思います?生かす価値はあると思いますか?」
いかに美人で可愛くて、おっぱいが大きくて、ご主人様呼びにしてくれて、パンツ見せてくれて、ちょっと殺すのが惜しくても、このバブー、キャロットちゃん次第で、容赦せん!
「本当は殺したい。
でも生かしておくと有用。
寿命が長い魔人は知識が多い。縄張りを長く離れられない私の代わりに、あなたのサポート役として使うことができる。
どうするかは、バブーが選んで。」
「キャロットさんはなぜ殺したいと考えたのですか?」
キャロットちゃんが殺したいと言った途端、カムルチーが凄い震え始めた。
あ、泣いてる。
「...別に。何となく。」
「...そうですか。」
んー?キャロットちゃんが言葉を濁すなんて珍しい。
何か個人的な感情でもあるんだろうか。
さてどうしよう。
生かすか、殺すか。




