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第三十話

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運命の日の朝がきた。




男爵に借りた部屋で目が覚める。


魔人の基礎体力が高いのか体の方はそうでもないが、精神的に体が重い。だって強い敵と戦いたくないんだよ。

でも顔を洗うための水を持ってきたメークイン男爵領のメイドさんの胸の揺れをみたらテンション上がって気にならなくなった。ヤダ...アテクシって単純?




あれから少し《雷電の魔人、カムルチー》について皆んなに話を聞いたが化け物じみた話しか聞けなかった。

なんでも、今までに6人の魔人を殺してるだとか、帝国の勇者を殺しただとか、戦った相手をいたぶるだとか、語尾がにゃん、だとか。

本当かどうか分からないが、色々噂がある有名な魔人みたいだ。


っていうか帝国に勇者なんてものがいるらしい。本当にファンタジー世界なんだな。...あれ?カムルチーって帝国の勇者を殺してるのになんで帝国に味方してるんだ?うーん、よく分からん。


などと考えを巡らせながら顔を洗い、メイドさんにお礼を言ってから談話室にいる皆んなと合流した。


「皆さん集まったようですね。出発の準備は整っています。直ぐにニオン砦に向かいましょう。

ーー全軍出撃!!」

メークインさんの号令で、大勢の兵士が砦に向けて一斉に歩き出す。これが数の暴力ってやつか。実際に見ると頼もしいなあ。

しかも後からジョアンナ伯爵軍とも合流するんでしょ?凄い人数になりそうだ。


「魔人様、このように頭数は揃えていますが、《雷電の魔人、カムルチー》の前では人間はただの木端に過ぎません。

カムルチーが現れたらすぐに魔人様自ら迎撃をお願いします。」

...数の暴力に勇気をもらっていたのに水を差された気分。朝のメイドさんのおっぱいパワーが切れて、プレッシャーが上回ってきた。


「そうですね。魔人の先制攻撃で味方が全滅、だけは避けなければいけませんね。」

「ええ。お願い致します。」

どこか浮き足立ってた俺を見かねて注意してくれたんだろうか?なんてできる女性だ。秘書にしたいね。

...確かに、魔人の不意打ちで味方が皆殺し、そんなことをされたら皆んなを失った悲しみで精神崩壊してしまう。細心の注意をはらおう。


よし!メークインさんの言葉で気を引き締めることができた。ここからは敵地と思って気を張って行動しよう。


ーーー


夕方になる頃にニオン砦前に到着し、砦近くの森に陣を張ることができた。敵軍も気づいてはいるようだが何故かこちらにアクションをかけてこない。なにか不穏な感じだ。


「まだジョアンナ伯爵は到着していないみたいね。」

「ま、マリー様、後ろにお下さがりください!」

カズラ氏が慌てている。

俺もマリーちゃんは危険だからメークイン領でお留守番させた方がよくない?って思ったんだけど、マリー派の指揮が下がるので置いてきぼりにはできないらしい。あと貴族の吟醸に関わるそうだ。大変だよなあ貴族って。


「いいじゃない。妾には戦いを見届ける責任があるわ。」

「そうですが余りにも前に出過ぎです!」

「大丈夫よ。ここなら弓矢でも届かないわ。魔法でも無理よ。」


?......なんだ?少しだがオゾン臭?がする気がーー


!! まずっ......!


オゾン臭はプールの消毒液のような匂いだ。身近なところだとコピー機などから臭う。

...もう一つ、その匂いがするタイミングがある。


落雷の前後だ。


マリーちゃんの頭上に、バチバチと音を立てて雷雲のようなものが発生している!!くそっ!間に合え!!



ピシャアァアアン!!

「いぎっ!ぐああぁぁあぁ!!」


なんとか...間に合って、マリーちゃんを...落雷の、範囲外に突き飛ばす、ことが...できた...。


だが...。


「まっ、魔人様ぁ!!」

「魔人様!ご無事ですか!?」

マリーちゃんとカズラ氏の叫び声が届く。


ぐ...落雷をモロに食らってしまった。全身に痛みが走る。


...!手が...左腕の肘から先がない...。ぐぅう、痛え...。


「魔人様!ごめんなさい!妾が!妾がカズラの忠告を聞かなかったから!!」

「マリー様!ここは魔人様に任せて引きますぞ!

ぐっ、マリー様!動いてください!...無礼ですが、無理矢理運ばさせていただきます!」

「いやぁ!魔人様ぁ!!」

その場から動こうとしないマリーちゃんをカズラ氏が無理矢理担ぎ、メークイン軍へ下がっていく。


「魔人様、私達は予定通りトゥーマト公爵に加勢します。

...大丈夫ですか?」

大丈夫じゃない。


「...ええ。すぐ倒して、そちらにも救援しに行きますよ。」

痩せ我慢をして笑顔で答える。


「...ご武運を。」

メークイン男爵はマリーちゃんとカズラ氏の後を追ってメークイン軍へ合流しに行った。



「へー人間に味方する魔人がいるのにゃ?」

隠れていた、森の中からおちゃらけた口調で魔人が歩きながら話かけてきた。メークイン軍が陣を敷いていた森側に敵軍が来ない理由がわかったよ。最高戦力を配置していたから守る必要がなかったんだ。


《雷電の魔人、カムルチー》は北の魔人、レオと同じ獣人系の魔人なんだろう。茶色の猫耳と尻尾が生えている。そしてどちらかというとレオよりも人間寄りの容姿をしていた。

身長は145cmほど。スタイルがよく、胸もデカい。服はキャロットちゃんのように無駄に際どい。そしてフレアスカートを着ていた。この世界にもあるのか。


「...人間に味方しているのはあなたも同じではないですか?」

雷に打たれた俺の全身から、治癒による煙が上がっている。会話で少しでも回復の時間を稼ぎたい。まだ体が痺れてまともに動けない!


「チッ...その話はムカつくからしないにゃ。じゃあトドメといくにゃん。 」

げっ!なんか地雷踏んだっぽい!クソっ、俺の全コミュ力を総動員して会話をつなげろ!


「い、いいんですか?私のバックには怖ーい魔人がついているんですよ?私が死ねばその方が報復に来るかも知れません。」

あ、なんかすごい噛ませ犬の敵役っぽいセリフを言ってる気がする。


「ふん、面白い。誰だか答えてみるにゃ。笑えるような答えだったらすぐには殺さないかもしれにゃいにゃあ。」

「...。」

ど、どうする?ここでキャロットちゃんの名前を出したら、後々迷惑をかけてしまう気がする。


「言えないのかにゃ?じゃあお終いにゃ〜。」

「き、北の...。」

「にゃん?」

「北の魔人、レオ...ですよ。」

「......。」

あいつなら迷惑かけても俺の良心は痛まない。



これでどうだ?



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