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第二十八話

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「私が魔人にキスをします。」

「な!何を言ってるの、ジョアンナ!?」


そうだそうだ!でもマリーちゃんも結婚とかキスとか言うの止めてね。童貞は勘違いしやすいからね。


「駄目よ!妾が魔人様にキスをするわ!」

「いいえ、私がします。」


アテクシを巡って争うのはやめてぇ!

...一度言ってみたかっただけです。


「ジョ、ジョアンナ?あなたが魔人様にキスをする理由がわからないわ!どうして頑なに譲らないのか妾に教えてちょうだい!」

「理由は簡単です、マリー王女様。

マリー様が魔人にキスをしようとするからです。」

「...どういうこと?」


...どういうこと?


「そもそもこのキスという報酬は、ジョアンナ領の救援をしたら支払われるものですね?」

「ええそうよ。妾、が!ジョアンナ領へ出発する前に魔人様と約束したの!妾、が!」


はて?身に覚えがありませんねえ。


「でしたら領地を救われた者こそキスを支払うべきだとは思いませんか?」

「そ、それは...。」


どういう理論だよ。なんでマリーちゃんもちょっと納得してるんだよ。

...どうでもいいけど《キスを支払う》って、めっちゃ義務でやらされてる感すごいな。ガラスのハートにヒビが入ったわ。


「それに貴女は王女。王女は軽々しく接吻をしていい存在ではありません。私にお任せ下さい。」

「う、うう...。」


お、これはちょっと説得力あるかも。王女は王子さまぐらいじゃないとキスが釣り合わないよね。


「では魔人よ。顔をこちらに向けてくれ。」


王女様を庇っての義務感キスか...童貞としては.....................テンション上がるぜ!!!ガラスのハートのヒビ?もう直ったわ!


「ま、待ちなさい!!」

「...まだ何か?」


論破(笑)されたかに見えたマリーちゃんが復活した。


「妾が魔人様にキスをする理由ならあるわ!」

「それは何ですか?理由によっては却下します。」

「...そ、それは...。」

「それは?」

「私が魔人様のことを...すっ、好、す、ス、」


...す?



「......既に異性とは思っていないからよ!!だからキスぐらい何ともないわ!!」


ガーーン!!どうてい には こうかは ばつぐん だ !


...超ショックなんですけど...少なからず信頼関係は築けていたと思っていたのに...。

...もう寝よう。寝て忘れよう。ふて寝だ。


「あっ!魔人様!い、今の言葉は...その、言葉の綾と言うか冗談のようなもので!違います!言葉通りの意味ではなくてですね!」

「ハハ...。いやイインデスヨ、マリーさン。

そうですね、今日は夜も更けましたし私は寝させていただきます。メークインさん、どこか1人になれるような寝室を貸してもらっても?」

「あ、ああ。こちらだ。案内しよう。」


フッ。メークインさんの気遣うような視線が傷に響くぜ。プチ失恋っていう傷によ。

やっぱり俺はキャロットちゃん一筋で生きていくんだ。

...キャロットちゃんに今みたいに言われたらどうしよう。いやいや考えるな。ポジティブだポジティブ。きっとプロポーズにも応えてくれるさ!...多分。


メークインさんに先導されて、さっきま皆んなでいた談話室を後にする。あ、明日になったらきっとメンタル復活するからとりあえず寝させて...。


談話室の扉が閉まった後、誰かが泣く声と、「今のはマリー様が悪いですよ。」という声が聞こえた気がした。



---


いやあ、いい朝ですね!

窓から見える雲一つない快晴の空!まるで俺の心のよう!

さすがメークイン男爵、いい部屋、いいベッドを貸して下さった!よく眠れましたよ!

...え?昨日のこと?

いやだなあ、何とも思ってませんよ!

あんなこと童貞だと日常茶飯事!

ちょっとこの子気になるな、と思ってたら既に彼氏がいました!みたいな感じですよ!

全然気にしてません!余裕ッスよ!

さあて、そろそろ皆さんに朝の挨拶しに行かないとな!


「...あの。」

「ギョピョッッッッッ!!!!」


マリーちゃんが俺の部屋の前にいた。

昨日のトラウm、じゃなくて昨日の出来事で少し驚いちゃったぜ。


「...おはよう。あ、あの昨日のことは「おはようございます、マリーさん!今日はとてもいい天気ですね!見ましたか?雲一つない空ですよ。あ、もしかして朝食ですか?わざわざ呼びに来てくださってありがとうございます。さあ行きましょう。食堂の場所は昨日メークイン男爵に教えてもらっています。さあさあ!」

「ちょ、ちょっと。」


早口で捲し立て、早歩きで食堂に向かう。マリーちゃんが何か言いかけてた気もするが気のせいだな!


食堂に着いた。貴族の歓待用の食堂らしく、天井が高い。机も凄い大きくて縦長だ。先に俺がいそいそと席に着くと、腑に落ちない顔のままマリーちゃんも席に着く。

...何かメイドさんに耳打ちしている。こ、怖いな。やっぱりさっきの態度は王族に対して失礼だったか。後が怖いなあ。


「...全員席についたようだな。では朝食がてらこれからの方針を改めて決めたいと思う。」


マリーちゃんと俺が最後に座ったようだ。

この話はジョアンナ伯爵が進行役みたいだな。


「一晩経って、私とメークイン男爵の放った伝令が返ってきた。そこで得た情報は、今まさにマリー派本隊と第三王子軍が王都でぶつかる寸前みたいだ。」


うわマジか。思ったより時間ないな。


「マリー派に勝算はあるのだろうか?」


とカズラ氏。これでマリーちゃん派が負けたらいよいよ王都に居れなくなっちゃうからね。気になるな。


「いや敗色濃厚だ。

マリー派本隊は王都を取り返す為に戦うと言うよりは、追い詰められて戦うしかなくなっている状況だ。」


ですよねー。

第三王子軍だけならまだしも、帝国がバックにいるらしいし、負けそうなのは当たり前だよな。


「元々食料調達を担っていたメークインとジョアンナに救援を送れない戦況だった時点で、押されているのは分かってはいたが...。」

「更に悪い情報がある。」


まだあるのか。





「...敵軍に魔人がいることが確認された。」



......嘘だろ...。


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